北朝鮮はここ数カ月の間にミサイル発射を繰り返し、今月3日には中距離弾道ミサイル「ノドン」を発射して日本の排他的経済水域(EEZ)に落下させた。国連安保理では日米が中心となって報道機関向けの非難声明の発表を目指したものの、中国の反対で頓挫した。
この時、中国は「関係国は挑発したり緊張を高めたりする恐れのある行動は避けるべきだ」と主張し、北朝鮮への自制要求以上に、THAAD配備に対する反発をあらわにしていた。北朝鮮は7月9日と19日にも弾道ミサイル発射を強行したが、中国は非難声明に反対、安保理は発表に至らなかった。
ただ、ここ数カ月間、中国外交を取り巻く環境がにわかに厳しくなっている。南シナ海問題の仲裁裁判決では「全面敗北」となり、沖縄県・尖閣諸島への領海侵犯で中国に対するイメージは悪化。北朝鮮の動きを制御できないうえ、米韓にはTHAAD配備への口実を与えてしまった。共産党内や政府では、一連の外交上の失策への批判が高まっている。
こうした状況のなかで、習近平国家主席の威信を懸けた「中国外交の今年のハイライト」(中国外務省関係者)といわれるG20首脳会議を迎える。中国外交当局としては、わずかでもG20に悪影響を与える恐れのある芽は、可能な限り摘み取っておきたい。中国が日中韓外相会談に応じて、日本や韓国との対話で前向きな姿勢を演出して見せた背景には、隣国との対立を顕在化させてG20で取り上げられれば、習主席のメンツが失われるという判断があったとみられる。
加えて、北朝鮮が3カ国外相会議に合わせる形で潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射するという挑発行為に対し、中国指導部が強い姿勢を示す狙いもあるようだ。
中朝関係は依然こう着状態にある。朝鮮労働党大会(5月)後に、リ・スヨン朝鮮労働党副委員長の訪中によって、関係改善を模索する動きが出始めたものの、その後、高官の往来は停滞しているもようだ。また、北朝鮮は党規約に核開発と経済建設を同時に進める「並進路線」を明記し、弾道ミサイル発射とともに核兵器増産に向けた動きを加速させる。中国が北朝鮮に非核化を求める姿勢に変わりはなく、核をめぐる葛藤は収まりそうにない。 毎日新聞より
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