2018年3月30日金曜日

中朝“血の同盟”にトランプ氏激怒 軍事オプションに障害

ドナルド・トランプ米政権が、中国と北朝鮮に冷徹な目を注いでいる。習近平国家主席と、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長による電撃的な中朝首脳会談で「朝鮮半島の非核化」が話し合われたが、北朝鮮には「核・ミサイル開発」を放棄する兆候がまったくないからだ。「中朝軍事同盟復活」と「在韓米軍撤退」の謀略とは。米国は、北朝鮮への不信感を高めており、さらに対北圧力を強化するとの見方もある。
 
「昨晩、習氏から『正恩氏との会談は非常にうまくいき、正恩氏が私との会談を楽しみにしている』というメッセージを受け取った。ただ、残念ながら、それまでの間、最大限の制裁と圧力(maximum sanctions and pressure)は、何としても維持され続けなければならない!」

トランプ氏は28日、自身のツイッターにこう書き込んだ。

中国と北朝鮮が急接近した背景には、米国主導の対北制裁が効果を発揮していることに加え、トランプ大統領が、次期国務長官にマイク・ポンペオCIA(中央情報局)長官を指名し、大統領補佐官(国家安全保障担当)にジョン・ボルトン元国連大使を内定するなど、軍事的選択肢を排除しない対北強硬派を抜擢(ばってき)したことが大きそうだ。

トランプ氏の投稿は、それを裏付けている。ツイッターでは「会談が楽しみだ!」と、対話による北朝鮮の「核・ミサイル開発」放棄にも期待を寄せたが、「最大限の圧力維持」という表現には、中朝の急接近への「警戒感」もうかがえる。

現に、中国国営・新華社通信の記事で、習氏は「われわれ双方は『中朝の伝統的友誼』を絶えず伝承していくべきだと何度も表明している」といい、正恩氏は「金日成(キム・イルソン)主席と、金正日(キム・ジョンイル)総書記の遺訓に従って、『朝鮮半島の非核化』実現のために尽力することは、われわれの変わらない立場だ」と語ったと伝えられた。

これは極めて危険だ。

「中朝の伝統的友誼」とは、朝鮮戦争を通じて血で固められた「血の友誼(ゆうぎ)」を意味するとみられる。正恩氏の最高指導者就任後、中朝関係は冷却化した。中国では中朝友好協力相互援助条約の「参戦条項」の無効を主張する声もあったが、復活した可能性が高い。米国が軍事オプションを選択する際の大きな障害となるのは確実だ。中朝接近を示すかのように、会談では習氏の訪朝も決まった。

「朝鮮半島の非核化」には、北朝鮮の「核・ミサイル開発」の放棄だけではなく、その延長上に「在韓米軍の撤退」も視野に入っている。正恩氏が5月の米朝首脳会議でこれを持ち出し、「従北」といえる韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が支持しかねないのだ。

「北朝鮮主導の朝鮮統一」もあり得る展開だが、正恩氏の発言は簡単には信用はできない。
 
北朝鮮の国営メディア、朝鮮中央通信は中朝首脳会談は伝えたが、正恩氏の「『朝鮮半島の非核化』実現のために尽力する」という発言には、まったく触れていない。

そもそも、正恩氏は2012年に修正した憲法に「核保有国」と明記している。北朝鮮にとって核保有は「国是」である。国際社会との取引材料も「核」しかない同国にとって、核は体制維持の生命線なのだ。

北朝鮮の核開発継続を示す動きもある。

米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は27日、北朝鮮・寧辺(ニョンビョン)の核施設にある実験用軽水炉(ELWR)の試験運用が始まった兆候が確認されたとする、商業衛星写真に基づく分析を伝えた。

中朝首脳会談をめぐる、北朝鮮と中国の思惑も、実に疑わしい。

評論家で軍事ジャーナリストの潮匡人氏は「北朝鮮としては、南北首脳会談や米朝首脳会談に向けて、中国という『虎の威』を借りて自らの立場を強くする狙いだろう。中国は、米中貿易戦争の兆しもみえるなか、北朝鮮との太い関係を見せつけることで、『われわれ中国を敵に回せば、米朝首脳会談も思い通りにならない』という米国へのメッセージを示したのではないか」と話す。

「対米けん制」で利害が一致した両国だが、北朝鮮に「核・ミサイル開発」の時間稼ぎを許す恐れもありそうだ。

米国政治に詳しい福井県立大学の島田洋一教授は「中国は、北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の議長国だ。中朝韓で『6カ国協議を再開するから、制裁を一部解除してほしい』と言い出す恐れも考えられる。ただ、(新しい米大統領補佐官の)ボルトン氏は『(北朝鮮の)非核化はリビア方式以外にはない』と公言している。リビア方式とは、情報機関の人間が入って核査察を実施することだ。これでリビアは核物質だけでなく、ミサイルと化学兵器物質も出した。対北強硬派がトランプ氏の側近に就くので、米国がだまされる可能性は減るだろう」と語っている。夕刊フジより

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