2018年2月24日土曜日

イージス・アショア導入で「統合的な防衛が可能に」

日本への配備が閣議決定された地上配備型の弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」。製造メーカーである米ロッキード・マーティンのブラッド・ヒックス担当副社長が産経新聞の取材に応じ、イージス・アショアの特徴や防衛能力について語った。また日本向けのイージス・アショアについては、既存のものより高性能なソリッド・ステート・レーダーを日本側に提案していることも明らかにした。

イージス艦とイージスアショアの能力にはどんな違いがあるのでしょう。

「まずイージス艦とイージス・アショアのいずれか、どちらか(が優れている)というより、両方が補完的な能力を持っていると考えています。脅威とは完全に予測するのは難しいものです。防衛能力としてイージス艦とイージス・アショアの両方を持っておくことによって、より深いディフェンスが可能になると思います」

《イージス・アショアは陸上施設にイージス艦の能力を設置したもの。イージス艦は敵戦闘機や攻撃機など100以上個の目標を同時に捕捉、搭載するSM2ミサイルで迎撃できる。また高性能なレーダーをいかし、SM3ミサイルを用いれば北朝鮮の弾道ミサイルも迎撃可能とされる。日本配備は23年度の予定》

それぞれの特徴は

「イージス艦は、複数の機能を持っています。例えば(敵対勢力の)潜水艦に対応する能力や、対艦ミサイルに対応する能力など、さまざまなものを持っています。BMD(弾道ミサイル防衛)の能力だけではありません」

現在、海上自衛隊でBMD能力を持つイージス艦は6隻ですが、北朝鮮の核・ミサイル危機に対応して任務(出航)期間が長期化するなど、乗組員の負担が増しています。また定期的に必要なドック入りも必要となり、その間は活動できない。その点をイージス・アショアはカバーできるとききますが。

「イージス・アショアは(陸上施設なので)常に、永続的に使えます。電力の効率や能力、冷却面でも、海上でイージス・システムを展開するよりも運用効率が高くなります。

また乗組員についても、常に海上でパトロールをしているよりも短い期間で(勤務の)ローテーションを組むことができると思います。日本の地理的な状況も考えますと柔軟性と冗長性をもって、そして深い防衛能力を持つことが出来る仕組みになると思います」

《導入費用を見ると、イージス艦は、自衛隊の「あたご型」で約1500億円。イージス・アショアは1基約800億円。船体やエンジン、主砲などがない「アショア」は長期的な保守費用や運用に関する人件費の面で優位といえる》

弾道ミサイル迎撃において、イージス艦とイージス・アショアの両方を持つことによる利点は

「まずはイージス艦を前方に展開しておいて初回、または2回目の迎撃を対応させる。そしてアショアに引き継いで、さらに必要であれば(陸上自衛隊の)パトリオット(PAC3)などで短距離の迎撃を行うことで、さらに深いレベルでの防衛が可能になると思います」

自衛隊はいま早期警戒機E-2D「アドバンスド・ホークアイ」や、ステルス戦闘機F-35「ライトニング2」を導入しはじめました。イージス艦やイージス・アショアとの連携によって防衛能力が向上する可能性に注目が集まっています。

「イージスアショアについて日本で私どもが推奨している構成(形態)は、米海軍の構成と互換性のあるものになっていますので、海上自衛隊の「あたご」クラスのイージス艦ともうまく連動できるようなものになっています。ただ、実際にどのような構成にするかは今後、米ミサイル防衛局(MDA、国防総省の内局)や(日本の)防衛省と協議が必要になってくると思います」

「またイージスアショアと海上(のイージス艦)が補完しあうことで迎撃可能範囲がさらに広くなるということは確かです。そしてE-2DやF-35の能力もさらに高まり、より深いレベルでの防衛が可能になると考えます」

ポーランドに配備されているイージス・アショアにはレーダーとしてSPY-1が導入されていますが、日本ではSPY-6などの最新型レーダーを導入する可能性も取りざたされています。

《SPY-6は米レイセオン社が開発中》

「(SPY-1を中心とした構成とは)別の形態が検討されているという点はおっしゃる通りでして、防衛省でも様々な検討をされていると思います。どのような形態にするかは日本政府、防衛省における判断になるかと思います」

「ただ私どもとしては(ロッキード・マーティン社が開発中の)ソリッドステートレーダー(SSR)のご提案はしています。ミサイル防衛については(現行のイージス艦が搭載する)SPY-1D(V)もあります。またSPY-6はフライト3のイージス艦向けのものですが、2024年の(完成)予定になっております。ただ、プロセスについては(日本の)防衛省が検討するものであって、私どもとしてはMDAを通じてデータを提供しているという立場になります」

《SSRは米国の弾道ミサイル迎撃システム「長距離識別レーダー」(LRDR)にも用いられており、現行のイージス・システムより長距離で目標を発見できる。また弾道ミサイルの飛翔軌道をより正確に分析でき、本物の弾頭とデコイ(おとり)装置を識別できるなど高性能化されている。LM社では既にイージス・アショアとSSRをデータ的に連結する実験を行い、性能を確認している》

導入に要する時間は

「さまざまな選択肢を提案していますが、目標としては(日本側から)2023年というのが出されていますので、それに間に合わせるべく、私どもも防衛省やMDAなどと話をし、情報提供をしながら、非常に厳しいスケジュールではありますが、達成できるものだと自信を持っております。ただ、すでに米国の方で(部品の)在庫もあります」

日本の導入において重視している点は

「私どもがMDAや防衛省との話のなかでも重要なポイントしてあげているのは、すでに日本が投資をした部分について、リスクやコストを抑えた形でこれまでの投資を活用できるような方法をとって頂きたいと考えています。すでに日本政府が投資をした部分については、やはり十分にメリットを得ながらイージスアショアの可能性も最大限にいかせるような対応が必要かと思います」

《海上自衛隊や航空自衛隊が既に運用しているイージス艦やF-15、さらに導入が始まったステルス戦闘機F-35などの情報通信システムと連携できる能力をイージス・アショアに持たせることで、こうした既存の装備に新たな能力を付与することが可能となる》

「また日本における脅威が現実のものになっているということは、我々も非常に感じておりますので、やはりなるべくリスクを最低限にできるよう注意を払い迅速に日本政府と協力をしながら(イージス・アショアによる防衛)能力を提供していきたいと思います」

弾道ミサイル防衛(BMD)以外の部分、例えばイージス・アショアの導入で超音速巡航ミサイルの迎撃なども可能になるとされています。日本はF-35Aの導入を開始し、米海兵隊は既に岩国にF-35Bを展開している。また日本政府は長距離ミサイルを導入しようとしています。これで日本の防衛能力はどう向上するのか

「その点についてはやはり、日本政府がどういったことを考えていらっしゃるのかというところになると思います。イージスアショアについては現行の形態ですと様々な防御用のミサイル、例えばSM3ブロック2Aミサイルや(巡航ミサイル迎撃用の)SM-6といったミサイルも発射できるようになります。そのあたりは日本の防衛省などがどのように考えているか、そしてそのランチャー(発射装置)にどういったミサイルを搭載する予定なのかというところで変わってくるかと思います。ただ日本が既にもっているF-35や航空機、またイージスアショアなどを持つことによって、統合的な防衛が可能になるということは間違いないと思います」産経ニュースより

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