2016年7月18日月曜日

韓中のTHAAD対立、易地思之の知恵を発揮せねば

韓中関係が試験台に上げられた。高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓半島(朝鮮半島)配備決定で中国が激烈に反発しているからだ。外交部報道官が配備手続き中断を促すかと思えば予備役将校は「米国と衝突が発生すれば韓国が最初の打撃対象になるだろう」と話す。また、民族主義性向の中国メディアは「THAADを推進した韓国の政治家の中国入国制限」や「THAAD配備地の星州郡(ソンジュグン)との往来断絶」を主張したりもする。

こうした中国の強硬姿勢を見る韓国国民の心境も穏やかではいられない。まず中国の反発が過度どころかあまりに高圧的なのではないかとの不満の声が出ている。中国が果たして北朝鮮の核阻止のためにてこの役割に誠意を尽くしたかという疑いを抱く人も少なくない。もう一方では中国の経済報復を懸念する。実際に中国産ニンニクの関税率を上げたところ韓国製携帯電話とポリエチレン輸入を全面禁止する貿易報復をした中国だ。2000年のニンニク波動は韓国人の胸中にトラウマとして残っている。中国はまた、南シナ海で領有権紛争を起こしているフィリピンや中国の反体制派関係者にノーベル賞を贈ったノルウェーに経済報復を加えたことがある。

THAAD配備決定をめぐる両国国民の激昂した反応は逆説的に1992年の修交以降に両国が固めてきた協力的関係から両国の国と国民が緊密な利害関係者として成長したという意味でもある。特に韓国で中国の存在感がめっきり大きくなったということがわかる。過去ならばTHAADに反対する中国の態度程度は韓国の決定に特別な考慮要因として作用しなかったかもしれない。しかしいまは中国の立場を配慮しなければならないという認識が大きくなった。韓国政府が2014年にTHAAD導入の必要性を提起してから導入まで2年の歳月がかかったのもこうした理由のためだ。韓国政界ですら「THAAD配備の有効期間を北朝鮮の核廃棄の時までに制限しよう」という主張が出ているではないか。THAAD配備地域を慶尚北道星州に決めたのもTHAADレーダーの探知範囲が中国内陸に届かないよう配慮した側面が大きい。韓国としては最大限誠意を見せた結果といえる。

これだけではない。朴槿恵(パク・クネ)政権になり韓中は蜜月関係を謳歌してきた。自由貿易協定(FTA)が締結され、米国の反対にもかかわらず中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加した。昨年9月には朴大統領が習近平中国国家主席の対日戦勝記念日への招請を受け入れ日米の厳しい視線を受けながら天安門の城楼に上がった。韓国が中国に傾いたという中国傾斜論という言葉まで出てきたほどだった。

韓中が修交したのは92年夏だ。両国の政治指導者の決断が重要だったが修交を可能にした背景には83年の中国民航機の春川(チュンチョン)不時着の際に韓国が見せた誠意と、86年と88年にソウルで開かれたアジア大会とオリンピックに中国代表団が大挙参加するなど、10年近く積み重ねてきた信頼が土台になった。修交以降は2000年のニンニク波動、2004年の歴史解釈をめぐる対立、2010年の哨戒艦爆沈事件後の北朝鮮制裁をめぐる見解差など屈曲を経験してきたが、お互いを敵対視しないという「パートナー」の概念を中心に着実に両国関係を発展させてきた。これに比例して両国の国民の間でも「友人の国」という友好的感情が積み重ねられた。こうした長い間の友好関係がTHAAD配備決定により溝が生じたりひびが入るならばどちらにも役に立たないことであることは自明だ。

 信頼の危機を乗り越えるため易地思之の知恵を発揮しなければならない時だ。まず中国はTHAAD配備が北朝鮮の核の脅威から韓国の国民を保護するための自衛的次元の安保手段であることを受け入れ大国らしい度量を見せることを期待する。相手が苦しい時に手を差し伸べてこそ真の友人といえないだろうか。

 4回目の核実験と中距離弾道ミサイル「ムスダン」の発射など、北朝鮮の核の脅威が実在化しかねない状況の中で国家の安危と国民の安全を最優先に保護しなければならないのはどの国でも最優先課題にならざるをえないという点を理解しなければならない。韓国もやはり中国がなぜそれほどTHAADに鋭敏な反応を見せるのかに対しもっと多くの神経を注ぎ不必要に刺激することがないようにしなければならないだろう。

 「道の遠さで馬の力を知り、歳月が流れてこそ人の心を知る」(路遙知馬力日久見人心)という。韓中は修交以降着実に信頼を積んできたが今回のTHAAD事態で見られるように信頼をさらに強固にする必要がある。1カ月後の8月24日には修交24周年だ。雨が降って地が固まるように、THAAD問題が韓中関係をさらに強固にする契機となることを期待する。中央日報より

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