2018年2月23日金曜日

平昌五輪が残した宿題

最近の若者たちの表現通り、平昌(ピョンチャン)オリンピック(五輪)は一つのヒップなドラマだ。汗と忍耐で技を磨いてきたオリンピックスターはメイン競技場にはためく国旗に負けない、さまざまな感動ストーリーを私たちにもたらしている。スピードスケート李相花(イ・サンファ)と小平奈緒の抱擁はこれまで韓日首脳会談で演出されたぎこちない握手よりも深い余韻を残した。スノーボードのハーフパイプ舞台を圧倒的な技で支配した韓国系米国人のクロエ・キムの自信と流ちょうな韓国語はグローバルコリアが見せた魅力の一断面だ。皆を驚かせた女子カーリングチーム、力強かった尹誠彬(ユン・ソンビン)、女子ショートトラックチームが与えたさまざまな色の感動も、平昌五輪を地球村ドラマに導いている。

平昌五輪ドラマを見守りながら、私たちはスポーツが陳腐な外交や政治よりも感動的で、時には魔法にも似たものであることを再確認する。〔核・ミサイル威嚇を繰り返していた北朝鮮政権の金与正(キム・ヨジョン)労働党中央委第1副部長の外交攻勢もこのようなスポーツの魔法にあやかろうとする腹積もりだったのだろう。〕政治と権力現象の解釈を生業としている政治学者として、筆者はオリンピアンの感動ドラマはしばらく伏せ、競技場内外で提起される韓国政治の過去と未来の課題を考えてみたいと思う。オリンピックは外側世界に私たちの活力と文化的パワーを示す舞台でもあるが、同時に自分自身を振り返る鏡でもある。

まず、ヒップなオリンピックドラマと対照的な過去の影。どのオリンピックでもそうだったように、今回の平昌五輪も開催国の技術水準と文化水準を思う存分発揮する機会だ。競技場周辺で試験的に運営中されている水素車、開幕式にサプライズ登場した1218台のドローンと人面鳥は韓国の先端技術とストーリーテリング能力の証拠だ。だが、同時にオリンピック競技場周辺で私たちは依然として過去の亡霊たちと取っ組みあってもいる。

オリンピック競技場周辺を徘徊するこの亡霊とはまさに、行き過ぎた決定権を握った(準)官僚組織の規制権力とこれに便乗しようとする政治権力だ。ここまで言えば誰でもスケルトン競技場で繰り広げられた事件を思い出すだろう。だが、規定を破ったままスケルトン競技場の制限区域に入った与党重鎮議員の事故は古い権力の見慣れた断面に過ぎない。さらに深刻なことは、目につかない場所から静かに広がっている。         


今この瞬間にも、以前の発展国家時代にしか通用しなかったような規制権力が平昌と江陵(カンヌン)の魅力発散の機会をあちこちで奪っている。一つ例をあげよう。今、平昌と江陵一帯にいる数万人のオリンピック観光客は世界中どこででも使えるグーグルマップとウーバー(共有タクシー)を使うことはできない。彼らがウーバーとグーグルマップを持たずに江原道(カンウォンド)の隅々にある魅力の場所を訪ね歩いていくことは事実上不可能だが、グーグルマップとウーバーは韓国の官僚の手によって遮られている。官僚が幾重にも張り巡らした規定と手続きの迷路で道に迷ったウーバーは韓国に上陸することさえできずにいる。このような世界標準を冷遇したまま、世界の人々を月精寺(ウォルジョンサ)のモミ道に、江陵(カンヌン)コーヒーショップTERAROSAに案内する妙案をひねり出すことは難しい。あちこちで規制のネックになるような官僚と政治権力は、そろそろ一歩退くべき時だ。いま右往左往しているのは、ウーバーなく道をさ迷っているオリンピック観光客だけでない。

次に、平昌五輪で政治家と官僚組織が恥ずかしい旧態をさらす間、未来指向の明るい流れもしっかりと見えている。若いオリンピック代表選手や観衆が見せる新しい流れは国家主義の明確な退潮と自由な個人主義の発散だ。メダリストのインタビューで「大韓民国の代表として、国家の名誉のためにあるいは日本や中国を負かすために歯をくいしばって頑張った」という国家主義の叫びはこれ以上聞くことはない。選手たち自ら肉体的・精神的な限界を挑みながら楽しかったという話、メダルの色よりも重要なのは本人が最善を尽くしたという事実で、それに満足しているという話は、自由な個人主義世代が韓国社会の新たな主流になりつつあるという明るい証言だ。

整理して述べるなら、わずか半月前の開会式の日ですら、地球村が見ていた平昌五輪は北核脅威やテロの危険、無名の小さなスキータウンというイメージだっただろう。だが短い時間に平昌は自由で力強く若い韓国人、魅力ある自然と情報技術(IT)文化が交わったイメージに変貌した。このような劇的な反転が1本のオリンピックドラマとして終わることになるのか、あるいは韓国の民主主義と平和の新たな踏み台になるのかはまだ未知数だ。中央日報より

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