「日本と台湾はそのうち一つになっちゃうんじゃないか?」
最近よくそんなこと思う。日台間で行き来する観光客数は年々増え続け、台湾のどんな僻地にも普通に日本語が聞こえ、日本では大量の台湾人がかなりの細部にまで日々出没している。
地球上で一番日本に関心が高いこの台湾を、もうただの観光スポットとして見るだけでは済まないのです。例えあなたが台湾に一生行かなくても、台湾人はもうあなたの住む町までやってきています。ハッと、気づけば隣りにいる台湾人と恋に落ちる可能性もなきにしもあらず、そんな時代になのです。
photo by Yuka Aoki
台湾が、親日で近くて美味しくてお茶やマッサージや人の良さが癒しなのは、ここ数年すっかり知れ渡った事実。1895年から終戦までの50年間、台湾は日本に統治されていた。
日本語も演歌の心も理解する人が多く、私たちはうっかり丸腰で台湾に接近してしまうが、台湾には日本とはちがう強烈な個性がある。台湾人を知るには政治や歴史に加えて、その辺を理解しておかねばならない。
そのうちの一つは、目新しいものが大好きなところ。商売をする上では、流行りが作りやすくていいのだが、新しいもの好きは人間に対してもそうだから、戸惑ってしまう。
外人である私たちなんて、もう大好物。関係がフレッシュであるうちは、容赦なく絡んでくる。台湾人の集まりに呼ばれて行くと、そこで新たに知り合った台湾人が「今度ご飯を食べよう。」というから、社交辞令で軽くLINEでも交換しようものなら、その日別れた瞬間からガンガンLINEが入り、少なくとも次の週末までには本当にまた会うことになるのだ。
『好客(ハオカァ)』と言う、おもてなし好きを意味する単語は、台湾人もよく自分たちに使う形容詞。人にお金を借りてでも、お客さんにはご飯を奢りたがるし、遠路はるばるやって来た外国からのお客さんであればなおさらで、その物珍しさに興奮して、仕事もそっちのけで案内してくれる。
日本にはこれに対して『本音と建前』という言葉がある。地球上から混乱を招くと忌み嫌われている特徴だ。日本の侘び寂びまで理解する台湾人でもこれには苦戦している。
ところが来日のチャンスが到来し、日本の知人に連絡を入れると、「今忙しいけど、この週末のこの時間だけならなんとか…」とか「日本に着いたら、また連絡ください。」とかウエルカム感の薄いシラけた答え。会ってくれるだけでもまだいい方。入国した瞬間から出国するまでべったり案内したあの一時はなんだったのか。
こんな日本人の対応にしょんぼりしている台湾人は少なくない。でも、日本の社会は台湾のように自由度高く会社を休めるわけじゃないし、その辺は接待する気が本気であるなら「来ることが決まったら2、3ヵ月前には連絡くださいね。」としておくのがベター。
また、台湾人が飽きるとまるで知り合いだったことが嘘のようにパタリと連絡がこなくなる。私のように台湾に15年も住んでいると、彼らにとって全然新しくも珍しくもない存在にランクダウンし誰からもお誘いがかからなくなる。後から来たフレッシュな日本人は、お誕生日やらクリスマスに呼ばれていていいなぁとか、すざまじい格下げぶりに随分としょんぼりしてしまう。
喧嘩する気も消え失せる
こんな感じのギャップを乗り越え、さらに交流を進めると、次のステップは恋が芽生えるか、ビジネスを一緒にするか、となる。まずはビジネスの話からすると、仕事の進め方を理解することで、高血圧になることを避けられる。
日本の仕事の進め方は、目的ができたらあらゆるシミュレーションをしてやるかやらないかの判断をする。できるとなったら、そこからチームで計画を練って、最速且つ最善の方法を考えて、準備万端な状態となってから動き出す。動くまでには相当の時間を要すが、そこを超えたらサクサクと完璧に無駄なくやり遂げる。
ゴールまで真っ直ぐ平らな道を作ってから動く日本人と、道を作りながら上下左右にくにゃくにゃと進む台湾スタイル。日台合同で何かをしたら、台湾の猪突猛進型に日本はハラハラ。日本の判断の遅さに台湾はブーブーいう。でも、結果的にはかかる費用や時間面で大差はなかったりする。
photo by Yuka Aoki
以前、台湾のアート展に参加した日本のギャラリーと食事をした時にこんな話を聞いた。
日本側は早々と申し込みをし、入金も済ませていたが、什器の確認で問い合わせると、入金が確認できてないので申し込みは受理されていない、といわれた。作品はもう手配してあるのに参加ができないのかと慌てたが、すぐに台湾側の手違いであったことが判明した。
他にもやり取りの中、あやふやな主催者にかなりイライラしっぱなし。高価な大事な作品をこんな人たちに任せていいのか。些細なことでも敏感になった。
台湾入りした暁には、またなんかやらかしたら見てろよ!と、喧嘩する気満々で乗り込んだが、人がとにかくナイスなので「日本でカリカリしていた私が馬鹿だった。」と思えてきた。
台湾流の進め方はいつもとは違う景色が見えて楽しかったし、どんなに忙しくてもご飯や夜市に毎晩アテンドしてくれる『好客』ぶりに、台湾最高!という気分になってしまった。と話してくれた。
義母がガッツリしゃしゃり出る
ビジネスの関係は、嫌なら簡単に切ればいいが、恋が芽生えて、結婚にでもなったらそうはいかない。
台湾の男性は、女性をとても大事にする。デートの際の送り迎え、食事の負担、女性の小さなプリプリの手提げ鞄まで持ってくれる。初めてこれを目にしたときは、台湾には随分と特殊な趣味の男性がいるものだと思った。これは、「荷物を女性に持たせるのはかわいそう。」ということらしい。
photo by Yuka Aoki
結婚すれば、男側の両親が住む場所を何らかの形で用意してくれる。旦那は、子供の面倒もご飯も作ってくれる人も多く、女性にとってパラダイス!と思いきや、義母がガッツリしゃしゃり出る。
手を差し伸べれば、漏れなく口も出すのは世の常だ。結婚式を仕切り、ウェディングドレス選びにまで口を出し、果てはお義母さんまでドレス着てヘアメイクを一緒にして、フォトスタジオで撮影するという恐ろしい話もある。
そして、旦那の出身地が田舎になればなるほど、長男の嫁ならとにかく男を産めとプレッシャーがかかる。産んだら産んだで子育てへの猛烈な介入も間違いなし。こんなだから、女性は結婚への興味がどんどん薄まっていく。今年3月には台北の結婚率は最低記録を更新している。
台湾人との恋愛中の人には、脅しのように聞こえるが、基本、親世代はもっと親日なので、例のギャラリーの原理が起こる可能性も非常に高い。私の周りには、家庭的でマメな日本人男性が台湾人女性と結婚して台湾に住むという一番平和なケースが多い。
それと同時に日台間では航空協定が結ばれ、地方の小さな空港からも台湾へに直行便が運行し始め、不動の人気旅行先だった韓国の反日が目立ち、欧米はテロ。じゃあ、香港?と思いきや、物価が高い。さらに台湾の心地よさが際立って、台湾ブームは不動のものとなった。
2011年以降、日本からの訪台者数は3年で約3倍。台湾からの訪日者数は、同じく3年で約4倍にはね上がり、2012年には台湾に投資する件数が2倍近くになった。その後もずっと右肩上がり。もう本当に一つになってしまう、と思わずにいられない。 現代ビジネスより
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