韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領と中国の習近平国家主席はここしばらく、外交上の気心の通じた親友のように見えていた。
中国語も堪能な朴大統領は昨年、北京の天安門広場で開催された抗日戦争勝利70周年を記念する大規模な軍事パレードを習氏と並んで参観した。一部では、両者の親密ぶりをレーガン元米大統領とサッチャー元英首相の盟友関係になぞらえる見方もあった。
だがその関係はいまや破綻している。習氏が韓国との関係よりも、北朝鮮の残忍な政治体制の存続を優先させたことが背景にある。
北朝鮮が9日行った核実験は、北アジアの外交状況が劇的に変化していることを浮き彫りにした。これは、北アジアがほぼ間違いなく世界で最も危険な地域になったともいえる不穏な現実を突きつけている。
韓国が米国の忠実な同盟国であり、中国が北朝鮮の社会主義国同志であることを踏まえれば、朴氏と習氏の良好な関係は意外だった。だが両国は親しくすることで利害が一致していた。
習氏は米韓関係に亀裂を生じさせる目的があったほか、就任当初に戦犯が祀(まつ)られている靖国神社を参拝して中韓の強い反発を買った日本の安倍晋三首相に対する朴氏の悪感情をあおりたい考えもあった。
一方、朴氏も中国側が北朝鮮の核開発抑制に向けて一層の努力をすることを期待し、中国との関係構築に取り組んだ。
朴氏は依然として中国の努力を望んでいる。だが、北朝鮮が9日に5回目の核実験を実施したことから判断すれば、その希望が叶う見込みは低いと言えるかもしれない。
北朝鮮が核実験や弾道ミサイルの発射を繰り返す中、中国は国連による制裁の強化に賛成してきた。だが、習氏が消極的な立場を見せている制裁措置があり、その中には北朝鮮を方針変更に追い込むかもしれないものもある。それは、北朝鮮にとって命綱である原油供給の中断だ。
北朝鮮の街中は制裁の痛みを映し出すどころか、車が溢れかえっている。また、マネーロンダリング(資金洗浄)の懸念があるとの米財務省の判断で国際銀行システムから締め出されているにもかかわらず、高級品は依然として中国国境を越えて流入しており、上層部が現在の政治体制を見限ろうとしない一因になっている。
習氏は一度も会ったことのない北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記に対して明らかに何の情も持っていないが、切り捨てることもしない。
習氏が代わりに朴氏との友好関係を推進したため、一時は北アジアの戦略的勢力図が変化する可能性があるようにも見えた。
米国は、朴氏が中国の軍事パレードを参観したことに不信感を示した。朴氏は遠くからでも目立つ明るい黄色のジャケットを着て習氏と壇上に並び、何カ月も続く痛烈な反日プロパガンダの集大成を見せつけた。軍事パレードでは、米海軍に脅威となる対艦ミサイル「空母キラー」も披露された。
米国はアジアにおける同盟体制の中枢を担う日韓関係の将来を不安視した。
そして今、中国と韓国の関係が急激に悪化している。中国は韓国に対し、米国の地上配備型ミサイル追撃システム(THAAD=サード)の設置計画を進めた場合、深刻な亀裂を生じさせると警告している。中国は韓国最大の輸出市場で、韓国企業は中国による経済制裁の可能性を懸念している。
9日の核実験を受け、韓国国内では核武装論が再燃する可能性が高い。朴氏は同案を拒否している。だが政界の一部や保守系メディアは、米国の「核の傘」では不十分かもしれないとの見方を強めている。
韓国の保守系与党の高官、元裕哲(ウォン・ユチョル)氏は1月、北朝鮮が4回目の核実験を実施した後、「自分たちのレインコートを着込むべきだ」と発言した。
この間、日韓の政府関係は改善してきた。一方で日中関係は依然として課題が山積している。東シナ海の係争水域の島々には中国の沿岸警備艇と漁船が押し寄せている。
こうしたこと全てにおいて習氏は高い代償を払うことになる。朴氏との関係のほころびは、アジア北部の戦略策定を転換させようとする思惑と併せ、北朝鮮を援護する習氏の心積もりのほどを示している。専門家の間では、中国が韓国に寄り添い北朝鮮を見放せば、北朝鮮が敵に回りかねないと習氏が懸念しているとの見方もある。
結論を言えば、中国がより懸念しているのは北朝鮮の崩壊だ。ソウルを「火の海」にして焼き尽くすと幾度も脅迫するような常軌を逸した政権の手に核ミサイルが渡る可能性より、崩壊によって自国の国境に米軍が並ぶ可能性の方だ。
北朝鮮を巡る情勢は、核開発を放棄させる見通しのない望みが尽きた地点に近づきつつある。朴氏と習氏には大惨事を回避すべく手を組む機会があった。習氏は、中国以外に友好国を持たないつまはじき国家を選ぶ賭けに出た。 ウォール・ストリート・ジャーナルより
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2016年9月11日日曜日
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