2018年6月27日水曜日

中国の経済専門家、「バブルの崩壊はすでに始まっている」

米中貿易摩擦の激化、中国の株安、人民元の対ドルでの下落、5月経済統計の不振。中国経済の先行き不透明感が強まるなか、中国人民銀行は24日、市中銀行の預金準備率を0.5%引き下げると発表した。今年3回目の預金準備率引き下げとなった。中国国内の経済専門家は、ミンスキー・モーメントがすでに到来したとの認識を示した。

引き下げの対象となったのは大手国有銀行、株式制商業銀行、都市や農村の商業銀行、外資銀行など。7月5日から実施する。大手銀行の預金準備率が15.5%、中小銀行が13.5%になる。これによって、約7000億元(約11兆6900億円)の資金が市場に供給されることになる。当局は、企業の債務株式化や中小企業への融資拡大が目的とした。実質上の景気テコ入れ策だとみられる。

中国当局の狙いと裏腹に、中国経済に対する国内企業や投資家の不安が続いている。株価相場の低迷に続き、人民元も対ドルで下落している。26日上海外国為替市場で、対ドルの人民元為替相場終値は、前日比0.49%安の1ドル=6.5560元を付けた。約半年ぶりの元安・ドル高水準になった。

さらに、中国経済は5月に減速の兆しを示した。工業生産の伸びは予想外に鈍化し、小売売上高と固定資産投資も市場予想値を下回るなど、振るわなかった。「中国企業にとっては先行き不透明感が強まっている」とブルームバーグが指摘した。
 
学者、中国経済のバブル崩壊がすでに始まった

中国国内の経済学者の賀江兵氏はこのほど、米ラジオ・フリー・アジア(RFA)で『中国は対象限定の預金準備率引き下げで、ミンスキー・モーメントを食い止めようとしている』との評論記事を発表した。記事冒頭で「モンスキーモーメントがやってきた。(株安・元安という)市場の激しい反応から見れば、中国経済バブルの崩壊はすでに始まった」と述べた。

同氏はこれは「決して大げさな言い方ではない」とし、債務増加、不動産バブルと人民元の過剰供給が中国経済の抱える「三つの時限爆弾」だと分析した。

人民銀が発表した資産負債表によると、2016年12月まで、中国国内の家計・金融企業・非金融企業などを合わせた債務規模は244兆元(約4075兆円)。中国が抱える国債規模は10兆元(約167兆円)。一方、中国国家統計局の統計では、16年の国内総生産(GDP)は75兆元にとどまった。債務の対GDP比率約350%で、非常に危険な状況にあることは明かだ。

賀氏は、中国不動産市場は依然として経済の安定を脅かしていると指摘した。「北京の不動産価格の下落はすでに始まった」

中国国有銀行大手、中国建設銀行の田国立・会長は今月中旬、上海市で開催された金融フォーラムにおいて、中国不動産市場の総資産規模は40兆ドル(約4400兆円)以上、または400兆元(約6652兆円)以上と「天文的な数字」にまで膨れ上がったと発言した。田氏は「中国の莫大な富が不動産に投じられている」との現状に危機感をあらわにした。

一方、当局による通貨供給量の急増も不安材料だ。人民銀の統計では、今年3月広義マネーサプライ(M2)が174兆元(約2906兆円)に達したと示された。「この数値は、ドルやユーロの供給量の合計よりも多い」と賀氏が警告した。インフレ圧力の上昇、資産価格の高騰、資金流出など様々な問題が生じる。

「しかし、指導部はこの現状にどう対処すべきか、まったく打つ手がないようだ」
ミンスキー・モーメントとは、経済に隠れているリスクが急に現れることによって、資産価格が急落し大規模な債務不履行が起きる瞬間をさす。米経済学者のハイマン・ミンスキー氏は1950年代、景気拡大で投資家や企業の過剰な楽観的心理から過剰に融資を受け、投資・投機活動を行うことによって、金融市場に不安定要因が増加すると説いた。このため、金融不安定性理論にミンスキー氏の名前を冠した。
 
政府系シンクタンクも警鐘

中国ポータルサイト「捜狐網」はこのほど、中国の政府系シンクタンク「国家金融および発展実験室」が26日、内部において研究報告『国内金融恐慌の発生に警戒せよ』を発表したのを報じた。

同報告では、「今年に入ってから、債務不履行、流動性の緊迫、元安や株安が相次ぎ、状況が悪化しているほか、米国の利上げや米中貿易摩擦の長期化・不確実性も加え、中国では金融恐慌が発生する可能性が高いと判断している」と記された。
しかし、現在捜狐網では同関連記事は削除された。

在米経済評論家の梅鳳傑氏はRFAに対して、中国当局には米トランプ政権の強硬姿勢に対抗する手段が「残されていない」と述べた。また、「当局が実施した政策には、景気・金融の安定化の作用が全くない」と指摘した。

中国当局の公表では、中国財政部(財務省)は今年、海外で約100億元規模の国債および30億ドル規模のソブリン債を発行する予定。財政赤字を補てんするためだとみられる。
大紀元日本より

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