■「木には感情があり、痛みを感じ、学習し、記憶し、病気の仲間をケアする」
このように草や樹木に感情があるという説は、生物学者の間では古くから認識されてきた。しかし、それをさらにツッコんで「木は周囲の木たちとコミュニケーションを取っている」と、まさに地べたから考察した本が話題になっている。
「The New York Times」によれば、昨年5月に出版された『The Hidden Life of Trees: What They Feel, How They Communicate- Discoveries from a Secret World(木々の隠された生命の営み)』は、世界中で瞬く間にベストセラーとなり、現在19カ国で翻訳されている。
ピーター・ウォーベンさんのウェブサイト 画像は「Peter Wohlleben」より
著者はドイツ人のフォレストレンジャー(森林警備隊員)ピーター・ウォールベンさん(51)だ。彼は子どものころから樹木に魅せられ、大きくなったら森林環境を守る職に就きたいと思っていたという。
しかし、林学を学んだ後、1987年にドイツ西部ラインラント=プファルツ州の製材所で働き始めたときは、かなり失望していたと話す。
「山林を伐採したり、切り倒した丸太に殺虫剤を散布したり森林保護とは正反対の仕事でした。これが本当に自分がやりたかったことなのかと悶々としていました」(ピーター・ウォールベンさん)
だが、森林エコツアーの引率を任されたことから運命が急展開していく。ツアー客と森深く分け入るうちに、巨木の美しさにすっかり魅入られてしまったのだ。また、同時期に学者チームの調査に同行したことも、木々を荘厳で創造的な生命体として感じるようになったきっかけだという。
木は二酸化炭素を吸収して酸素を放出し、人間同様に「呼吸」しているが、それだけではない。匂いや味、電気的信号など高度な非言語コミュニケーションを取っているのだ。その名も「Wood Wide Web」。
「毎日が発見の連続でした。木には感情があり、痛みを感じ、学習し、記憶し、病気の仲間をケアすることを知りました。親の木は子どもの木と一緒になって成長するのです。それを知ったら、もう製材所で木を切り刻むことはできなくなったのです」(ピーター・ウォールベンさん)
■木には“木生”がありネットワークを構築して共存している
「The New York Times」の記事より
専門家の中にはピーターさんの“人間くさい言葉遣い”に難色を示す者もいる。「コミュニケートする」の代わりに「話す」、「泣く」などだ。だが、ピーターさんは笑い飛ばす。
「しかつめらしい専門用語を使った瞬間から、すべての感情は停止して、人はそれ以上想像できなくなってしまいます。でも、『この木は、子どもにお乳を飲ませている』と言えば、私が何を言ってるのかわかってもらえるんですよ」(ピーター・ウォールベンさん)
そう、木には人生ならぬ“木生”があるというのだ。しかも、人間社会と同様にネットワークを構築しながら共存している。一本の木だけでは気候を左右することはないが、木々の驚異的なネットワークは、暑さ寒さを和らげ、膨大な水を蓄え、湿気を生み出しエコシステムを循環させることができる。そして、このような環境であれば、木は何百年も生きながらえることができるという。
地球上では、生きとし生けるものすべてがコネクトしている。シンプルに考えてみれば、地上から緑がなくなれば、私たち人類も存在しないことになるのだろう。そんな思いを巡らせながら身近な緑に目をやれば、いつもの風景が違って見えてくるから不思議だ。 トカナより
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