2017年11月29日水曜日

日本会議会長の提言「安倍首相は核武装の議論も始めるべき」

安倍政権はより磐石になった。だが、約5年の政権運営で積み残した課題があるのも事実だ。今度こそ、それを果たさねばならない。保守の重鎮・田久保忠衛氏(杏林大学名誉教授・日本会議会長)が、安倍晋三首相に真の保守政治家としての奮起を期待し叱咤激励する。

北朝鮮が核実験、ミサイル発射を繰り返すたびに安倍首相は「圧力の強化」を訴えてきたが、それで解決できるのか。結論から言えば、北朝鮮の脅威に対して日本が取るべき対策は、防衛力強化の一点に尽きる。

大いに参考となるのが、1970年代後半にソ連のブレジネフ書記長が欧州を射程におさめる、核搭載の中距離弾道ミサイル「SS20」を配備した時のことだ。

西ドイツのヘルムート・シュミット首相は米カーター大統領に相談するが、大統領は「長い槍」、すなわち長距離弾道ミサイルが米本土からソ連に狙いを定めているから大丈夫だと主張した。北朝鮮の脅威を前に、「核の傘」があるから安心しろと言うのとよく似ている。

だが、その抑止力に疑問を抱いたシュミット首相は、考え抜いた末にひとつの結論に達した。それは対抗措置として米国の核を搭載した中距離弾道ミサイルや巡航ミサイルを国内に多数配備し、戦力を均衡させたうえでモスクワに乗り込み、中距離核全廃の話し合いに入るというものだった。

1977年10月、ロンドンの国際戦略研究所(IISS)での演説で彼はこの戦略を披瀝して、関係各国に深い感動を与え、その後NATOの政策として採用され実施された。結果、ソ連側が核軍縮を持ち出し、SS全廃が実現したのだ。

安倍首相がまず言及すべきは、敵地攻撃能力の保有だ。自民党の検討チームは今年3月に「直ちに検討開始を」と提言し、8月には小野寺五典防衛相や岸田文雄政調会長も前向きな検討を口にした。だが、肝心の安倍首相は「具体的な検討を行う予定はない」と口を濁している。一国のリーダーこそ、率先してこの議論を俎上に載せるべきである。

さらに言えば、核武装の議論も始めるべきだ。

日本人の“核アレルギー”は強く、2006年に当時自民党の政調会長だった中川昭一氏が「(日本に)核があることで攻められる可能性が低い、あるいはない。やればやり返すという論理は当然あり得る」と述べただけで、野党ばかりか自民党内からも激しい非難を受けた。

当時は米政府も日本の核武装には否定的で、ワシントンからライス国務長官が急遽訪日し、日米同盟は核やミサイルの挑戦に耐えられると確約したほどである。

だが、最近の北朝鮮の暴走が続く中、米国メディアには「日本が核武装に向かっている」と言い切る論調や社説が多くなってきた。バード大学教授でハドソン研究所研究員のウォルター・ラッセル・ミード氏は9月5日付ワシントンポスト紙で、日本の核武装論をめぐる米国政府内の見解は分かれていると指摘した。

ホワイトハウスのトップ補佐官たちは現状維持が国益に合致すると見ているが、トランプ大統領やその周辺は、日本と韓国に核武装させ、軍事力を強化させるべきだと考えているようだ。中国包囲の安全保障のコストを同盟国に負担させれば、在韓米軍を引き上げて軍事費を削減できるからである。

韓国は1991年に米国の戦術核を撤去させたが、昨年10月には再配備を米国に要請していたことが今年9月に明らかになった。最近の世論調査では、68%が再配備に賛成し(韓国社会世論研究所)、60%が独自に核武装すべきだと回答している(韓国ギャラップ)。

日本も敵地攻撃能力はもちろん、核武装についても堂々と議論すべき局面を迎えている。

議論すらタブー視されるのは異常である。シュミット首相は核配備の提案に際して反戦団体からの批判を恐れなかった。安倍首相には“日本のシュミット”たれと申し上げたい。
夕刊フジより

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