旧韓末の朝鮮において、袁世凱(1859-1916)はまるで摂政のようだった。20代の青年が、「駐箚(ちゅうさつ)朝鮮総理交渉事宜」という大げさな肩書を持ち、清の実質的な朝鮮総督として韓半島(朝鮮半島)に君臨した。武装したまま輿(こし)に乗って宮殿内まで入りこみ、国王の高宗を罵倒するのが常だった。当時、朝鮮に駐在していた欧米の外交使節までもが彼のことを監国大臣と呼ぶほどに、傲慢(ごうまん)この上なかった。
高高度防衛ミサイル(THAAD)問題をめぐって中国が韓国に対して見せる高圧的態度は、旧韓末の悪夢を思い起こさせるに十分だ。連日韓国をじゅうたん爆撃している中国の荒っぽい言動は、主権国家間の平等な外交関係が容認し得るレベルをはるかに超えている。米国のアジア回帰政策(Pivot to Asia)に対する中国の戦略的懸念は一理あるが、今のように乱暴に韓国を追い詰めると、むしろ逆効果を生む可能性が高い。中国当局は、韓国国民の自尊心という逆鱗(げきりん)に触れないよう、自制してしかるべきなのだ。
中国の主張とは異なり、THAADを米中間のグローバルな戦略ゲームにおける緊迫した懸案と見るのは難しい。内外に難題が山積している中国にとっては、国際常設仲裁裁判所(PCA)で敗訴した南シナ海領有権問題の方が、はるかに大きな事案だ。新シルクロード戦略たる「一帯一路」に立脚して世界へ伸びゆこうとする習近平国家主席のチャイナ・ドリームが、巨大な暗礁に乗り上げたことになるからだ。南シナ海の「一帯」に対する国際法的、世界市民社会的な領有根拠は崩れ、むき出しの力だけが残った。中国のヘゲモニーにとっては最大の危機だ。これに比べTHAADは、まだ実戦能力を完成させた技術ではない上、有事の際に北朝鮮の核ミサイルから在韓米軍と韓半島東南部を守る、防衛用の兵器にすぎない。THAADが中国包囲用の米国MD(ミサイル防衛)システムの下部要素だという中国側の主張は、事実の歪曲(わいきょく)であるだけでなく、韓国が国際政治上の独立したアクターだという点をまるっきり無視している。
中国の過剰反応は、THAAD配備そのものよりもはるかに重要な、韓中関係の本質を省察させる。中国は果たして韓国を同等の主権国と見ているのかという問題がそれだ。近代以降の世界は、「平等な主権国家の平和共存」の基礎を築いたウェストファリア条約(1648年)によって導き出された。第1次・第2次世界大戦の破局の上に建設された国際連合の世界秩序が、その現代的な成果だ。欧州連合(EU)もまた、ウェストファリア秩序を地域同盟の形へ拡張したものだ。そして米国文明は、欧州由来のウェストファリア秩序を米国式に再構成した米国的世界秩序(パックス・アメリカーナ)を導き出している。 朝鮮日報より
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2016年8月14日日曜日
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