北朝鮮の核・ミサイル開発で域内の緊張が高まる中、トランプ米大統領が11月上旬、いよいよ東アジアに乗り込んでくる。
5日から訪れる日本では、プロゴルファーの松山英樹さんを交えた日米首脳ゴルフや北朝鮮による拉致被害者の家族との面会など話題に事欠かない。ただ、日中韓を含む5カ国歴訪の全体像を眺めると、アジアを重視したオバマ前大統領時代とは様変わりしたトランプ氏の身勝手な「America first (米国第一主義)」が浮かび上がってくる。
ホワイトハウスがトランプ氏のアジア歴訪を正式に発表したのは10月16日。日本の総選挙の勝敗が決していない時点で「11月5日から訪日し、安倍晋三首相と会談する」と記してあったのは、ご愛嬌だろう。一方、ホワイトハウス当局者の説明に対して韓国メディアが、大統領は日本(5~7日)と中国(8~10日)でそれぞれ2泊するのに、「なぜ韓国だけが(7~8日の)1泊なのか?」と悲痛な声を上げたのは当を得ている。というのは、トランプ氏は、韓国に米大統領として25年ぶりの「国賓」として招かれているからだ。
要人の公式訪問には、「実務訪問」「公賓」「国賓」などがあるが、国賓訪問はホスト国が威信をかけて招待国の首脳をもてなし、友好関係を内外にアピールするもの。日本の場合は天皇陛下による歓迎晩さん会などいくつかの行事があるため、最低でも2~3泊は必要とされる。
米大統領訪問をめぐる日韓の因縁は、2015年4月にオバマ氏が国賓として訪日した前後の経緯に遡ることができる。韓国はこの時、オバマ氏の訪日日程を削ってでも自国を訪問するよう外交戦を仕掛け、日程が確保できないホワイトハウス側から「日本訪問は国賓でなくてもよい」との声が出るなど、安倍政権の面子が丸つぶれになりかけたことがあった。
在ワシントン日本大使館関係者は当時、「日本は過去、アジアで米大統領の時間を独占できたが、もはや韓国と共有する時代になってしまった」と悔しさをにじませていた。しかしトランプ氏の日程を受けて、今度は韓国側が「韓国はただの経由地になった」(東亜日報)と不満を爆発させている。
ホワイトハウス当局者はその後、「トランプ大統領は韓国国会で演説する。(1泊だけだが)訪問は特別なものとなる」と述べ、米大統領がアジア初外遊で外交演説を行う場所を日本ではなく韓国としたことで顔を立てたと強調した。トランプ氏は演説で、北朝鮮への圧力強化を国際社会に訴え、軍事的な威嚇を維持しつつ北朝鮮の核問題を外交解決に誘導していく決意を述べるとみられている。
ふつうならお題目を「言うだけ」の演説になりがちだが、今回のトランプ氏については「想定外のことが起きるのでは」と見る外交関係者は多い。なぜなら、トランプ政権はこれまで、数々の国際的な外交上の合意を反故にしてきたため、その言動に対する信頼度はゼロに近いからだ。
例えば、トランプ氏は最近、イランとの核合意の破棄を示唆した。この合意はイランが核兵器開発をやめる代わりとして欧米6カ国が制裁を解除したもので、北朝鮮に核放棄を呼び掛ける説得材料の一つだった。こうした大前提をひっくり返される不安があるのだ。
さらに、激震が走ると予想されているのが、「貿易」である。トランプ氏は日中韓3カ国歴訪の最重要課題の一つとして貿易を掲げており、自由貿易協定(FTA)の一方的な押し付けや既存の合意の見直しを迫ってくる可能性がある。
オバマ前大統領は任期中、外交安保や経済でアジアに軸足を移す「リバランス(再均衡)政策」を打ち出し、その象徴として11年から東アジアサミット(EAS)に参加、内政問題で急きょ取りやめた13年を除き、毎年出席していた。東アジア域内の「秩序や規範」の確立を主導し、中国を取り込むのが長期的な狙いだった。しかし、こうした方針は雲散霧消してしまう恐れがある。
トランプ氏は12日にEASが開催されるフィリピンに足を運ぶものの、東南アジア諸国連合(ASEAN)との首脳会議を終えたら、EASそのものは「スキップ(欠席)」する。日中韓など各国首脳とは個別に会談するから「議論だけの会議」(国務省当局者)は必要ないということか。東アジアの国際協調主義を米国が主導しようという目論見は、米国とアジア各国の2国間主義に取って代わられつつある。
日本がトランプ氏の「安倍好き」にあぐらをかいているうちに、アジアはいつの間にか分断と疑心暗鬼の地域に変容してしまうかもしれない。 Forbes JAPANより
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2017年10月31日火曜日
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