嫌韓本のたぐいではない。著者の李度●(イ・ドヒョン)氏は韓国保守言論界の重鎮であり、本書はジャーナリズム半世紀を経た反骨と憂国の書といえる。
李氏は金大中氏の闇を告発し、17件もの告訴を受けて身ぐるみ財産を失った経験を持つが、ひるむことなく評論活動を続けてきた。いま「韓国の消滅」まで危惧しながら日本で出版する理由は、北朝鮮による政治工作が韓国各界に浸透し社会が左傾化した結果、闊達(かったつ)な筆を祖国では出せない現実のためである。
憂慮はまず、米韓同盟崩壊の危機だ。かつて盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は「在韓米軍撤収の研究」を命じていたという。慌てた合同参謀本部が知恵を絞ったのが「戦時作戦統制権の韓国委譲」案だった。「撤収」の本心をごまかす案だったが、委譲は連合司令部の解体、つまり同盟解体だったことに変わりはない。
幸い李明博(ミョンバク)政権が委譲を延期し、続く朴槿恵(パク・クネ)政権が無期限延期を決めた。しかし現在の文在寅(ムン・ジェイン)政権が再び「早期委譲」を主張している。
迫る北朝鮮危機、文政権が「米国の軍事攻撃」を拒否したらどうなるのか。李氏は「米国が同盟を破棄せざるをえない」とみる。同盟の崩壊である。しかし、「韓国が孤立し消滅しても、米国は痛くもかゆくもない」
日本統治時代に活躍した詩人、金素雲(キム・ソウン)氏の「醜くても母は母」との言葉を引いて韓国と韓国人を鋭く批判する後半では、激高する民族性に冷静な考察を加えている。韓国人は概して反体制的だとする。自由より平等を好むので、妬み、憎み、敵対する。政治勢力はこの憎悪を憤怒の感情を操って対立と分断をあおってきたとする。
その韓国人の激高は「乱の歴史」を生んだとして、日清戦争のきっかけを作った「東学党の乱」から李承晩(リ・ショウバン)政権を倒した「4・19学生デモ」「光州事件」、昨年の「ロウソクデモ」までを記者としての体験を織り込んで分析した。
最終章には韓国を浸食してきた北朝鮮の政治工作の内実とその団体リストが掲載されている。韓国の裏面史が鮮やかに描かれている。 産経ニュースより
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2017年10月29日日曜日
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