改正法は情報漏えいを防ぐため取扱事業者への規制を強化する一方、情報を分析して新サービスを手掛ける企業の動きが出てきたことも踏まえ、ルールを示して適切な活用を促す狙いがある。
顔や指紋認識など身体的特徴に関するデータも個人情報に含まれることを明確にし、人種や信条、病歴といった「要配慮個人情報」を取得する際は本人の同意を得るよう義務付けた。
扱う個人情報が五千人分以下なら対象外とする規定は廃止され、中小・零細企業が加わった。情報取得時に本人に目的を伝えることや、漏えいを防ぐ適切な保管措置が求められる。
情報の活用に向けては、氏名を削除するなど個人を特定できないようにした「匿名加工情報」であれば本人の同意なく売買できるようにした。改正法は二〇一五年九月に成立。一部施行により、不正を監視する「個人情報保護委員会」が一六年一月に設立された。
◆「匿名社会」の深刻化に懸念 新聞協会が声明
日本新聞協会は二十九日、改正個人情報保護法が三十日に全面施行されるのに際し「報道機関は法規制の適用除外とされており、情報の提供側も規制の対象とはならないことを国民に理解してもらうよう努める」などとする声明を発表した。
声明は改正法について、病歴や犯罪歴など特に配慮を必要とする「要配慮個人情報」を新設するなど、保護の対象となる範囲が広がったと指摘。事業者に厳格な取り扱い義務が課されることで、「匿名社会の深刻化につながるのは必至だ」と訴えている。
その上で、法規制の適用対象外となる報道機関は取材源の秘匿を徹底し、高い記者倫理を養うための教育に力を入れ、個人情報の適正な管理に努めると表明。
行政や警察に対しては、社会に伝えるべき情報の開示を強く求め、プライバシーや人権に十分配慮し、個人情報を報じる公益性・公共性をケースごとに真摯(しんし)に検討するとした。
また、改正法がさらなる匿名社会を招いて国民の安全や「知る権利」を損なうことがないよう厳しくチェックしていくとの姿勢を示している。
◆新聞協会の声明要旨
改正個人情報保護法施行に関する日本新聞協会の声明の要旨は次の通り。
日本新聞協会は、個人情報を適正に保護し、国民の権利利益を守ることの重要性は十分に理解している。しかし、懸念されるのは、二〇〇五年四月に個人情報保護法が施行されて以降、社会全体に個人情報を流通させることへの萎縮が広がり、社会のあらゆる分野で匿名化が進んでいることである。緊急時に必要な情報の流通が阻害されているばかりか、自治体が災害時に行方不明者等の氏名を公表しなかったり、警察当局が重大事件の被害者を匿名で発表したりすることが常態化しつつある。
改正個人情報保護法は、対象となる個人情報の範囲を広げ、個人情報の取り扱いについて従来以上に事業者に厳格な義務を課すものであり、このままでは社会全体にさらなる萎縮効果を及ぼし、「匿名社会」の深刻化につながるのは必至である。
日本新聞協会は、「表現の自由」を保障した憲法二一条のもとにある「取材・報道の自由」を守り、国民の「知る権利」に応えていくために、改正個人情報保護法の全面施行にあたり、報道機関としての立場と考え方を、以下の通り表明する。
(一)報道機関は、改正個人情報保護法において引き続き法規制の「適用除外」とされた。報道目的で個人情報が取り扱われる限り、提供する側も提供される側も規制の対象とはならないことを国民に理解してもらうよう努める。
(二)個人情報を提供した側が不利益を被ることがないよう取材源の秘匿を徹底するとともに、これまで以上に高い記者倫理を養うための教育に力を入れ、個人情報の適正な管理に努める。
(三)行政機関や警察当局には、社会に伝えるべき情報の開示を強く求めていく。そうして提供された個人情報については、プライバシーや人権に十分配慮し、報じることの公益性・公共性をケースごとに真摯に検討し、必要性を判断した上で報道機関の責任において報道する。
(四)改正個人情報保護法が、さらなる匿名社会を招いて国民の安全や「知る権利」を損なうことがないよう、その運用を厳しくチェックしていく。 東京新聞より
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