2018年6月30日土曜日

ドイツ銀問題は危機の予兆か、大株主の中国企業に資金懸念

ドイツ銀行の株が信用不安から下落が続いている。大株主の中国企業も経営悪化で保有比率を減らし、さらなる処分売りも警戒されているというが、欧州経済に悪影響を与えたり、2008年のリーマン・ショックのような事態に波及する恐れはないのだろうか。

筆者が社会人になったのは1980年である。それ以降、世界金融における大きな事件を書き並べてみると、87年10月に米ブラックマンデー、94年12月にメキシコ通貨危機、97年7月にはアジア通貨危機、2001年9月には米同時多発テロとITバブル崩壊、そして08年9月にリーマン・ショックがあった。

大ざっぱにいえば、5~10年くらいの間に世界のどこかで大きな金融危機が起こっている。リーマン・ショックから10年がたつので、筆者の直感ではそろそろ警戒ムードに入っている。

その意味でも注目なのが、ドイツ銀行の行く末だ。ドイツ銀行は、いうまでもなくドイツ最大の民間金融機関であるが、2年前にも経営危機が騒がれていた。その当時は、過去の不正取引に関わる制裁金や和解金などの費用がかさむという短期的な問題に焦点が当たっていたが、一方で投資銀行ビジネスで苦戦しているという長期的・構造的な問題もあった。

欧州連合(EU)・ユーロのシステムは、ドイツ経済に大きな恩恵を与えてきた。ドイツの産業はEU域内の大きな市場を獲得した。しかも、単一通貨のために、経済力の強いドイツは他のユーロ圏諸国よりも、実質的に割安な為替を手に入れたことで、相対的に高い他のユーロ圏諸国と比べてますます有利になった。その結果、ドイツ産業は欧州において「独り勝ち」になっている。

ドイツ銀行は、EUでのビジネス拡大をもくろんで、グローバル化と投資銀行業務拡大に乗り出した。ところがドイツ国内では民間商業銀行、公営貯蓄銀行、信用協同組合の3層ですみ分けるという複雑な金融制度を背景にした過当競争で収益が十分に稼げず、ドイツ国外でも投資銀行業務がうまくいかなかった。要するに、EU・ユーロは、ドイツ産業にはよかったが、ドイツ銀行には必ずしも適切ではなかったというわけだ。

ドイツ銀行の大株主になっているのは、中国のコングロマリット海航集団だ。ドイツ銀行の経営危機に乗じて、株式の購入を進めてきた。海航集団の背後にいるとされてきたのが、王岐山・中国副主席である。

昨年10月の共産党大会で留任しなかったが、今年3月の全国人民代表大会で副主席となり、いまだに習近平主席への影響力を持っている。ところが、その海航集団が資金繰りが危ういと噂され、ドイツ銀行株を維持できないようだ。

リーマン・ショック以降、世界各地が中国からの資金でなんとかしのいできた形だが、当の中国企業が経営危機に陥ると、逆バネになって、経済危機に陥る恐れは小さいながらある。夕刊フジより

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