2015年8月28日金曜日

米国の逆鱗に触れる訪中

韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が、米国の慎重論を押し切るかたちで、中国が9月3日に北京で行う「抗日戦争勝利70周年記念行事」の軍事パレードを参観することを決めた。欧米諸国や日本が、中国の軍拡路線や人権侵害を警戒・問題視するなか、自由主義諸国では突出した対応であり、同盟国・米国の顔に泥を塗る行為といえ、逆鱗にふれた可能性もある。米中新冷戦時代が現実化するなかで、今後、米韓同盟の空洞化が進みそうだ。

「米国が、朴氏の軍事パレード参観について、公式コメントを出すかどうかは分からない。ただ、不愉快な決定であるのは間違いない。朴氏が10月中旬に予定している訪米や、オバマ米大統領との首脳会談が、冷たい扱いになることは避けられないだろう」

国際政治学者の藤井厳喜氏はこう語る。注目される米国の動きは後述するとして、今回の朴氏の決断はあきれるしかない。

韓国大統領府は26日夜、中国の抗日記念行事への出席を表明していた朴氏が、軍事パレード参観することを発表した。加えて、習近平国家主席との中韓首脳会談が9月2日に行われることも公表された。

大統領府では、中国との友好協力関係を考慮し、中国が朝鮮半島の平和と統一に寄与することを望んで決めたとしている。米国は、中国が東・南シナ海などで軍事拡張路線をあらわにするなか、軍事パレードを含めた一連の記念行事を「国際社会やアジア地域での米国の求心力低下を図る戦略の一環」と冷徹に分析しており、朴氏に出席を見合わせるよう求めていた。

これに対し、中国は朴氏の取り込みに必死だった。

当初、軍事パレード参観を表明していたのは、ロシアのプーチン大統領や、中央アジア諸国やアフリカ諸国の首脳だけで、習氏のメンツが潰れそうだったのだ。

自国メディアを通じて、「朴氏が最終的にどのような判断を下すかによって、中国の民衆の受け止め方も違ってくるだろう」(環球時報・電子版、12日)、「悪意ある妨害で軍事パレードに支障が出た場合、中国は座視しないだろう」(同、24日)などと、事実上の恫喝(どうかつ)を続けていた。

最終的に、安倍晋三首相や欧州諸国の首脳は、中国の軍拡や人権問題に抗議する意味から欠席を決めたが、朴氏は同盟国の要請を蹴り飛ばして、かつての宗主国で、最大の貿易相手国である中国に従ったことになる。

韓国政府内には「習氏が最も期待している軍事パレードを欠席すれば、せっかくの訪中効果が半減する」との懸念があったという。

だが、朴氏の軍事パレード参加は、歴史的経緯からも疑問だ。

韓国を含む朝鮮半島は終戦まで日本であり、韓国は抗日戦争を戦った「戦勝国」ではない。加えて、約400万人が犠牲となったとされる朝鮮戦争で、韓国・国連軍と北朝鮮・中国人民解放軍(義勇軍)は戦っており、同戦争は休戦中なのだ。

韓国国内でも、戦火を交えた人民解放軍のパレードを、朴氏が観閲することへの強い反対論もあった。だが、北朝鮮の軍事挑発を強硬姿勢で乗り切ったことで支持率が上昇傾向にあり、これを追い風に反対論を押し切れると判断したとみられる。

米国は今後、韓国に対して、どのような対応を取るのか。

前出の藤井氏は「米韓同盟が空洞化していく」といい、続けた。

「米国の多数の若者が、韓国を守るために朝鮮戦争で亡くなった。今後、米国内で『朝鮮戦争とは何だったのか』『韓国とは、どういう国なのか』という議論が出てくる。米軍は、韓国に駐留している第1機甲戦闘旅団の任務を今年で終了させ、今後は米本土から交代の部隊を派遣する『ローテーション配備』に変更するなど、朝鮮半島へのコミットメントを減らしつつあるが、これが加速するかもしれない。中国バブル崩壊が明らかになってきた時機に、中国傾斜を強める朴氏の判断は理解しがたい。ともかく、米中新冷戦時代が現実化するなか、米韓関係は冷え込むはずだ」
夕刊フジより

この国は終わりました。米国の顔に泥を塗る行為を平気でする国である。米韓関係は大きなしこりを残す事になりそうである。宗主国に従って生き残るしかないでしょう。

0 件のコメント:

コメントを投稿

日産ケリー前代表取締役の保釈決定 保釈金7000万円 東京地裁

金融商品取引法違反の罪で起訴された日産自動車のグレッグ・ケリー前代表取締役について、東京地方裁判所は保釈を認める決定をしました。検察はこれを不服として準抗告するとみられますが、裁判所が退ければ、ケリー前代表取締役は早ければ25日にもおよそ1か月ぶりに保釈される見通しです。一方、...