今年3月中旬に中国の瀋陽で逮捕され、北朝鮮への強制送還の危機に瀕している脱北者8人が、いまも中国にいることがわかった。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)アジア局のフィル・ロバートソン局長代理は、米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に対し、脱北者8人は逮捕後、北朝鮮に強制送還されず、勾留され続けていると明らかにした。
ロバートソン氏は、中国の公安当局が彼らの身柄を国境地帯に移動させるなど、北朝鮮に強制送還する動きを見せていないことを歓迎すべきことだとし、彼らは最終目的地に安全にたどり着けるだろうと、注意しつつも楽観的に考えていると述べた。
中国の公安当局は通常、逮捕した脱北者を2ヶ月以内に北朝鮮に強制送還する。
今回はその期間を過ぎても動きがないことから、8人が最終目的地、つまり韓国に入国できる可能性が高まったとHRWは見ているものと思われる。
強制送還されない理由はいまのところ不明だが、脱北者の人権擁護を求める国際社会の声の高まりに加え、核実験や弾道ミサイル発射を巡り中朝関係が悪化したことが影響した可能性がある。
本当にそうなら、今後の北朝鮮情勢の大きな変化につながる可能性もある。現在のところ、脱北者は金正恩体制にとって大きな脅威にはなっていない。これまでに韓国入りした脱北者は3万人を超えているが、共同体として統合されてはおらず、政治力もないに等しい。
だが、中国にはこの数倍とも言われる脱北者が潜伏している。数は力だ。この人々が韓国へ向かえば脱北者の政治力は増すし、受け入れを迫られる韓国政府にとっても、新たな対北政策を立案する必要が出てくる。
また、中国当局による摘発と強制送還の恐怖が小さくなれば、脱北に踏み切る人も増えるだろう。そうすれば、北朝鮮国内と外部世界をつなぐルートが増え、北への情報流入も勢いを増す。現状、北朝鮮当局は恐怖政治をもって外部情報を遮断しようとしているが、それも追いつかなくなるかもしれない。
そのような可能性を承知の上で、中国が脱北者の強制送還を止めるのだとすれば、それは北朝鮮に対する、経済制裁以上に厳しい姿勢の表れと見ることもできる。つまり、中国が金正恩体制を見放す決定的な兆候とも言えるわけだ。
件の8人は3月中旬、中国遼寧省の瀋陽市内を車で移動中、身分を示す書類を持っていないことが交通警察の検問で発覚し、逮捕された。8人はキリスト教の手助けで脱北したため、強制送還されれば重罰に処される可能性が高い。HRWは中国当局に対して、8人の北朝鮮への強制送還を中止するよう要求している。
今後の北朝鮮情勢全般への影響を考え、各国政府は8人の強制送還が実行されないよう、中国に働きかけるべきだろう。 デイリーNKより
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2017年5月25日木曜日
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