画像は「Science」より引用
■バイオ3Dプリンタとは
模型やフィギュアといった小物から拳銃のような武器まで、設計図さえあればさまざまなものを手軽に作ることができる3Dプリンタ。最近では3Dプリンタ出力サービスも増え、安価な家庭用プリンタまで販売されている。その応用範囲は幅広く、宇宙開発はもちろん医療分野でも注目されている。
3Dプリンタはインクの代わりにプラスチックや金属などの材料を噴射して立体物を造形する仕組みとなっている。今回の実験では、動物の卵巣に存在するコラーゲン由来のゼラチンを材料として噴射する「バイオ3Dプリンタ」が使用された。
人工卵巣 画像は「The Guardian」より引用
米・ノースウェスタン大学の研究チームは、このバイオ3Dプリンタを使い、ガラススライド上に人工卵巣を印刷した。人工卵巣は15mm×15mmと非常に小さなもので、3Dプリントされた基本的な構造の中に、マウスの卵巣から採取した卵胞が組み込まれている。この人工卵巣を、卵巣を除去したメスのマウスに移植したところ、オスと交尾して出産した。人工卵巣には血管が通り、産出されたホルモンも正常に作用しており、出産したメスは授乳さえできたという。
■いずれは人間にも応用
研究チームはこの成果がいずれは人間にも応用できるとしている。しかし、人間の卵巣はマウスのものよりはるかに巨大で、血管の位置を含めた特別な設計が必要だという。卵巣に限らず、臓器は細胞と血管が入り混じった複雑な構造をしているため、3Dプリンタによる作成が非常に難しい。この問題が解決されれば、人工卵巣のみならず、多くの臓器や組織を3Dプリンタで作成することが可能になるとされている。
光っているのが人工卵巣由来の子マウス。画像は「Narure Communications」より引用
以前よりトカナでもお伝えしているが、3Dプリンタは頭蓋骨や顔などの治療においてすでに大きな成果を上げている。だが、その応用分野が生殖医療にも及ぶというのは驚きではないだろうか。ガンなどの病気の治療の過程では、生殖機能を損なってしまう人々も多い。今回の研究はそのような人々にとっての福音となりうるだろう。
3Dプリンタと再生医療を組み合わせることで、いずれはさまざまな臓器を作ることができるようになるだろう。そうなれば、プラモデルのように臓器や人体パーツを組み合わせ、理想の体を作ることができるかもしれない。あるいはアンドロイドに人工の卵巣と子宮を組み込み、子どもを産んでもらえる時代が訪れるかも? そんなSFのような未来は、案外遠くないかもしれない。トカナより
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