2016年9月16日金曜日

北の核は日本へ発射する 現実味帯びる「使用」の脅威

北朝鮮がミサイル発射や核実験を繰り返している。核問題で攻勢を強める計算は何か。米国は大統領選に入り動けなくなることが予想されるほか、国連も有効な抑止力を持っていないように見えるが、エスカレートする北朝鮮を抑止できるのだろうか。

9日の核実験で北朝鮮は、「核弾頭」という言葉で表現しており、核爆弾が実戦配備間近であることを示唆した。この意味で、日本に対する脅威はこれまでの段階とは違ったステージになっている。

先日、NHKテレビで日本への原爆投下の経緯を探るドキュメンタリー番組があったが、「軍から原爆開発で多額の予算を使ったので、なんとしても使用せざるを得なかった」という証言が強く印象に残った。今の北朝鮮も同じ事情なので、そのための「使用」が現実味を帯びてくる。

前出の番組では、原爆投下候補として、第一が京都、第二が広島であったが、決定に関与する大統領側近が京都に行ったことがあり京都を回避したという話もあった。これを今の北朝鮮に当てはめれば、核爆弾を使用する場合、中国や韓国ではなく、日本になる公算が大きいだろう。

北朝鮮のミサイルや核開発の意図は単純で、体制維持にある。米国はこれまで核保有国に対して攻撃してこなかった歴史がある。フセイン政権時のイラクが、核開発をしていることを理由に体制が崩壊したことを北朝鮮はよく知っているので、一刻も早く核の実戦配備にまでこぎ着けたいと思っている。

北朝鮮を取り巻く国際情勢は、イラクの時よりも複雑である。中国やロシアは北朝鮮の体制崩壊に否定的であり、結果として米国や国連の北朝鮮包囲網を壊している。

こうした国際社会の足並みの乱れも北朝鮮は計算して、今の時期ならば、国際社会からの圧力を回避できると踏んでいるのだろう。

国連による制裁も10年間にわたって行われているが、実効性がないようだ。国連制裁は、「モノ」では石炭、鉄鉱石の一部を除き輸入禁止、「ヒト」では非合法活動の外交官の国外退去、「カネ」では北朝鮮当局や関連団体の資産凍結となっているが、中国やロシアの輸入は事実上抜け穴となっている。

特に問題は中国である。北朝鮮の石炭や鉄鉱石の輸入を禁止すれば、かなりの実効性があるが、そこまで踏み込めない。というのは、石炭や鉄鉱石の禁輸は北朝鮮の体制崩壊につながるからだ。

北朝鮮は、中国が議長国を務めた20カ国・地域(G20)首脳会議中にミサイルを発射、中国のメンツをつぶす形で暴走している。ただ、中国にとっては北朝鮮の脅威は、ほぼないので、むしろ体制崩壊のほうがデメリットが大きい。国連が機能せず、北朝鮮が止まらないのはこのためだ。

そもそも中国経済はかなり落ち込んでおり、北朝鮮からの鉄鉱石の輸入があるのは不可解だ。G20では中国に対して「鉄鋼生産の削減」が課されたが、その政治的な意味は「北朝鮮から鉄鉱石を輸入するな」である。中国がポイントだ。 夕刊フジより

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