7月に撮影された北朝鮮・豊渓里にある核実験場の衛星写真=デジタルグローブ/38ノース提供・ゲッティ共同
9日は北朝鮮の建国記念日にあたる。日韓両政府によると、北朝鮮の核実験場がある北東部の咸鏡北道吉州郡豊渓里(プンゲリ)周辺で午前、人工地震が発生した。過去4回の核実験をすべてこの場所で実施した。日本の気象庁は同日午前9時30分ごろ、北朝鮮付近で自然地震と異なる地震波を観測した。震源はごく浅く、マグニチュードは5.3と推定される。
韓国気象庁は人工地震の規模を前提に爆発の規模を過去最大の10キロトンと分析した。1月に実施した4回目の核実験の約2倍に当たるという。
日本政府は同日午前、関係閣僚による国家安全保障会議(NSC)を開催。安倍晋三首相は2度にわたって指示を出し(1)情報収集・分析の徹底(2)放射性物質の影響を把握するため各国とモニタリング態勢を強化――などを求めた。防衛省は放射性物質の影響を分析するため、航空自衛隊の航空機を発進させて大気中のちりを集めている。
北朝鮮には北京の外交ルートを通じて抗議した。首相声明も発表し「わが国の安全に対する重大な脅威で、地域および国際社会の平和と安全を著しく損なう。厳重に抗議し、最も強い言葉で非難する」と批判した。
韓国政府は午前11時から首相主宰で緊急のNSCを開催。日米など関係国とも連携して情報の分析や対応策を協議する。朴槿恵(パク・クネ)大統領は「核放棄のためにあらゆる手段を尽くし北朝鮮への圧迫を強化する」と強調した。
安保理は4回目の核実験や事実上の長距離弾道ミサイル発射を受けて3月、北朝鮮を出入りする全ての貨物の検査などを盛り込んだ制裁決議を採択した。加盟国の履行徹底や、さらなる制裁強化が今後、議論される見通しだ。8カ月ぶりという短期間での核実験実施を防げなかっただけに、北朝鮮の核開発に歯止めをかけるための実効性のある対応が問われる。
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長は1月の実験後も度々、核実験を続ける考えを表明した。3月には「核弾頭爆発実験」を近いうちに実施するとの発言を北朝鮮メディアが報道。爆発の威力や精度を確認する従来型実験にとどまらず、実際に武器として使える核弾頭を爆発させるなど新たな段階の実験を示唆していた。
北朝鮮は5月の朝鮮労働党大会で、経済再建と核開発を同時に進める「並進路線」を党規約に明記。射程3000キロメートル以上とされる中距離弾道ミサイル「ムスダン」や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)などの発射実験も繰り返している。今回の核実験を通じ北朝鮮が核兵器開発のノウハウをさらに蓄積したのは間違いなく、関係国にとって脅威の水準は一段と増した。
正恩氏に対しては米国が北朝鮮の人権侵害に責任があるとして経済制裁の対象に追加。北朝鮮は「宣戦布告とみなす」として強く反発した。米韓が在韓米軍への地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD=サード)導入を決めたのに対しても「配備位置と場所が確定され次第、徹底的に制圧するための物理的な対応措置が実行される」と威嚇した。 日経新聞より
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