2017年11月30日木曜日

日本の人手不足を高失業率・就職難の韓国の若者で補う経団連の仰天プランに潜む“落とし穴”

経団連が来春、韓国・ソウルで、現地の大学生を対象にした日本企業の就職セミナーを開くことになった。就職率が97%に達し、複数の企業から内定をもらう学生が当たり前の「超売り手市場」という日本の人手不足対策の側面もある。

だが、実際には、韓国の若年層の高い失業問題を韓国経済界が“解決”できず、経団連に泣きついてきたのが実情のようだ。うまくいくのだろうか。

「日本は人手不足となっている。この雇用の問題で協力できないか」

このほど、東京で開かれた経団連と韓国の経済団体「全国経済人連合会(全経連)」との会合。全経連の許昌秀(ホ・チェンス)会長はこう呼びかけた。

許氏は、経団連の榊原定征会長ら日本の大企業のトップに対し、「日韓の協力をより進化させ、ウイン・ウインの関係を作っていきたい」とあいさつ。同時に強調したのが、韓国経済の先行き不透明感で、その象徴として示したのが、「韓国では若者の失業問題が深刻になっている」ことだった。

つまり、日本企業に韓国の若者の雇用を引き受けてほしいと求めたのだ。

これに対し、日本側からは、日本企業が実施するインターンシップなどに、韓国の大学生が参加している事例も示された。

日本企業が韓国の大学生を採用することで、日本の人手不足解消につながり、韓国の就職難の解決が進むとして、日本企業が韓国の大学生を採用する就職セミナーのアイデアに進んでいった。来春には、ソウルで、日本企業による韓国の大学生を対象にした就職説明会が開かれる予定だ。

日本企業に就職して、日本で働くケースだけでなく、現時点では中途採用が大半となっている日本企業の韓国支社や韓国法人などで、韓国人の新卒採用を増やす考えだ。また、中には総合商社などで、韓国子会社が新卒学生を雇用し、日韓とは別の第三国の駐在員にする案も出ている。

大半とみられる日本で働くケースでは、日本語が大きな障壁になる可能性も高いが、これを問題視しない成功事例も出ている。

日本のある大手人材派遣会社では、企業の情報システムの構築や保守、メンテナンスなどを丸ごと請け負うアウトソーシング(外部委託)事業で、韓国人エンジニアを大量に活用している。

もともと、韓国ではインターネット環境が日本よりも整備されていることからITリテラシーは高いし、英語力も高い。顧客との交渉は、日本人のグループリーダーや日本語を理解できる韓国人エンジニアが担当し、その後の韓国人エンジニアへの指示などは英語を活用していくことで、問題は起きず、欧米スタイルでの仕事が取り組めると評価されている。

日本でも、IT分野やネット関連での新サービス構築などでの人手不足が深刻化しているだけに、こうしたスタイルを意識して、IT企業などが経団連主催のソウル就活セミナーに参加しそうだ。

ただ、ある日本の経営者は、韓国財界の「メンタリティー(心のあり方)」を疑問視する。

韓国の財界人として自国の経済成長や発展を意識すべきなのに、人材の流出をいとも簡単に認めようとするからだ。「自国で新たな産業やイノベーションを起こすことをあきらめているようにみえる」との指摘もある。

韓国の就職状況は昔から問題になっていた。サムスン、LG、現代、SKの4大財閥グループの資産規模は、韓国の国内総生産(GDP)の約6割を占めるとされる、その分、韓国経済の財閥への依存度は非常に高く、有力な中堅・中小企業が十分育っていないことの裏返しでもある。その上、4大財閥グループに就職できるのは一握りに過ぎない。

それに加え、在韓米軍の「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備をめぐって、韓国企業に対する中国の経済報復が長期化。韓国経済は急減速し、業績悪化を余儀なくされた大企業は、大学生・大学院生の新卒者(新卒予定者)の採用を減らしている。今後3年間は、多くの学生にとって、「大学卒業=ニート」という過去最悪の「就職氷河期」になると予想されている。今年10月の韓国の失業率は3.4%だが、15~29歳の若年層に限ると9.2%に跳ね上がり、間もなく10%を超えるとの見方もある。

若年層失業率の高さは、社会不安に直結するため対策は急を要する。本来であれば、政府や経済界が連携して対策を進めなくてはならないが、世論を気にして財閥に厳しい態度を示す文在寅(ムン・ジェイン)政権と韓国経済界の関係はうまくいっておらず、連携は事実上無理だ。

この韓国の政権と経済界の“隙間”が、ソウルで日本企業の就職セミナーが開かれる大きな背景だ。ただ、韓国で職がないからといって、韓国人学生は日本企業に就職したいと思うだろうか。日本で最先端技術を習得して、将来的に韓国企業に転職されてしまうと、結果的に日本からの知や技術の流出=“産業スパイ”を育ててしまいかねない。日本企業は、この“落とし穴”にはまってはならない。経団連には再考も含めて慎重な対応が求められる。産経ニュースより

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