2016年8月19日金曜日

超高精度の「光格子時計」で標高差を測定 アインシュタイン理論応用で世界初

約15キロ離れた東京都と埼玉県の2地点に超高精度の光格子時計を設置し、2地点の異なる重力から生じるわずかな時間の差をとらえることで2地点の標高差を測定できた、と東京大学などの研究グループが16日発表した。「重力が強いところでは時間がゆっくり進む」というアインシュタインの一般相対性理論に基づいた光格子時計比較による標高差計測の試みで、センチメートルレベルの計測は世界初という。研究成果は15日付の英科学誌電子版に掲載された。

研究グループによると、一般相対性理論により、異なる高さに置かれた2台の時計を比較すると高さが低い方の時計は地球重力の影響をわずかながらより大きく受けてわずかながらゆっくり時を刻むため、超高精度の光格子時計の遠隔比較で「相対論的な効果を使った標高差測定」ができるという。

東京大学大学院工学系研究科の香取秀俊(かとり ひでとし)教授(理化学研究所香取量子計測研究室主任研究員)と国土地理院の研究グループは、直線距離で約15キロ離れた東京大学(東京都文京区)と理化学研究所(埼玉県和光市)に同教授が開発した光格子時計をそれぞれ1台と2台設置。2地点を光ファイバーでつなぎ時間を超高精度で計測し比較した。

その結果、東京大学の時計は理化学研究所の時計と比べてごくわずかながら時間の進み方が遅れた。標高が低いために地球の中心にわずかに近く、重力もわずかに大きいためと考えられ、精密に計算したところ2地点の標高差は15メートル16センチとの結果になったという。

香取教授らは、光格子時計を各地に設置することで将来新たな「量子水準点」を形成し、火山活動による地殻の上下変動の監視や超高精度の標高差計測システムの確立などの利用が期待できるとしている。

光格子時計は、特殊なレーザー光を組み合わせて格子状の空間を多数つくり、そこにストロンチウム原子を閉じ込めてレーザー光を当て、原子の振動数を測定することで「1秒」の長さを決める。香取教授が2001年に考案し、2003年に実証。その後も研究を進め、2015年2月に「2台の光格子時計を作って作動させたところ2台のずれが『160億年で1秒』という超高精度だった」と発表した。

これは宇宙年齢の138億年で1秒も狂わない超高精度であることを示した。また、このレベルの超高精度は「重力が強いところでは時間がゆっくり進む」という一般相対性理論による「時空間」を見る新しい計測ツールになる、と期待されていた。光格子時計は次世代の「秒」の定義の有力候補として世界中で競って研究されている。

今回成果が発表された研究は科学技術振興機構(JST)「戦略的創造研究推進事業(ERATO)」や文部科学省「光・量子科学研究拠点形成に向けた基盤技術開発」などの一環として行われた。
サイエンスポータルより

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