中国のインターネット上で「精日(精神日本人)」という俗語が注目を集めている。一般的には「心理的に自らを日本人とみなす若い中国人」へのレッテルだ。一部は旧日本軍のコスプレという極端な趣味を共有し、逮捕者も出た。教育やメディア宣伝を通じて反日・抗日史観が主流となっている中国社会で、なぜ「精日」現象が起きているのか。
日本兵コスプレ
「中国人のクズだ!」。
3月8日、全国人民代表大会(全人代)に合わせて北京で開かれた王毅外相の記者会見。約2時間の会見を終えて立ち上がった王氏が人さし指を振り上げ、怒気を帯びた声で言った。
国営新華社通信傘下で南京に拠点を置く商業紙「現代快報」の記者が「このごろ、精日分子が絶えず民族の最低ラインを挑発している行為をどう思いますか」と王氏に問いかけたのだ。中国人記者の間では「シナリオ通り」のやり取りと見る向きもある。
南京の警察当局は2月22日、南京戦の激戦地となった紫金山のトーチカ跡で旧日本軍の軍服を着て記念撮影したとして、20代の中国人男性2人を拘束した。ネット上では「武運長久」と書かれた日章旗付きの銃剣やサーベルを手にポーズを決める2人組の写真3枚が拡散していた。
近年、こうした日中戦争の戦跡を舞台にした旧日本軍のコスプレ写真がしばしばネット上で暴かれ、「精日」による常軌を逸した行為として糾弾されている。
中国の代表的な質問サイト「知乎」では、精日の背景や定義について議論が交わされた。最も多くのユーザーが賛同している定義は「日本が好きなあまり本国人に深い憎しみを抱き」▽「国内の大規模災害の発生を喜び」▽「最後には自らの血統を恥とし、自分が本当の日本人だと幻覚を抱いている人」との回答だ。
別の回答者はこう書き込んだ。
「日本文化を好み、中日の文化産業の格差を正確に知っており、中国の文化に厳しい意見を言う人たち、これを精日とするのは濡れ衣だ」
「尊大な自国自賛の教育に反発し、日本のアニメに影響を受け、日本を完全にユートピア化してしまう子供たち。これは成長に従って治る」
「本当の精日に関しては、正直彼らの考え方が理解できない。ただ人をむかつかせるためにやっているようだ。『イスラム国』と同じようなものか?」
倒錯した憧れ?
多くの日本人にとっても、アニメや漫画などの日本文化を好み、日本に親しみを持ってくれる若者は大いに歓迎だが、旧日本軍のコスプレを好む心理は理解しがたいところだ。
毎日、抗日ドラマが放送されている中国では、旧日本軍の兵士は幼少時から強烈なイメージとしてすり込まれる。残酷な悪役としてではあるが、意識の奥底で大きな存在となっているのは想像に難くない。
屈折、倒錯した心理が旧日本軍への一種の憧れを生んでいるのか。あるいは、当局から一方的に押しつけられた抗日史観を無意識に「相対化」しようとする心理的試みかもしれない。
コスプレの趣味はなくとも、歴史的存在としての旧日本軍に興味を持ち、マニアックな知識を有する“日本軍オタク”は意外と多い。SNS上では旧海軍兵学校の訓戒「五省」をあしらったスタンプまで存在する。自らの“敵”について知的好奇心を抱くのは自然なことともいえるが、こうした人たちも「精日」として攻撃される可能性がある。
精日“ハンター”も
精日をどう定義づけ、分析するにせよ、当局側は彼らの思考が権威への反逆につながりかねないとして警戒感を高めている。
中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報が運営するニュースサイト「環球網」は、コスプレ写真をネット上で捜索、暴露するなど精日への追及を続けている福建省の男性を取材。男性によると精日には組織化されたものと個人的なものの2種類があるといい、個人的な精日の多くは反抗期が要因だと分析する。
一方の組織的な精日こそ、男性が追及の対象とする存在だ。彼らがコスプレに使用する軍服は「抗日ドラマの衣装よりも時代考証が正確で専門的」であり、1セット十数万円もする高価なものが多いという。
別の“精日研究者”は、コスプレが活動の中心である「軍服グループ」は千人足らずだと分析。政治的な観点の発表を主とするグループもあり、その論調は日本経済の発達ぶりや民度の高さ、軍事力の強さを強調し、中国を「あなたの国」などと他人行儀に呼ぶのが特徴だという。
●(=腹のつくり)旦大学サイバー空間管理研究センターの沈逸主任は環球網に「猟奇的な心理や刺激の追求、正確な世界観・人生観・価値観の欠落が若者を精日に走らせている」と述べている。一方、「抗日ストーリーがなぜ、日本の漫画のような魅力を持てないのかわれわれは反省する必要がある」とも指摘した。
北京大学の張頤武教授は環球網に、「少数の『精日』と、日本文化を好む広範な層を区別する必要がある」と強調しつつ、「政治意識にかける精日は日本文化の魅力を日本人全体に投影し、それに一体感を感じ、最後には自らの民族の最低ラインを越えてしまう」と危機感をあらわにしている。産経ニュースより
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
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