11月のドナルド・トランプ米大統領のアジア歴訪を控え、米政権と、核・ミサイル開発に邁進(まいしん)する金正恩(キム・ジョンウン)政権の緊張が高まっている。今後、米朝衝突や正恩氏の「暗殺」で半島に混乱が生じた場合、日本社会は大量の北朝鮮難民に対峙(たいじ)せざるを得なくなる。数十万人レベルとの予想もあるなか、日本の民間団体は「そのとき」に備える作業に着手し始めた。
「日本政府は1990年代の前半、北朝鮮の崩壊がささやかれたときに最高30万人ぐらいの難民が日本にやってくるのではないかということをシミュレーションして検討を進めていた。結果的にはそうならなかったわけだが、今回はそれに当たるようなことが起きる可能性が前回よりも高まっていると思う」
拉致問題に取り組む「特定失踪者問題調査会」の荒木和博代表は、東京都内で9月末に開かれた集会でそう話した。調査会は「『その後』プロジェクト」として、北朝鮮崩壊後に起こり得る問題について考え、世論啓発の取り組みを始めた。
集会では、あるシナリオをもとに議論が進められた。その概要は次のようなものだ。
《北朝鮮で正恩氏が側近に暗殺され、当初は極秘とされるが、4日後に死亡が発表される。朝鮮人民軍の韓国側への投降が各地で起き、一般民衆も韓国に入り始める》
《暗殺から21日後、能登半島沖で12人が乗った北朝鮮船が漂流しているのが見つかり、その後各地で相次ぐ。総数は3カ月で1万人超。上陸した人の多数は北朝鮮帰国者の家族や子孫だが、「自分は拉致された」という人も混じっていた。やがて漂着者の中に鳥インフルエンザ感染の可能性が確認される。その後、収容施設の待遇に不満が高まり、施設から勝手に出ていき、行方不明になる人間も出てくる》
シナリオはあくまで一つの可能性を示したものだ。しかし、日本に来る難民が数十万人レベルとなれば、さらに混乱は大きくなる恐れがある。
集会では、北朝鮮問題に詳しい専門家が、北朝鮮難民の到来で起こり得る課題を指摘した。
その一人、「北朝鮮難民救援基金」の加藤博理事長が挙げたのが“偽装難民”の問題だ。
加藤氏は「大きな問題として考えられるのは、中国のボロ船の漁船が難民船になってくるという可能性もなきにしもあらずで、実際にそういうルートは成り立つ」と指摘し、こう続けた。
「北朝鮮から逃げてくる人は脱北者という今までの考え方だけではなく、より良い条件を求めてやってくる中国の朝鮮族もその範囲に含まれるだろうし、範囲は非常に広がる。きちんと保護されなければならない人と、保護する必要のない人が一体となって日本に押し寄せてくる。そこをどのようにスクリーニング(選別)していくかということが大きな課題だろう」
北朝鮮からの難民をめぐっては、麻生太郎副総理兼財務相が武装難民が押し寄せる可能性に言及して「警察で対応できるか。自衛隊、防衛出動か。じゃあ射殺か。真剣に考えた方がいい」と述べ、批判を集めた。
この麻生発言についても、集会で言及があった。評論家の三浦小太郎氏は「ああいうことは隠さないでいったほうがいい。北朝鮮難民の中に武器を持っている人はいるかもしれない。でも、見えるところで武器を持ってくる人がどこにいるのか。隠して持ってくるだろう。それをどうやって銃殺とか逮捕とかできるのか、現実的なところから話していったほうがいい」と指摘した。
衆院選でも、北朝鮮の「有事後」の問題については、ほとんど議論にならなかった。前出の荒木氏は今後も取り組みを続け、「リポートなどを作り、国会での議論に反映させていきたい」と語った。
日本は目の前にある危機を正視しなければならない。 夕刊フジより
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2017年10月31日火曜日
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