トランプ米大統領の対中国強硬姿勢をめぐり、中国側は“報復カード”を相次いで切っている。米自動車メーカーへの制裁措置を科したほか、習近平国家主席はダボス会議での講演で「保護主義に反対する」などと批判した。もし、トランプ氏が公約通りに中国製品の輸入に対し懲罰的な関税をかけるなら、貿易戦争が勃発しかねない。米国市場で存在感を示しつつあった中国メーカーにとっては、黄信号がともる。アリババグループの馬雲(ジャック・マー)会長がトランプ氏と会談し、両国の関係改善に乗り出したが、効果は未知数だ。
1月20日の大統領就任演説で「米国製品を買おう」と呼びかけたトランプ氏が、最大の不公正貿易国として念頭に置いているのが中国だ。選挙中には、為替操作を行っているなどとして、中国からの輸入品に対して45%の関税をかけるとの経済政策を掲げていた。
これに対し、中国政府は対決姿勢を鮮明にしている。中国共産党機関誌、人民日報の国際版「環球時報」は「トランプが中国に関税を課すのなら、iPhoneの売り上げは打撃を受けることになるだろう」と伝えた。中国上海市当局も昨年12月23日、米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)の中国の販売統括会社に対し、独占禁止法に違反したとして罰金2億100万元(約34億円)を科したと発表した。
中国側が報復カードとして活用できそうなものはまだある。習主席は2015年9月に訪米した際、米ボーイングから737型機など計300機(当時の為替レートで約4兆6000億円)を購入すると発表しており、この約束をほごにすることも可能だ。中国国内に進出した米国企業への制裁措置も考えられる。
さらに、習主席は1月17日、スイスで行われた世界経済フォーラムの年次総会「ダボス会議」で講演し、「保護主義に反対する。貿易戦争をすれば、結局は双方が負けることになる」などと強調し、トランプ氏を牽制(けんせい)した。
トランプ氏は意に介さない。大統領就任後、カナダとメキシコに対し、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を進めると宣言。欧州連合(EU)離脱を決めた英国とも通商交渉を行う。今のところ、中国への対応は不透明だ。
一方、米国では、中国企業の進出ブームともいえる状況だ。新華社通信のニュースサイト「新華網」によると、1月5~8日に米・ラスベガスで開催された家電見本市「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」では、中興、海信、TCLの家電・通信機器メーカー3社が、スマートフォンや4K有機ELテレビなどの新製品を発表。3800社余りの出展企業のうち、中国企業は3分の1を超えたという。
中国のスマホメーカー、小米科技(シャオミ)も昨年10月から、アンドロイドTV搭載の端末「Mi Box」を米国で発売。価格は69ドル(約7800円)で、米アップルが販売する「アップルTV」下位モデルの半額以下だという。
同じ中国の動画配信大手、楽視網信息技術(LeECO)も同月、米国でスマホやテレビをインターネット通販で販売すると発表した。楽視網は昨年7月に米テレビ大手ビジオを買収し、米国での販路を確保しており、市場開拓を進める。
シャオミはこれまで、米国ではヘッドホンなどスマホ周辺機器だけを販売していた。シャオミと楽視網は、ようやく業界首位のアップルに挑むステップを踏み出したばかりで、トランプ氏の出方によっては悪影響を及ぼしかねない。
こうした中、世界190カ国・地域でインターネットを通じてサービスを提供するアリババグループの対応は早かった。馬会長は今年1月9日、ニューヨークのトランプタワーでトランプ氏と約40分間にわたって会談。中小企業による中国向け商品販売を支援することで、米国内に100万人の新規雇用を創出する計画について話し合ったという。
アリババが運営するウェブサイト「淘宝(タオバオ)」は、偽造品売買の温床だとして、米当局に最近「悪評高い市場」に再び指定されていた。トランプ氏は会談後、アリババ側の雇用創出案を歓迎したというが、その後の対応は不透明だ。
中国企業への懲罰的な関税政策は実現するのか。実際、トランプ氏は特定の製品の輸出入に課税する法的権限を持っているが、ブルームバーグが「計画の実現には議会や世界貿易機関(WTO)の支持が必要になる」可能性を指摘するなど、懲罰的な関税は簡単に適用できそうにない。
これまで、トランプ氏はツイッター上で特定の企業を攻撃し、国内雇用を創出しようという自身の意向を反映させてきた。2000万人を突破したフォロワーへの影響力は絶大だ。
ただ、ロイター通信は1月6日、トヨタ自動車に関する投稿の中でトランプ氏が事実誤認をしていたとして、「こうしたケースが繰り返されれば、トランプ氏のツイートの神通力が落ちるのは必至だ」と論評した。パフォーマンス重視の戦略のほころびはすでに始まっているのかもしれない。
産経ニュースより
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
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