2017年1月20日金曜日

NATO軍、ロシアの脅威に対抗

NATO(北大西洋条約機構)とロシアとの関係がここに来て一段と厳しさを増してきている。それを示すように、米軍がポーランドやブルガリア、ルーマニア、バルト3国などに 4000人規模の部隊を投入する事態となった。

NATOは北大西洋条約に基づいて、アメリカ合衆国を中心とした北アメリカ(=アメリカとカナダ)およびヨーロッパ諸国によって結成された軍事同盟であるが、 その対する相手がロシアであることは明白である。

一時、ロシアとの緊張関係が緩んでいた際には、目立った動きがなかったNATOとロシアだが、プーチン率いるロシアが経済の建て直しに成功し、ウクライナからクリミアを独立させロシア領とした昨年辺りから、EUによるロシアへの制裁が行われるようになったこともあって 、新たな緊張が高まり今や「新・冷戦」と呼ばれる状態に入った感じである。

そんな中、圧倒的な軍事力を持つロシア軍が昨年9月にウクライナ東部で軍事演習を行ったことに対して、東ヨーロッパ各国は強い危機感を持つようになり、昨年ワルシャワで行われたNATOの首脳会議で、ロシアの軍事的圧力に対抗するため、NATO軍の東ヨーロッパでの演習や訓練を拡大することが決 められたのである。

今回の米軍の部隊の投入は、そうした経緯を経た上で行われることとなったものであるが、ロシアはこれをよしとせず、ペスコフ報道官は「ロシアの国益と安全を脅かすものだ」と強く反発 。 これから先、実際に米軍とNATO各国との共同の軍事演習が行われると、緊張感はさらに高まることになりそうだ。

先週、米国から船で運ばれた戦車や兵器、軍用トラックなどが、長さ14キロにわたる鉄道車両900台に積み込まれ、ポーランドやリトアニア、ラトビア、エストニアなどに次々と搬送されている。 当初配備は1月末を予定していたようだが、オバマ大統領は退任を前にして、事を急いだようである。 それは、トランプ氏に引き継がれたら彼がどこまで先のNATO首脳会議の決定事故を実行するかどうか定かでなかったからに違いない。

13日には、米軍の部隊およそ3500名がドイツを経由してポーランドに到着。 さっそっく駐留部隊と合同の演習が始められるようである。 これはまさに 、昨年クリミアで行われたロシア軍の軍事演習に対向するためのものであるが、今後、部隊は移動しバルト3国などでも合同演習を行っていくことにななりそうだ。

こうした状況下でNATOとロシアとの緊張感がこれから先どこまで高まるかは、20日に就任するトランプ新大統領の行動次第であるが、ロシアとの友好関係を築くことを政策の柱にしたいと考えているトランプ氏だけに、しばらく様子を見た後、派遣した部隊や戦車などの兵器の引き上げを行う可能性もありそうだ。

しかし、もしも緊張感が消えない中でこうした行動に出るようなことがあると、ロシアの現状に強い危機感を持っている東ヨーロッパ諸国からは、米国に対する信頼感が 薄れることは間違いない。 トランプ新大統領の進めようとしている「米国第一主義」が、こんな形で現実化することになるかもしれない。

一方で同じNATOに属するトルコがここに来て、EU諸国と亀裂を深めロシアとの連携を進めているだけに、NATO内部でも不協和音が高まる可能性はありそうである。  トルコが欧州の「対中東政策」や「対ロシア政策」のキーを握っていることは、こういった点からも読み取ることが出来る。 

先ずはしばらくの間、トランプ新大統領の対ロシア政策の行方を見守っていくことになりそうだ。
浅川嘉富ホームページより

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