2017年11月28日火曜日

ハート出版、「朝鮮出身の帳場人が見た慰安婦の真実」

いわゆる「慰安婦問題」がいっこうに収まらない。朝日新聞が慰安婦虚偽報道を撤回、謝罪し、日韓両政府が慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決で合意しても、この問題は沈静化に向かわなかった。

11月22日、サンフランシスコ市は「日本軍の性奴隷にされた数十万人の女性や少女のほとんどが囚われの身のまま亡くなった」と書かれた碑文と慰安婦像の公共物化を行い、それに対して大阪市の吉村洋文市長は23日、サンフランシスコ市との姉妹都市解消を表明した。

翌24日、韓国国会が、毎年8月14日を元慰安婦をたたえる「慰安婦の日」に制定する法案を可決。韓国は7日にも、トランプ米大統領を招いて開かれた晩餐会に元慰安婦を招待している。

そんな状況下で、画期的な書籍が出版された。

崔 吉城(チェ キルソン)著「朝鮮出身の帳場人が見た 慰安婦の真実」である。

崔氏は韓国京畿道楊州市出身で、子供の頃、朝鮮戦争を体験している。それも特異な体験である。崔氏の村の人たちは、国連軍は平和軍であり、共産軍から自分たちを守ってくれる天使のような軍だと思っており、大歓迎して迎えた。ところが、その国連軍の兵士たちは村の女性たちを襲い始めた。その性暴行は凄惨を極め、男子児童にまで被害が及んでいる。結局、崔氏の村に慰安所ができ、それによって村の一般女性に対する性暴行は沈静化したと言う。

そういう背景のある崔氏は、文化人類学者として、戦争とセックスの関係や、性と政治が深く関わる韓国社会を研究対象としている(ソウル大学を卒業した崔氏は、現在、広島大学名誉教授であり、東亜大学教授、同大学東アジア文化研究所所長を務めている)。

今回の著書で崔教授が研究の対象にしているのは、戦時中、日本軍占領地(ビルマ、シンガポール)で慰安所の帳場人をしていた朝鮮人、朴氏が残した日記である。この日記は、『日本軍慰安所管理人の日記』というタイトルですでに韓国で出版され、日本軍による朝鮮人女性強制連行の決定的資料だとされている。

崔教授は戦後のバイアスのかかっていない日記原本に直接あたり、朴氏の足跡を尋ねて現地調査も行っている。崔教授のスタンスは明確だ。日韓の政治的な立場から意識して離れ、あくまで学術的に、日記から客観的な情報を、可能な限り引き出そうというものである。引き出された情報は慰安婦に関するものにとどまらない。崔教授は「日本植民地時代の朝鮮人の生活史を知る上で貴重なもの」とも述べている。

この日記を精読した崔教授によれば、「そうした慰安婦の連行などに関する記述は一切ない。だが、それはその期間の日記が残っていないからだと言う人もおり、それを他の資料で補充しようとする人もいる。だからこそ私は、この日記を忠実に読もうとした。それでもなお、この日記には、そうした『強制連行』に繋がるような言葉すらない」ということであった。


さらに、崔教授は「この日記をもって『慰安婦問題を決着する!』と反日的に解釈する人は多く、この日記がそのように利用されることは、まさに矛盾しており、滑稽なことでもある。つまり、親日をもって反日としているからである」と、この日記を強制連行の証拠と主張する人たちを批判している。

本書では「朝鮮人たちは当時、中国や東南アジアなどの日本軍占領地や前線地域で、食堂や慰安所などの商売を営んでいた。当地において朝鮮人は、ビルマ、シンガポール、インドネシアの東ティモールやスマトラ、マレーシア、タイ、ボルネオなどに広くネットワークを持っており、慰安業以外にも食堂、料理屋、餅屋、製菓所、豆腐屋、製油工場、写真館などを経営していた」という点も指摘されている。日本軍占領地で慰安所を含む経済活動に、多くの朝鮮人が事業主として重要な役割を担っていたのである。


そして、この日記を書いた朴氏は、遠く離れた異国の地から、東方宮城に向かって遥拝し、皇軍の武運長久、戦没将兵の冥福を祈る、典型的な大日本帝国臣民であった。崔教授は「日記全体の文脈からは、彼が日本の帝国主義に不満を持ち、母国の独立を願う気持ちを持っていたとは、とうてい思えない」と述べている。戦後の日本人が教えられてきた「日本に虐げられた朝鮮人」の姿は、この日記には見られない。

崔教授は慰安婦問題の政治的側面についても言及している。なぜ韓国が慰安婦、性の問題を日韓関係の政治的なカードにしているのか。それは、慰安婦問題で反日感情を煽ると、国民意識を統合させ、外交の効果を高められる、と考えているからだ。それによって、元慰安婦に誠実な謝罪が必要だと主張する人権主義者たちやフェミニストたちとも連携しやすくなる。

しかし、崔教授はそんな韓国に対して、次のようにはっきり苦言を呈している。

「性的被害をもって問題とすることは、どの国、どの民族でも可能だ。それは、性が人間にとって普遍的なものであり、人間の生存にかかわる問題であり、恥と人権にかかわることだからである。韓国が、セックスや貞操への倫理から相手を非難することは、韓国自身のことを語ることに繋がっている。つまり、それを詳しく論じることは、いつか必ず本人に戻るブーメランのようなものなのである。ただちに中止すべきである」

本書は、極めて客観的な姿勢が貫かれており、「慰安婦問題」まで生み出した戦後歴史観のバイアスの大きさを、日本人に気づかせてくれるものと言えよう。財経新聞より

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