2017年5月26日金曜日

トランプ「ロシアゲート問題」がウォーターゲートより深刻である理由

一体、だれがリークしたのか

トランプ米大統領が窮地に立っている。ロシアゲート事件で政権内部からの情報漏れが止まらないのだ。ウォーターゲート事件でニクソン大統領が辞任に追い込まれたのも、リークが大きな理由だった。大統領はどうなるのか。

トランプ政権とロシアの不適切な関係が指摘されるロシアゲート事件は、いくつかの問題が混在している。主な疑惑は昨年の大統領選でのロシアによる選挙妨害、対ロ制裁緩和の密約、FBIに対する捜査妨害、それにテロ関連情報の機密漏洩の4点だ。

それぞれ、クリントン陣営に対するロシアの選挙妨害にトランプ陣営が関与したか、フリン前大統領補佐官がロシアと制裁緩和の密約を交わしたか、コミー前FBI長官に捜査中止を求めたか、大統領がロシア側にテロ情報を漏らしたかどうかが焦点になっている。

これについて先週、大きな動きがあった。米司法省が特別検察官(special counsel)を任命したのだ。大きな権限をもつ特別検察官の捜査によって政権の疑惑が深まれば、議会の下院が過半数で大統領弾劾訴追を決め、上院が3分の2で弾劾を決めることができる。

米議会は上下院とも与党の共和党が多数を握っている。だから共和党が反対すれば弾劾訴追も弾劾そのものも可決できない。だが、与党多数だからといって楽観はできない。もともと、与党の中に大統領に批判的な議員が多いからだ。

事件の展開によっては、大統領が不利になって追い込まれる事態も十分、予想される。その際、鍵を握っているのは政権内部からの情報漏えい(リーク)と、それを基にしたメディア報道である。
 
たとえば、最近でもワシントン・ポストは大統領がコーツ国家情報長官とロジャーズ国家安全保障局(NSA)長官に対して「大統領選をめぐるロシアの妨害にトランプ陣営が関与した証拠はない」と公表するよう要請した、と報じた(5月22日付電子版)。

この記事を読むと、日本だったらこれ1発で政権が倒れるのではないか、と思えるほど衝撃波に満ちている。大統領がコミー長官を解任する前の3月、2人の長官に「トランプ陣営がロシアと共謀した事実はないと声明を出せ」と要請したというだけでも驚きだ。

私が注目したのは情報源である。記事によれば、2人の現役官僚と2人の元官僚が匿名を条件に同紙に語っている。官僚は「大統領と私的会話を交わす」立場ということなので、それなりの高級官僚だろう。

記事は大統領が長官たちに声明を要請した事実だけでなく、官僚が同紙に情報を提供した動機まで示唆している。官僚たちは「大統領の要請が問題を調査しているFBIの信頼性を汚すと考えている」と伝えたのだ。

当時は、野党の民主党が特別検察官の設置を強く求めていた時期だった。

そのタイミングで大統領は問題を混乱させるために、長官たちに「(トランプ陣営とロシアの)共謀の証拠はない」と言わせようとした。本筋をそう伝えたうえで、記事は情報源の1人が「大統領の要請は本来、党派的問題から隔離されているべき米国のスパイ機関の独立性に対する脅威とみなしている」と書いている。

元高級官僚の言葉を記事はずばり、こう伝えた。「問題は彼らに声明を出せと要請したことではない。彼らに現在進行中の捜査について間違った声明を出せ、と求めたことなのだ」

日米交渉にも影響アリ

この発言を読むと、元官僚のふつふつとした怒りが伝わってくる。そこまで知っている「元官僚」とは、最近辞めたばかりなのだろう。「そんな大統領にはお仕えできない」というのが、辞めた理由だったかもしれない。

つまり、官僚たちは義憤にかられて大統領の行為をワシントン・ポストに内部告発したのである。これはまさにウォーターゲート事件の再来ではないか。

ニクソン大統領によるスキャンダルもみ消しをワシントン・ポストのボブ・ウッドワード記者に告発したのは当時、FBI副長官だったマーク・フェルト氏だった。それは事件から33年経って本人が自ら明らかにし、ウッドワード記者も確認している。

ウォーターゲート事件でのワシントン・ポストはけっして特ダネ連発でいつも意気揚々としていたわけではない。逆に、他紙が追いかけてこないうえに先の見通しも開けず、孤独な戦いを強いられた局面もあった。核心に迫る情報源はフェルト長官1人だった。

それに比べれば、今回はワシントン・ポストだけではない。ニューヨーク・タイムズやCNNなど大統領から敵視されてきたリベラル系メディアも相次いで内部告発に基づく特ダネを報じて、まさにスクープ合戦の様相を呈している。

各メディアの情報源はホワイトハウス関係者だけでなく、議会や情報機関関係者など複数に上っているはずだ。もともと、そうしたリベラル系メディアはトランプ政権に極めて批判的だったというバイアスもある。

そう考えると、今回のロシアゲート事件はかつてのウォーターゲート事件と比べても、より深刻ではないか。情報源が多岐にわたり、追い詰めるメディアの側も複数、かつ与党の共和党にも潜在的な敵が多いのだから。

大統領に解任されたコミー前FBI長官は当初、5月24日に下院監視・政府改革委員会の公聴会で証言する予定だったが、直前になって延期された。同氏は30日以降に米上院情報委員会で証言する予定になっている。

証言内容によっては、トランプ大統領が一気に守勢に回る展開もありうるだろう。そうなると、北朝鮮問題や日米通商交渉にも影響が出る可能性がある。ここしばらくは、トランプ政権の行方が最大の注目点だ。 現代ビジネスより

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