2017年5月29日月曜日

NAFTA再交渉は米がメリットを再認識する交渉プロセスに

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加11カ国は21日、ベトナムのハノイで閣僚会合を開き、早期発効を目指す共同声明を採択した。TPPを離脱した米国を念頭に、当初の署名国が協定に再加入しやすくする枠組みの検討も盛り込んだ。

トランプ米大統領が任期途中で辞任した場合、次期大統領が誰になるかにもよるが、米国がTPPに戻ってくる可能性も高いので、復帰の余地を残してすぐに対応できるようにしたわけだ。

トランプ大統領が「2国間協定が今後の自由貿易政策の軸になる」と言っても、それぞれの国で交渉するのは大変だ。NAFTA(北米自由貿易協定)をやめ、TPPをやめ、パリ条約をやめと、米国は国際社会で「やる」と決めていたことを大統領が変わっただけで一方的に放棄してしまう。

非難されても、トランプ大統領は「何が悪いんだ」とどこ吹く風だ。ここは現在のままでフリーズしておいて、「次の人」と話し合いをするのがいいと思う。ただ、TPP11カ国の共同声明の直後、米通商代表部のライトハイザー代表は復帰の可能性はないと発言しているが、親分の手前そう言わざるを得なかったのかもしれない。

ライトハイザー氏は今月15日に代表に就任したばかりだが、その3日後の18日には、メキシコ、カナダと結んでいるNAFTAの再交渉に向けた手続きに入ることを米議会に通知している。日米鉄鋼交渉でこわもてのネゴシエーターだったところを売りにしているので、しばらくは交渉相手を蹴散らしていく姿を見せスタンドプレーを続けるのだろう。会見で「NAFTAは米国の農業、投資サービス、エネルギー業界には成功だが、製造業にとってはそうではない」と指摘、議会との90日の協議期間を経て、8月16日以降に再交渉を始める見通しだという。


北米の販売シェアが高い日本の自動車産業は、関税ゼロで対米輸出ができるメキシコに多くの生産拠点を置いており、NAFTAの再交渉次第では今後の日米通商交渉にも影響する可能性も高い。

ただ、私はライトハイザー代表が言うほど、NAFTAが米国に不利だとは思っていない。NAFTAのおかげで、メキシコは米国の製品をかなり買っていて、貿易不均衡もそれほど大きくない。そういう意味で、一方的な解釈でのNAFTA再交渉という考えも、私は彼が実体を勉強すれば見方は変わってくるだろうと思っている。

現在、米国の自動車産業は国内で部品を作ってメキシコに持っていき、完成車にしてから米国に運ぶというかなり高度なサプライチェーンができている。そういう互恵関係の流れをきちんと分析して勉強すれば、NAFTAのメリットはわかると思う。

仮にカナダとの間でもめた場合、クライスラーのようにカナダで造っているような自動車会社は非常に困ることになる。こういう実体がわかると、NAFTAというのは非常に成功した「地域の自由貿易協定」であることが理解できるはず。

これにより、メキシコ国民の生活レベルは上がってきたので、メキシコから米国に流れ込む人の数も減ってきている。メキシコを通過点として米国に流れ込む中南米からの密入国者は増えているので、その点を整理して実態を把握すべきだ。NAFTAの効果を米国が再認識するというような交渉のプロセスになることが望ましいと思う。 夕刊フジより

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