2016年7月3日日曜日

大麻=絶対悪”ではない?「医療用大麻」の実用化が広がる海外とタブー視する日本

大麻」はなぜ“合法化”へと向かっているのか? 今年2月に、元プロ野球選手の清原和博氏が覚せい剤取締法違反で逮捕、そして6月24日には、元俳優の高知東生氏が覚せい剤取締法違反と大麻取締法違反の容疑で逮捕され、覚せい剤やヘロイン、コカインなどの「ハードドラッグ」がじわじわと日本社会を蝕んでいる。
大麻
※写真はイメージです

そんななか、年間4万7000人もの中毒者が薬物の過剰摂取で命を落としている「麻薬大国」のアメリカ合衆国では「大麻(マリファナ)の合法化」が進んでいる。ワシントン州とロッキー山脈で有名なコロラド州では2012年、嗜好用大麻の合法化法案が住民投票で可決。コロラド州では2014年1月から、酒やタバコと同じように嗜好品としての「大麻」が店頭で販売されるようになった。

 矢部武氏の著書『大麻解禁の真実』(宝島社)によると、合法化の背景には主に3つの理由があるという。ひとつは90年代以降、「医療用大麻」の合法化と普及が進み、その幅広い医療効果が明らかになってきたこと、そしてその過程で大麻の持つ健康への害が、多くの人が考えているよりもはるかに小さいことが証明され、酒やタバコと同様に一定のルールを設ければ、そのリスクは十分にコントロールできるものだということ。さらに、大麻の所持や使用を禁止したり、犯罪者を取り締まったりするための社会的、経済的なコストが大きすぎるという点だ。

海外留学や旅行で大麻に手を出す日本人も

現在では海外留学や旅行の際に、日本では違法とされる他国の文化に触れるリスクが大きくなっているのも事実だ。今年4月には、スノーボード男子スロープスタイルの強化指定選手2人の大麻使用を受け、全日本スキー連盟は2人に競技者登録の無期限停止処分を科すと発表。メダルの期待がかかっていたバドミントンの桃田賢斗選手が違法賭博に手を染めたきっかけも、海外では合法のカジノだった。

大麻
※写真はイメージです

アスリートだけが例外というわけではない。日本のあるITベンチャー企業では、受け入れたインターン学生が海外留学の際に大麻を吸っていたことを周囲に自慢し、嗜好品としての大麻の快楽をたびたび語るその姿に頭を悩ませる。

関係者は「最近では学生が海外留学の際に、日本では違法だが他国では合法の大麻などに手を染めているという話をよく耳にします。海外のパーティーなんかに行くと訪問先の友人から『大麻をやってみないか?』とすすめられることも多いようで、大麻の使用を自慢するインターン学生も『合法なら大麻くらいよくないですか?』と開き直っていて、社内では頭を悩ませております……」と口にする。

日本では大多数の人たちが「大麻」をヘロインや覚せい剤のような「ハードドラッグ」と同じものだと考えており、そもそも違法の大麻を所持することが犯罪であることから、こうした認識が変わることは容易ではないだろう。

しかし、すでにイギリスでは大麻の成分を使用したてんかん治療薬が製薬会社によって実用化されているほか、多発性硬化症、糖尿病、アルツハイマー病などの治療への応用にも期待が広がっている。「医療用大麻」の効果が明らかになり合法化へと進んでいる国がある今、超高齢化社会を迎えている日本でも「大麻=危険」という感情的な議論ではなく、何が危険で何がそうでないのか、冷静に議論しなければならない時期が迫っているのではないだろうか。

海外で期待が高まる「医療用大麻」の実用化

参院選に新党改革から立候補した元女優の高樹沙耶氏は以前から「医療用大麻」の合法化を訴えており、22日の街頭演説でも「大麻は麻薬というイメージがあるが、アメリカ、ヨーロッパでは確実に医療現場で使わている。いずれ日本でも使われる。外国に利権を取られる前に日本でもやるべきだ」と語った。

そもそもなぜ日本では「大麻」と聞いただけで毛嫌いする人が大半なのだろうか? 戦後の1948年に制定された「大麻取締法」の歴史を紐解いてみると、その背景は今からおよそ100年前のアメリカ合衆国での「禁酒法」(1920年施行)にまでさかのぼる。当時アメリカでは、禁酒されていたアルコールに代わる嗜好品として大麻が流行していたが、33年に禁酒法が廃止。連邦政府は次なる標的を流行していた「大麻」に定めた。

そして「禁酒法」がなくなったアメリカで、37年に大麻が非合法化されることに。反大麻キャンペーンを煽る米国政府からすれば、占領下の日本で大麻がそこらじゅうにある状況は看過できず、アメリカ側の主導で「大麻取締法」が制定されたという背景がある。戦後世代は学校教育で「大麻=違法薬物」と教えられており、厚生労働省による「ダメ。ゼッタイ。」薬物防止キャンペーン運動のもと、日本人には医療用と嗜好用を一緒くたにした“アレルギー”がある。

まずは世界の現状を見て、健全な議論を始める時期なのではないだろうか。 日刊SPAより

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