好調だった韓国経済に陰りが見えてきた。4月の輸出額は1年半ぶりに前年割れ。米国と3月に大筋合意した自由貿易協定(FTA)の再交渉では、韓国に不利な条件をのまされただけでなく、両国が競争的な自国通貨切り下げを禁じる「為替条項」まで決められ、事実上、韓国のウォン安誘導が封じられた。韓国企業の輸出競争力の低下が懸念される中、韓国は突然、米国を除く11カ国の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP11)への加入や金融危機時に日韓で通貨を融通し合う「通貨交換(スワップ)協定」の再開に意欲を示し始めたのだが。
韓国の中央日報日本語版(電子版)は5月1日、韓国の輸出額が18カ月ぶりに前年比でマイナスになったと報じた。同紙によると、4月の輸出額は前年同月比1.5%減。産業通商資源部は、昨年4月は大規模輸出案件があったため、その反動と説明している。
しかし、韓国の輸出主力品目である自動車やディスプレーなどの不振は続いており、韓国のマスコミは、その最大の要因を「ウォン高」と指摘。追い打ちをかけているのが、米韓FTAの見直しに合わせて合意した為替条項の導入だ。
両国政府は今後、詳細を詰めるが、報道によると、競争的な通貨切り下げの禁止▽金融政策の透明性と説明責任の約束-などが盛り込まれるという。
米国はこれまで貿易相手国の通商政策を分析し、貿易赤字が一定水準を超えるなどすれば、為替操作国と指定し、経済制裁の対象としてきた。ただ、米国が経済制裁に踏み切るには厳格な基準をクリアしなければならなかった。今回の為替条項で、韓国は対米貿易黒字の削減をより強く求められる可能性がある。
輸出比率の高い韓国はこれまでウォン安維持の介入をすることがあったが、為替条項が決まると、ウォン高局面でも介入などの対策が打ちにくくなる恐れがある。
最大の貿易相手国だった中国との関係も、在韓米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)配備以降、悪化したままだ。
さらに、韓国経済を支配してきた財閥グループの創業家に対し、国民の反感は大きくなっている。韓進(ハンジン)グループでは、中核の大韓航空の役員だった創業家姉妹によるパワハラ問題が相次ぎ発覚し、世論から「ナッツ姫」「水かけ姫」と批判された。ロッテグループでは、創業者次男の最高実力者が贈賄罪で実刑判決を受けた。サムスングループの経営トップも贈賄罪などに問われ、1、2審で有罪判決を受けて上告中。韓国の国内総生産(GDP)の約7割を占める財閥系企業が混乱すれば、韓国経済はたちまち失速してしまう。
こうした“内憂外患”に見舞われる中、韓国政府は今春、TPPに関心を示し始めた。離脱した米国を除く11カ国は3月上旬、米国抜きのTPP新協定に署名。これを受け、韓国は交渉を主導する日本政府に事務レベルで接触し始めたという。
韓国はこれまで、2国間のFTAを中心に自由貿易体制を築いてきた。TPPについては最大の貿易相手国である中国への配慮もあり、あえて加わらなかったとされる。
ところが、11カ国を合わせたGDPは米離脱で縮小したものの、世界の約13%を占める。さらに、TPPでは製品や農産物など幅広い分野で、高い水準の開放が実現する。このため、「TPPに入らないと、日本との輸出競争で不利になる」と危惧する声が韓国内で上がり、韓国政府も軌道修正を余儀なくされた。
5月9日、東京で日中韓サミットのほか、日中、日韓の首脳会談がそれぞれ開かれた。日中では通貨スワップ協定の早期再開などで合意し、両国の融和ムードが前面に打ち出される一方、日韓では経済分野の具体的成果はなく、“温度差”が浮き彫りになった。
実は韓国では日中韓サミット直前の4日、韓国銀行(中央銀行)の李柱烈(イ・ジュヨル)総裁が約3年間中断している日韓通貨スワップについて、「今後、再開のための話し合いが始まる可能性がある」と記者団に期待感を示していた。米国の利上げや米中貿易摩擦などのリスクが意識され、投資家が新興国に投じている資金を引き揚げれば、通貨ウォンの暴落や資金流出の恐れが高まるからだ。
ただ、関係者によると、日韓首脳会談では、TPPや通貨スワップ再開の話は出なかったという。慰安婦問題などがくすぶる中、「韓国側は『これらの要請を持ち出しても断られる』と察知したのかもしれない」(関係者)。
日本総合研究所の向山英彦上席主任研究員は「韓国は日本の国別輸出先で3位の貿易相手。韓国経済の安定は日本にもメリット」と通貨スワップ再開を支持するが、インターネット上では「日本側に直接のメリットはなく、慰安婦問題の日韓合意を守らない韓国との通貨スワップに応じるべきではない」と反対論が多い。TPPについても「韓国は交渉には一切加わらず、合意したとたんにタダ乗りしようとする。韓国が加入すれば、韓国企業に対する日本企業の関税上の優位性が失われてしまう」と懸念する声もある。
いずれにせよ、韓国に対し毅然(きぜん)と対応するよう求める日本国民の声はかなり多いようだ。
日韓通貨交換(スワップ)協定 外国為替市場で円やウォンが大量に売られて価格が暴落する事態に備える仕組みで、米ドルなどを互いに融通できるようにして自国通貨を買い支える。1990年代後半のアジア通貨危機を教訓に2001年に上限20億ドルで始まった。一時は最大700億ドルまで拡大したが、日韓関係の悪化を背景に縮小し、15年2月に終了。16年8月の日韓財務対話で、韓国側が再開に向けた協議の開始を持ちかけ、日本側も受け入れた。しかし韓国・釜山の日本総領事館前の慰安婦像設置の対抗措置として、日本側は17年1月、協定再開協議を中断した。
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP) アジア太平洋地域をカバーする広範な自由貿易圏の構築を目指した大型の通商協定。オバマ前米大統領が政権の遺産にするために主導し、日米を含む参加12カ国が2016年2月に協定に署名した。しかし、トランプ米大統領が17年1月に離脱を表明。残る11カ国は18年3月、米国の離脱に伴う新協定に署名した。新協定は、早ければ年内にも発効する可能性がある。産経ニュースより
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2018年5月21日月曜日
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