中国空軍は25日、SNSアカウントでの報道官声明を通じ、南シナ海で実戦訓練を行うと同時に、台湾北部の宮古海峡で偵察行動訓練を行ったと発表した。中国空軍の申進科報道官は、一連の訓練を「戦争準備のための演習」だと語っている。行われた時期は明らかにされていないが、23日の米海軍の「航行の自由作戦」など、西側諸国の軍事行動を意識しているのは明らかだ。中国側が「戦争」という言葉を明言したこともあり、主要海外メディアは一連の訓練や南シナ海情勢に警戒感を強めている。
◆「直接的な戦闘準備」
申報道官の声明によれば、南シナ海での“威力偵察作戦”には、最新鋭のH-6K戦略爆撃機、Su-35戦闘機も参加。中国のH-6K爆撃機は、アメリカ、ロシア以外の国で、唯一長距離空対地ミサイル発射能力を持つ。APは、南シナ海からであれば「遠くオーストラリアまで射程に収める」と、H-6Kが実戦訓練に参加したことの危険性を指摘する。
沖縄本島と宮古島の間にある宮古海峡でも、H-6KとSu-30戦闘機による戦闘訓練が行われた模様だ。日本の防衛省は、23日に中国の爆撃機・戦闘機8機が宮古海峡を通過したことを確認。航空自衛隊の戦闘機がスクランブル発進している。宮古海峡は日本にとって戦略的に重要であるばかりではなく、台湾有事の際にも地政学的な鍵となるエリアだ。
申報道官は一連の訓練を「将来の戦争のリハーサルであり、最も直接的な戦闘準備」だと位置づけた。また、中国海軍航空部隊のチェン・リャン司令官は中国国営メディア、グローバル・タイムズに「パイロットたちは、いかに厳しい訓練であっても、そこがいかに遠く離れた地域であっても、恐れを抱くことなく進軍する。彼らは常に戦争に備えた心構えを維持している」とコメントした(英テレグラフ紙)。
◆米英仏も「航行の自由」作戦を展開
一連の「戦争」発言は、アメリカをはじめとする西側諸国の軍事行動を意識してのものなのは間違いないだろう。アメリカは23日、ミサイル駆逐艦マスティンを南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島のミスチーフ礁付近に派遣し、「航行の自由作戦」を展開。中国側はこれを「南シナ海の島々とサンゴ礁を取り囲む海域に勝手に侵入した」と強く非難していた。
また、フランス領ニューカレドニアを母港とする仏フリゲート艦ヴァンデミエールが、南シナ海で航行の自由作戦を行ったという報告もある。フランス海軍は肯定も否定もしていないが、世界の海軍の動きを伝えるウェブサイト『Navy Recognition』によれば、2ヶ月間の長期航海中のヴァンデミエールは、南シナ海海域で米駆逐艦マイケル・マーフィーと合同訓練を行っているようだ(AP)。イギリスも、フリゲート艦サザーランドを南シナ海に派遣し、航行の自由作戦を行うと発表している(テレグラフ)。
実際、中国空軍の南シナ海での訓練は、かなり実戦を意識したものだったようだ。申報道官は、訓練の成果に、Su-35の運用による長距離作戦能力の飛躍的向上、「戦闘状態下の訓練」を通じたパイロットの練度の向上を挙げている。一方で、中国政府は米海軍の航行の自由作戦について、「深刻な政治的・軍事的挑発行為」だと非難し、米中空軍・海軍の「接近遭遇」は「不測の事態や事故を招く危険性がある」と警告した。
◆フィリピンとは蜜月関係を構築
西側諸国と中国の冷戦状態が続く一方で、長年南シナ海の島々の領有権を争ってきたフィリピンは今、中国と急接近している。同国のカエタノ外相は23日、北京で王毅外相と会談し、南シナ海で中国と共同で石油・天然ガスの発掘調査を行う話し合いを始めたことを明かした。また、フィリピンのドゥテルテ大統領も、近く南シナ海の中国・海南省で行われる地域経済フォーラムに参加する予定だ。カエタノ外相は、現在の中比関係を「黄金時代」だと持ち上げた(AP)。
一連の動きを通じ、中国は南シナ海周辺の東南アジア諸国を経済力で取り込みつつ、軍事力の強化で日米欧の干渉を押さえ込もうとしているのが透けて見える。中国の軍事予算は今年、ここ3年間で最大の8%増となっている。米海軍大学のアンドリュー・エリクソン教授は、ワシントン・ポストの取材に対し、「中国は軍事予算を増やすことにより、近代史で最大・最速の造船能力、数の上で世界最大の海軍・沿岸警備隊・海上民兵、そして世界最大の弾道ミサイル・巡航ミサイル部隊を得ることになるだろう」と語っている(FOX)。
一方、中国の軍事コメンテーター、ソン・シャオジュン氏は「中国は過去30年間、いかなる戦争も行っていない。自国の安全のために軍隊を育てているだけだ。外国が心配するようなことは何もない」と語り、中国政府も同様の公式見解をくり返している。しかし、テレグラフ紙が、習近平主席が先日、敵と「血まみれの戦争」をする用意があると人民に向けて「ナショナリスト的な演説」をしたと指摘するように、中国の国内向けの姿勢は、対外向けの平和主義の顔とは180度異なっている。どちらが真実に近いにせよ、南シナ海・東シナ海情勢には引き続き強い警戒が必要だ。infoseek newsより
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
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