ミサイル発射を繰り返す北朝鮮が最近、原子力潜水艦のための軍事施設の造成を始めたことが明らかになった。北朝鮮は、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の試射も盛んに行い、原子力潜水艦を建造中との情報もある。原潜に弾道ミサイルを搭載して日本海を潜水すれば探知はほぼ不可能、日米韓への脅威は極度に上がる。国際包囲網のなかで軍事力誇示を繰り返す金正恩氏の核戦略の青写真がみえてきた格好だ。韓国では米韓同盟に基づき、米空母や原子力潜水艦などの朝鮮半島配備待望論が高まっている。
■日本海沿岸、新浦に原潜用の海軍基地建設か
北朝鮮の東海岸、咸鏡北道・新浦港に新たな軍事施設が建設中であることが分かった。英国の軍事専門誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」が7月22日報じたところでは、新浦港の南に新しい軍事施設が建設中であることが衛星写真などから判明し、これが開発中の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)搭載の新型潜水艦(3000トン級)の拠点となるとみられるという。
現在、北朝鮮の潜水艦は大型のものでロメオ級(76・6メートル、1859トン)だが、複数のSLBMを搭載するに3000トン級が望ましい。新浦港の新しい施設は3000級が停泊可能な規模だ。
これに関連して韓国紙、中央日報(7月26日付)は、北朝鮮の内部情報筋の話として「北朝鮮は現在、3500トン級の原子力潜水艦2隻を建造中で、近いうちに進水できる状況」と報じた。北朝鮮が保有するロメオ級潜水艦は1950年代の旧ロシア製を元に北朝鮮が製造したものだが、ディーゼルエンジンで最大潜行時間は1日程度。同紙によると、原潜保有は金正恩氏の「目下、最大の関心事」という。
北朝鮮は昨年からたびたび、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験を行っている。北朝鮮のSLBMは「北極星1号」と呼ばれるが、旧ソ連が開発した潜水艦発射ミサイル「R-27」(1962年開発、1968年配備)を元に作られており、射程は2200-4000キロとされる。北朝鮮は1990年代に入手、「R-27」を元にSLBMだけでなく、中距離弾道ミサイル「ムスダン」を作った。
SLBMは今年4月の試射で点火に成功、7月9日の試射で噴出にも成功しており完成間近とみられている。北朝鮮の原子力潜水艦保有は旧ソ連製などの改造説が高い。北朝鮮の原潜保有への動きは、10年以上前から情報レベルでささやかれてかれてきた。ここにきて、港湾施設、開発、ミサイルと準備情報が出そろった。北朝鮮の原潜が核弾頭付きのSLAMを搭載して長期間、潜行した場合は軍事衛星でも捉えるのが困難だ。
■北朝鮮のSLAM完成まで「あと2-3年」、緊張する韓国
今年に入って核実験、連射するミサイル発射など北朝鮮の挑発が続く中で韓国では、米原子力空母「ジョージ・ワシントン」の朝鮮半島配備や米原潜の巡回、米グアム・アンダーソン空軍基地に待機する戦略爆撃機B52の在韓米軍配備などを求める声が出ている。
実際、核実験後の李淳鎮・合同参謀本部議長とスカパロッティ・在韓米軍司令官の協議では、在韓米軍の米原潜配備なども含まれていたもようだ。米韓でこうした議論が本格的に始まったのは昨夏から。金正恩体制の挑発がエスカレート、北朝鮮が準戦時体制を宣言するたび、米韓は米の核戦略資産の韓国配備で対抗してきたが、挑発が常態化してきており、これに対抗する必要が出てきている。
韓国が特に神経をとがらせているのが北朝鮮の潜水艦の動きだ。北朝鮮が原潜の完成に至らなくても、潜水艦発射弾道ミサイル(SLAM)が完成までには「あと2-3年」と見積もられている。北朝鮮を隠密裏に出航したSLAM搭載の潜水艦を探知するのは難しい。
北朝鮮の潜水艦による奇襲への米韓軍の対応は(1)韓国軍潜水艦や米第7艦隊の原潜による、北朝鮮潜水艦の出航直後からの追跡、探知(2)韓国海軍のP3C哨戒機や米韓のイージス艦による追跡・探知(3)北朝鮮が奇襲をかけてきた場合は、米イージス艦のレーダー探知や迎撃などだが、潜水艦による奇襲への対応は極めて困難とされる。
北朝鮮が弾道ミサイルを搭載した原子力潜水艦を保有するという「悪夢のような事態」(軍事専門家)は、北朝鮮の核弾頭小型化と同様、朝鮮半島を中心に東アジアおよびアジア太平洋地域の安全保障環境を激変させることになる。北朝鮮のSLBM問題は、すでに昨年からアジア安全保障会議(シャングリラ対話)では米韓、日米韓防衛相会談で取り上げられているが、共同対応の具体案は途についたばかりだ。(産経新聞編集局編集委員)
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
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