2016年9月24日土曜日

南スーダン、迫る国家崩壊の危機 支援活動も困難に

5年前に誕生したばかりの世界で最も新しい国家に、崩壊の危機が迫っている。

南スーダンの政府軍と反政府勢力の紛争が混迷を極める中、今年7月には米国人を含む複数の援助関係者が政府軍兵士にレイプされる事件が発生。また米外交団も襲撃を受け、米政府系の援助隊の拠点でも略奪行為も行われた。これら事案は全て、わずか一週間の間に起きた出来事だ。

同国の混乱は今に始まったことではない。しかし7月に発生した一連の事件に加え、南スーダンは経済的にも破滅に近づいている。海外からの投資は干上がり、ピーク時は1日50万バレルあった原油生産量も今では13万バレルにとどまる。インフレ率は700%に近づいており、政府軍の兵士にはもう数カ月にもわたって給料が支払われていない状況が続く。先週末には南スーダンにおける難民人口が100万人を突破している。

南スーダンの成立に協力した国際社会は、現状を招いた現地政府とどう向き合えばいいのか頭を抱える。また同国で活動する支援団体も、政府批判をすれば国内での活動が制限されることを恐れて声を上げられない状況が続く。

2011年、イスラム教徒が多いスーダンからキリスト教徒が多い南部の独立を支援したのは、米国だった。ディンカ族であるキール大統領や政府軍と、ヌエル族であるマシャール前副大統領が率いる反乱勢力の間で衝突が発生しても、米国は南スーダンの最大の援助国であり続け、紛争が始まって以降16億ドルもの資金を現地政府に提供している。

紛争は一時的に停止した時期はあったものの、7月になると再び争いは激化。首都ジュバはここ数週間は平和だが、他の地域のほとんどでは争いが繰り広げられている。また政府は最近になり支援団体関連者のパスポートを没収したり、人道目的での飛行機の運用を禁止したり、国境なき医師団などの活動を一部で認めない方針に切り替えている。

「現地入りする前に予想していた以上に南スーダンの状況は悪化していると感じた」と、ジュバを訪問した米国の国連大使サマンサ・パワーは国連の安全保障理事会を前に発言。同氏は他の国では例がないほど、南スーダン政府が国連関連団体の現地での活動を制限していると指摘する。

7月のレイプ事件は、国連が拠点とするテレイン居住区で発生した。7月11日に100人ほどの兵士が同地を襲撃すると、外国人の支援隊員のうち少なくとも5人をレイプ。中には12時間にわたって5人の兵士に集団レイプされた隊員もいた他、非政府組織で働く地元のスタッフも1人殺害されている。現場にいた被害者の証言によると犯行は米国人を狙ったもので、国連の捜査機関も襲撃は単発的なものではなく事前に計画されたものだとの結論を出している。

同じく7月11日には南スーダンで活動する国連の世界食糧計画(WFP)の拠点でも襲撃が発生。その後一週間以上にわたってWFPの倉庫や補給施設などが荒らされ、食料4500トンとディーゼル油2万ガロン、コンピューター数十台を略奪した。

「首都ジュバでこのような事件が起き、しかも犯行は軍服姿の兵士たちによって行われた。前代未聞だ」とWFPのディレクターを務めるジョイス・カニャングワ・ルマ氏は話す。

WFPの拠点とテレイン居住区が襲撃される4日前には米国大使館の車両が政府軍の兵士に襲撃される事件も発生した。これを受け現地の米国大使は正式な抗議を行なったが、南スーダン政府は米国人が狙われたわけではないと説明している。

南スーダンのガイ副大統領は20日、ニューヨークでウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューに応じ、同国が紛争解決に向けて前進していると主張。また一連の攻撃が政府主導のものではなく、捜査によってすでに容疑者数名が逮捕されていると語った。「米国人はわれわれの友人だ。南スーダンは米国人たちからの援助があるから存在できている」ともガイ副大統領は話した。

国連や米国は現地の情勢を非難しつつも、南スーダン政府とは協力体制を維持し、紛争和解や技術面での援助等を続けている。ケリー米国務長官は残虐行為が続くならば支援は続けられないと表明したが、8月にナイロビで行われた会見では南スーダン政府に1億3800万ドルの新たな支援を行うとも発表している。

去年、南スーダンはアフガニスタンを抜き、人道支援活動を行うには最も危険な国となった。米国国際開発庁(USAID)系のプロジェクトであるヒューマニタリアン・アウトカムズによると、今年は世界の援助活動関係者の死者のうち3割が南スーダンで亡くなっているという。状況の悪化を受け、地元政府への抗議として支援団体を撤収させるべきだと話す関係者もいるほどだ。

「米国や欧州から来た支援隊員をレイプしてもなにも責任をとらされないとしたら、彼らは地元の人たちにはどのようなことをするのか。私たちが受けた扱いよりも100万倍ひどいことをするはずだ」とレイプされた経験を持つ隊員は話す。

5人から集団レイプされた隊員も、被害者全員が声を上げるべきだと話し、「沈黙を守りつづければ、彼らが勝ったことになる」と指摘した。 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルより

0 件のコメント:

コメントを投稿

日産ケリー前代表取締役の保釈決定 保釈金7000万円 東京地裁

金融商品取引法違反の罪で起訴された日産自動車のグレッグ・ケリー前代表取締役について、東京地方裁判所は保釈を認める決定をしました。検察はこれを不服として準抗告するとみられますが、裁判所が退ければ、ケリー前代表取締役は早ければ25日にもおよそ1か月ぶりに保釈される見通しです。一方、...