2017年5月10日水曜日

文政権に根付く北朝鮮“包容”策 正男氏殺害も「非難すべきでない」

韓国大統領選で当選した左派系最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前代表が10日、第19代大統領に就任した。約10年ぶりの左派政権を率いる文氏を示すキーワードのひとつが「親北」だ。「当選したら北韓(北朝鮮)にまず行く」と発言、直接対話に意欲を見せるが、文氏が政権中枢にいた約10年前の北朝鮮と現在の北朝鮮は、核の力を背景に「完全に違う国になった」(韓国メディア)と指摘されている。文政権が日米との協調でなく、独断的な南北融和に向かうことに危惧が持たれている。

■正男氏殺害にも不干渉

文氏と北朝鮮の近さを示すエピソードのひとつに2007年の国連の対北人権非難決議案採決をめぐる“おうかがい”疑惑がある。盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領(当時)の秘書室長を務めていた文氏が、採決前に韓国は賛成票を投じるべきか、棄権とすべきか北の意向を聞くよう指示していたというものだ。

結果的に韓国は棄権を選択。決議案を主導してきた日米欧から韓国へ不信の声があがったのは言うまでもない。

中央日報(日本語電子版)はこの一件を念頭に、北朝鮮がもはや経済協力などと引き換えに核を放棄するような国ではなくなったとし、「2017年の北朝鮮は2007年の北朝鮮と質的に完全に違う新しい国になった」と指摘。

「ニューヨーク攻撃用核ミサイルの完成に向けた金正恩委員長の疾走を米国の体制保証や韓国の経済協力約束で防ぐのは難しいだろう」との認識を示し、文氏側に現実を直視し、時代にあった対北政策をとるよう求めた。

しかし、文氏らの北包容政策は10年前と基本的に変わっていないようだ。

金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(キム・ジョンナム)氏がマレーシアのクアランプール国際空港で殺害された事件について、文氏の対北政策のブレーンの一人、丁世鉉(チョン・セヒョン)元統一相は、「兄弟間の政治権力争いであり、われわれが非難すべきことではない。安保問題に結びつけてはいけない」と発言した。

いわゆる“内政不干渉”だが、金委員長にとって「潜在的脅威だった兄」(李相哲・龍谷大学教授)をVXガスを用い、他国の女性を利用してまで殺害するという行為は、第三国を巻き込んだ国際的な犯罪だ。兄弟間の権力争いでは済まされない事案だ。

中央日報は、「『内部問題不干渉論』は金正日時代に通用したパラダイムだ」と断じ、記事の冒頭でこんな疑問を投げかけている。

「今年末に国連にまた提出される対北朝鮮人権決議案にどんな態度をとるのか」

もし、また棄権となった場合、日本は言うまでもなく、欧米諸国が韓国に一定の距離を置くのは必至だ。

■北は大統領選に口先介入

さて、一方の北朝鮮はどうか、といえば、朝鮮労働党機関紙「労働新聞」などを使って、韓国大統領選への介入を繰り返した。

9日の同紙は、「南朝鮮の人民は朴槿恵逆徒を懲罰したその気勢で、今回の『大統領選挙』で逆徒の反逆者であり歴史の反動である傀儡(かいらい)保守一味を必ず審判し、自分たちの恨みを晴らしてみせなければならない」と主張、事実上、文陣営にエールを送った。

選挙期間中も「傀儡保守の輩(やから)たちが再び政権を取ることを絶対に認めてはならない」と扇動に熱心だった。

条件付きながら、南北経済協力事業の「開城工業団地」の再開を訴えるなど、文氏の融和姿勢は北の核・ミサイル開発を利する結果になりかねない。

9日深夜の勝利宣言で「常識が常識として通じる国らしい国を必ず造る」と約束した文氏だが、その常識にはぜひ、国際社会の見解や感覚も含んでほしいものだ。 産経WESTより

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