「日本は核武装について考えるべきでは」。ソ連崩壊や米大統領選のトランプ氏勝利などを「予言」したことで世界的に著名なフランスの歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏が、5月に東京都内で開かれた保守系シンクタンク「国家基本問題研究所」(櫻井よしこ理事長)の創立10周年記念シンポジウムに登壇し、転換期を迎えた世界の今後や日本が取るべき道について提言した。
日本は安定、欧州は
トッド氏は1951年生まれ。パリ政治学院を卒業後、英ケンブリッジ大で博士号を取得。76年に発表した最初の著作「最後の転落」が、人口統計学的な手法で近未来のソ連崩壊を予測して話題に。以後、人口動態や家族構造に着目した独自の視点でアラブの春や英EU離脱などを見通すなど、「現代世界最高の知性」としてその発言は国際的に注目を集めている。
今回のシンポジウムでは、「世界の近未来を予測する~日本は生き残れるのか?」を演題に掲げ、基調講演を行った。
「日本の基本的な問題は人口減少です。経済的、政治的、社会的な面では日本は非常に安定している。ヨーロッパから来ると、それは一目瞭然です。日本には常に一定の安定性と活力があります」
「一方で、ヨーロッパはほとんどマヒ状態に陥っている。ヨーロッパの主要な大国はドイツですが、矛盾にとらわれている。巨額の貿易黒字を上げる輸出大国であり続けたいのに人口減少に直面しているのです。ドイツの対応は日本とは全く異なり、大量の移民を常に受け入れ続けている。その結果、国内のバランス、安定性が崩れています」
中国は「もろい大国」
「中国はどうか。米国と戦略的に対立しており、巨大な人口を抱え、経済成長率が高い。
しかし私は、非常にもろい大国だと思っています。出生率が急落し、急速に高齢化が進み、そして出生性比の問題がある。生まれる女児100人に対し、通常の国では男児105~106人になるのですが、中国では118人。女児の選別的中絶が行われています。これは長期的には人口的不均衡を生み出すし、何より中国のメンタリティーが古いということを意味しています」
「さらに先進国と比べて高等教育進学率が低い。中国はたしかに経済的・軍事的な大国ですが、新しい現代的な世界ではない」
核拡散を促す米国
また、話は現在の外交問題にも及んだ。
「米国は奇妙な行動を取っています。イランという核兵器を諦めた国との合意は離脱して、北朝鮮という核保有国とは交渉するのです。北朝鮮が非核化を進めるというのはばかげた夢となった。米国と問題を抱えている国々も、核を手放す方が危険だという教訓を得たことでしょう。米国は今、核拡散を促すような行動をしているのです」
「日本について、2点を指摘したい。ロシアとの協調はすばらしい(安全保障上の)補完になります。日露戦争、また1945年の対日侵攻のことは知っています。しかし合理的な外交とは、過去の対立を乗り越えることです。独仏間でできたことは、日露もできると思っています」
「米国の非合理的で突発的な行動は旧世界に混乱をまき散らしてます。日本にとって米国との同盟は、オバマの時代なら容易な選択でした。しかしあまり合理的でない同盟国に頼るのは、もはや合理的な選択とはいえません。核武装が本質的な問題になってきていると思います」
「フランス人にとって核兵器とは戦争の反対で、戦争を不可能にするものです。核兵器はただ自国のためだけに使うものです。ドイツを守るためにフランスが核を使うことがないように、米国の核の傘なんて私はジョークだと思っています」
「私はフランス人の左派かつ平和主義者で、戦争は嫌いです。しかし私が日本の核武装について考えてほしいと提言するのは、別に強国になれということではなく、(国家間の)力の問題から解放されるからです」
本当に中国が脅威なら
その後に行われたシンポジウムには、国家基本問題研究所の櫻井理事長と田久保忠衛副理事長が登壇。ロシアの信頼性や、中国の脅威度の評価について疑問を向けられたトッド氏は、こう答えた。
「日本にとって、米国よりロシアが大切になると言っているわけではありません。ただ、本当に危機が重篤な場合、価値観の相違など忘れなければならない。第二次大戦で筋金入りの反共主義者だったチャーチル英首相は、独ソ戦が始まるとロシアと組んだ。本当に中国を脅威に思っているのなら、それをやらなければなりません」
「何年か前、日本の首相の靖国神社参拝をめぐる議論が起きたとき、私はこう思いました。日本人、あるいは日本の首相はもうあの神社について語ることも参拝することもやめて、現実の軍事力を整備すればいいのに、と」
「私が大嫌いなのは戦争です。なぜ戦争になるのか。勢力均衡が破綻したときです。そうした場合、再武装をしないことが戦争の近道になる。私は核兵器を持つのがいいと思いますが、隣に拡大する勢力があるのなら、再武装するしかないのです」産経ニュースより
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2018年6月27日水曜日
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