北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の暗殺作戦を含む米韓両軍の最新の軍事計画「作戦計画5015」を筆頭に、韓国軍の機密資料295件が何者かのハッキングで流出していたことが10月10日、明らかになった。韓国では北朝鮮の犯行とみられているが、問題なのは、情報戦という舞台で“反撃”する能力が韓国にないことだ。韓国のエスピオナージ(スパイ活動)能力の貧弱さを目の当たりにし、米軍は自前で対策に乗り出した。
情報漏洩
朝鮮日報(電子版)などによると、「作戦計画5015」が漏れたのは昨年9月。この計画は米韓連合軍の作戦計画で、北朝鮮と韓国が全面戦争になった場合に実施するもの。具体的には、金委員長ら北指導部の移動状況の識別▽指導部の避難先の封鎖▽強襲作戦▽作戦後の離脱-という4段階の計画内容が含まれていた。2015年に立案したものだが、わずか1年あまりで北朝鮮に筒抜けになった。
もちろん非情な諜報戦の世界では、情報を盗むこともあれば盗まれることもある。問題なのは、韓国だけが「盗まれっぱなし」なことだ。背景には、韓国の政治的な未熟さと混乱する国内事情がある。
脱北者頼みの功罪
韓国政府や軍はもろ手を挙げて脱北者を歓迎する。最大の理由は冷戦時さながらの対抗心で「韓国の方が北朝鮮よりいい国なのだ」ということを内外にアピールできるからだ。特に国内の親北勢力に対しては強い説得力がある。実際に北朝鮮で生きてきた人々が、北の体制下での非人道的な扱いや民衆の苦痛を語るのだから。
一方で情報面では、脱北者たちは北朝鮮の体制に絶望して亡命してきただけに、持っている北朝鮮情報を洗いざらい提供してくれるのだが、そこには落とし穴がある。脱北者は自分の“価値”を高めようと、あやふやな情報まで虚飾して流す危険性があることだ。しかし、より問題なのは“脱北してしまった”ことだ。諜報の世界で本当に必要なのは、脱北者という「終わったスパイ」ではない。
最も成功したスパイ
第二次大戦終結から10年ほど経った西ドイツ(当時)のフランクフルトで、喫茶店を営む夫婦がいた。2人は1957年、戦後西ドイツで初の社会主義政党、ドイツ社会民主党(SPD)に入党した。妻は党ヘッセン州南部地区事務所の秘書となり、夫はフランクフルト地区の党事務局長となった。以降、夫はその勤勉な仕事ぶりと誠実な人柄、さらに日本でいう「選挙対策本部」での働きが評価され、党内で要職を歴任していく。入党から15年経った72年、夫はヴィリー・ブラント首相の個人秘書に抜擢(ばってき)された。だが、夫妻は二人とも東ドイツのスパイだった。
国内を監視する西独の諜報機関「連邦憲法擁護庁」(BfV)が数年にわたる内偵捜査のすえ74年、夫をスパイ容疑で逮捕した。夫のギュンター・ギョームの名をとり「ギョーム事件」と呼ばれたこの一件は西ドイツで政権を揺るがす大問題となり、ついにブラント首相の辞任につながった。
東西ドイツ統一後に旧東側の関係者らの証言で事件の詳細が明らかになったが、東ドイツのスパイ組織である国家保安省「シュタージ」の幹部(スパイマスター)は当時、要職について西ドイツの重要情報を送り続けるギョームを高く評価していたものの、さすがに首相秘書になると危機感を抱いたという。
SPDは東ドイツに融和的で、その中枢に東ドイツのスパイがいることが明るみに出るデメリットは、スパイがもたらす情報などのメリットを吹き飛ばしかねない“爆弾”だからだ。とはいえ、そうした心配を抱かなければならないほどギョームは成功した。
15年にわたって現在進行形の重要機密を流し続けたギョームはスパイとして超一流なのはもちろん、首相秘書として一国の政策に影響を与えられる地位を得ており、工作員としても頭抜けていた。
国内対策
翻って韓国では、北朝鮮の核・ミサイル開発など軍事的脅威を目前にしながらも、こうした「生きたスパイ」を養成しようという動きがない。
大物の脱北者が来れば、国内政治工作のため自分たちの手柄のように大々的に報じる。しかし軍事的にベターな方法は、脱北を一切報じないことだ。これなら北朝鮮側にとっては、脱北者は生死不明のため、その行方はわからず(中国など第三国かもしれない)、韓国がどれだけ北の情報を握ったのかも確定できない。
脱北者をまるで勲章のように見せびらかさなければ、韓国に忠誠を尽くすスパイや工作員として養成し、北朝鮮に再潜入させるといった方法もありえるのだ。
ヒューミント
今年5月、在韓米軍が「ヒューミント部隊」の創設を準備していることを東亜日報や中央日報(いずれも電子版)が報じた。ヒューミントとは人による情報収集・分析活動、つまりスパイのことだ。現地メディアによると、従来、在韓米軍は北朝鮮関連の情報収集に偵察衛星や偵察機による画像や通信情報の収集を行ってきたが、ヒューミントについては韓国の情報当局が収集した情報に依存してきたという。
新部隊の創設は、もうヒューミント情報の収集を韓国に任せてはおけない、という米国の意志表示ととれる。北の核実験やミサイル発射、あるいは要人の死去や人事において、韓国が事前に何か情報を得ていたことがあったかを振り返れば、米軍の措置も当然か。
核の脅威を振りかざす北朝鮮に浸透するスパイを養成するのなら、同じ言葉をしゃべり、同じ文化と歴史を持ち、同じ人種の国である韓国こそが適任なのだが…。
そもそも作戦計画5015の実施にあたり最大のネックは、金委員長の居場所を特定できないことにある。いざ金委員長と政権幹部を空爆しようにも“現在”の居場所がわからなければ攻撃のしようがない。偵察衛星では“影武者”を見抜けないのだ。
米軍は11年に国際テロ組織アルカーイダ指導者のウサマ・ビンラーディン容疑者のアジトを強襲する際も、ヒューミント情報を決め手としている。
「対北」における人材についても、米国の市民権を得るため米軍に入隊する韓国移民は珍しくない。北朝鮮に対する諜報活動は、米国主導でようやく“戦力化”できそうだ。 infoseek newsより
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2017年10月24日火曜日
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