2017年5月25日木曜日

九州の破局噴火で1億2000万人が瞬殺の危機

最近、再び「カルデラ噴火」あるいは「破局噴火」と呼ばれる事態がネット上で注目を集めているようだ。規模によっては文字通り「日本の終わり」が訪れることになる一大カタストロフィーだが、いま特に話題となっているのは、カルデラ噴火研究の第一人者である神戸大学海洋底探査センター・巽好幸(たつみ よしゆき)教授が発表した見解だ。

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イメージ画像:「Thinkstock」より

■文明が“破局”を迎えるカルデラ噴火、いつ起きてもおかしくない

過去の記事でも紹介したように、カルデラ噴火は「ウルトラプリニー式噴火」とも呼ばれ、とりわけ地球環境の一部に壊滅的被害をもたらす場合には「巨大カルデラ噴火」または「破局噴火」と呼ばれる。このような形容はまったく誇張ではなく、たとえば日本の歴史上もっとも新しい破局噴火は、約7300年前に鹿児島県南方沖の鬼界カルデラという海底火山で起きたものだったが、この時には南九州で栄えていた縄文文化が壊滅する結果となった。まさに一つの文明が“破局”を迎えるほどの巨大災害となり得るのだ。

このカルデラ噴火研究の日本における第一人者である巽教授が、Yahoo!個人ニュースで今年3月から「日本列島に暮らすということ」と題した執筆活動を続けている。そして5月11日の「最悪の場合、日本喪失を招く巨大カルデラ噴火」という見出しの記事では、巨大カルデラ噴火(破局噴火)が日本で発生する確率について言及している。現在、日本で巨大カルデラ噴火は“今後100年間に約1%”の割合で起きるとされているが、これは阪神・淡路大震災が起きる前に想定されていた発生確率と同じだ。そのため、「巨大カルデラ噴火は明日起きても何ら不思議ではない」としている。

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姶良カルデラ 画像は「Wikipedia」より引用

では、現代の日本で破局噴火が起きた場合、どの程度の被害が予想されるのだろうか。約2万9000年前に鹿児島湾を襲った姶良(あいら)カルデラ噴火を参考にすると、同規模の事態が九州中部で起きた場合、数百℃にも達する高温の火砕流が2時間以内に九州ほぼ全域を焼き尽くし、東北地方でも10cm以上の火山灰が降り積もり「1億2000万人の日常は破綻する」。さらに「何も対策を講じなければ、最悪の場合日本という国家、日本人という民族はほぼ消滅する」というのだ。

このような悲惨な事態を避けるため、これからすべきことを皆で考えなければならないと巽教授は訴える。では今、カルデラ噴火に備えてわれわれにできることは何なのだろうか。人類にとってカルデラ噴火は有史前の出来事であり、噴火前にどのような前兆現象があったかなど詳しいことはわかっていない。噴火に備えるといっても、我々にできることは限られているだろう。日本消滅という破局を回避するために、できることがあるとすれば、その一つは「原発事故」への対処だ。

■危機意識を欠いた政府

2012年、鹿児島県の川内原発再稼働差し止め訴訟が住民らによって起こされた際、争点の一つとなったのが、過去に南九州で発生したカルデラ噴火と同規模の噴火が起きた場合の原発への影響だった。火山学者の多くは、川内原発から50~100km圏内に位置し、過去に大噴火を起こした加久藤(かくとう)カルデラ・小林カルデラ、姶良カルデラ、阿多(あた)カルデラが再度噴火する可能性について警告する。

このような世論の突き上げに応じて、政府は2014年度から、初めてカルデラ噴火に対する調査を行うこととなった。しかし、だからといって巨大噴火の予知が可能になるとは考えにくい。2014年6月には、民進党(当時の民主党)の辻元清美議員が衆議院で、「カルデラ噴火の兆候把握等に関する質問主意書」と題した質問を行った。ここでは、カルデラ噴火の可能性について火山学者の多くが警告を発しているにもかかわらず、原子力規制委員会が、火山学者抜きで巨大噴火の兆候把握が可能としたことを問題視している。

これに対する安倍首相の答弁は、「異常な事象を観測した段階で、結果として噴火に至らなくとも、原子炉の停止等の措置を速やかに行うことが重要であると考えている」というものだった。しかし、前述のように太古の昔に起きたカルデラ噴火の前にどんな兆候があったかは判明しておらず、実際は噴火予知など不可能というのが火山学者の一致した意見だ。現実に破局噴火が起きれば、何をやっても遅いと思われる。結果的に、日本に原発が存在する限り、カルデラ噴火がさらなる大災害へと発展する可能性を払拭できないだろう。

2015年5月、東京大学地震研究所の中田節也教授は、カルデラ噴火の前兆を確実に捉えることができるとの見方を否定し、「とんでもない変動が一気に来た後に噴火するのか、すでに(十分なマグマが)溜まっていて小さな変動で大きな噴火になるのか、そのへんすら実はわかっていない」(ロイター、2014年5月30日)と語っている。現実問題として、巨大地震の予知以上に、現時点でカルデラ噴火の予知は極めて困難なようだ。

カルデラ噴火で1億2千万人が死ぬ

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イメージ画像:「Thinkstock」より

さて、巽教授は前述のYahoo!個人ニュースで「日本喪失を防げるか? ギャンブルの還元率から巨大カルデラ噴火を考える」と題した記事も書いているが、そこでは災害や事故の危険度を「危険値」という概念で示している。これは、ある災害や事故で1年間あたりどれほどの死者が出るかを示す値だが、台風・豪雨災害では「80人」、交通事故では「4千人」となっている。これが大地震となるとさらに値が大きくなり、首都直下地震では「2万3千人」、南海トラフ巨大地震で「33万人」、富士山大噴火では「1万4千人」となる。だが、巨大カルデラ噴火はそれらの比ではなく、なんと「1億2千万人」と、日本の人口(2017年4月時点の推計:1億2600万人)にほぼ匹敵する死者が出ると予測されているのだ。

 もはや、このように絶望的な大災害に対して、前もってできることはほとんどない。しかしそれでも、やはり一縷の望みをつなぐためには、原発の数を減らすか、あるいは全廃すべきように思えて仕方ないのだ。それが無理であるとしたら、個人レベルでできることといえば、運良く生存できたとして放射能汚染から逃れるための海外逃亡先を考えておくくらいだろうか。 トカナより

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