諮問機関の国際記念物遺跡会議(イコモス)から勧告を受けたのは、沖ノ島(宗像大社沖津宮)と、その周辺の岩礁など計4件。遺跡や出土品が多数残る沖ノ島を朝鮮半島やアジア大陸との交流に伴う「古代祭祀(さいし)の記録を保存する類いまれな収蔵庫」とし、考古学的な価値を高く評価した。岩礁も一体のものと認定した。
一方、宗像大社辺津宮(福岡県宗像市)や、祭祀を担う豪族が築いた新原・奴山古墳群(同県福津市)など4件は、世界遺産登録の要件を満たさないとした。その理由として、信仰・伝統を「日本の国家的価値」にとどまると指摘した。
政府が資産全体の価値として訴えてきた宗像大社への「信仰と伝統」への評価は低く、世界遺産にふさわしい普遍的価値を見いだしていないと判断したとみられる。その上で、「『神宿る島』沖ノ島」への名称変更を求めた。
松野博一文科相は6日、今回の勧告を「厳しい評価。我が国として完全に納得できる内容ではない」とコメントした。
過去、2013年に富士山(山梨、静岡両県)が登録された際、構成資産の三保松原(静岡市)の除外を勧告された。政府などが正式な審査に当たるユネスコ世界遺産委員会の委員に対し、「文化遺産としての富士山に欠かせない一体の存在」などと説明。その結果、三保松原も含めて全てが登録を果たした。「信仰の対象と芸術の源泉」という普遍的な価値は、日本側もイコモスも認めていた。
しかし、今回の勧告では、4資産の「信仰・伝統」という価値自体が、真っ向から否定されており、富士山のケースとは異なるという。
6日未明に記者会見した文化庁の担当者は、今回の勧告が考古学的価値のみを評価しており、信仰を前面に押し出した日本側の主張と乖離(かいり)があると認めた。その上で、世界遺産委で全体の登録を実現するのは「(富士山の時と比べて)難しいのは間違いない」との見方を示した。別の担当者も「勧告内容を分析し、どんな反論ができるか検討したい」と語った。
国内の文化遺産は現在、原爆ドーム(広島県)や国立西洋美術館(東京都)など16件。自然遺産は小笠原諸島(東京都)など4件ある。政府は18年、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎、熊本両県)の文化遺産登録を目指している。
▼沖ノ島 九州本土から約60キロ離れた玄界灘に浮かぶ孤島。4~9世紀に航海の安全を願う国家的な祭祀(さいし)が営まれていた。指輪や鏡など大陸との交流を示す奉納品が出土し、約8万点が国宝に指定されている。宝物の多さから「海の正倉院」とも呼ばれる。島全体が神体とされ、一般の立ち入りを厳しく制限している。 日経新聞より
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