本書は加藤氏の壮絶な体験に基づく手記だが、この事件について論ずるためには、少々時間を遡らなければならない。
2014年4月16日、韓国のセウォル号が沈没した。修学旅行中の多くの高校生が亡くなる大惨事であり、多くの人々が悲しんだ。だが、時とともに、悲しみの声は、怒りの声に変容していった。本来であれば乗客の救出の任に当たるべき船長が、自らの任務を放棄して、乗客を見捨てる形で逃げ出してしまっていたからだ。韓国国民は激怒した。国民の怒りの高まりをみて、朴大統領は、ある会議で口走る。
「殺人に相当する」。
一国の大統領が、軽々しく発するべき言葉ではない。いくら国民が憤激していようと、法の下において裁判を粛々と進めていくのが自由・民主主義国家の常識である。
だが、韓国では、大統領の発言を受け、検察庁の高官が、容疑を殺人に広げて操作する旨を言明したのだ。
このとき、産経新聞ソウル支局長であった加藤達也氏は奇妙な違和感を覚えていたという。
法の支配を無視して、事件に政治が介入する。これが韓国社会の政治風土なのか、と。
だが、数か月を経ずして加藤氏自身が、韓国の特異な政治的文化によって、被害者となる。
問題の発端は、セウォル号が沈没した当日の朴大統領の謎の7時間にあった。安全対策本部に赴くまでの7時間、朴大統領の居場所が不明だった。
第一にこの問題を取り上げたのは、『朝鮮日報』だ。「大統領をめぐるうわさ」と題して、記事では、事故当日に朴大統領が鄭ユンフェ氏と密会していた噂がある、と、スキャンダルをほのめかしている。朴大統領と鄭氏の密会という「事実」を報じるのではなく、密会していたという「噂」が韓国中でささやかれているという「事実」を報じる内容だ。
この『朝鮮日報』の記事を参考に、加藤氏が記したコラムが『産経新聞』に掲載された。タイトルは「【追跡~ソウル発】朴槿恵大統領が旅客船沈没当日、行方不明に…誰と会っていた?」。コラムでは、事故当日、朴大統領が7時間にわたって行方不明になっていたということを「ファクト」、すなわち「事実」としているが、密会については、あくまで「うわさ」だとしている。
読み比べてみても、『朝鮮日報』の記事以上に過激だとはいえない内容だ。
問題が複雑化するのは、この加藤氏の記事が「ニュースプロ」という韓国のサイトに無断で転載されたからだ。無断に「転載」するだけではなく、タイトルは変更され、内容には「ニュースプロ」の意見が挿入されている。記事のタイトルは「産経、朴槿恵 消えた7時間、私生活の相手は鄭ユンフェ?」。
まるで、朴大統領が鄭ユンフェ氏と密会したことが「事実」であると報じているかのように、読者を惑わす酷いタイトルだ。『産経新聞』を「日本の右翼を代表する」と形容し、いささか煽情的な論調だといってよい。
この記事が転載されたことによって、加藤氏は、朴大統領の名誉を棄損したとして、起訴されることになる。
もともとの記事を読んでみれば明らかなように、これは『朝鮮日報』の記事を参考にして書かれたコラムなのだが、訴えられたのは加藤氏のみであり、『朝鮮日報』の記者は訴えられていない。
加藤氏を起訴したというこの事件の問題の核心は、反日のための行為であれば許される、反日行為は法を越えてでも許されるべきだという異常な論理が韓国には存在していることだ。仮に、加藤氏の記事が名誉棄損に相当するというのであれば、『朝鮮日報』の記事も名誉棄損で訴えられるべき記事だということになろう。
裁判で加藤氏を告発した人物が問われる。
「具体的にどの部分が朴大統領の名誉を毀損したと思い、告発したのか」
「今ははっきり思い出せないが、覚えている部分はセウォル号事故当日7時間、鄭氏といたということ自体が問題だと思う。それ以外はよく思い出せない」
これでは、『朝鮮日報』を訴えるのが筋という話になってしまうが、『朝鮮日報』は読んでいなかったから、訴えないという。何とも、杜撰な、論理とも呼べぬ理屈で裁判を始めているのだ。
恐らく、彼らの本音は次の言葉にある。
「韓国国民の70%以上には反日感情がある。反産経も多い」(張氏の発言)
「とんでもない虚偽事実で大韓民国の大統領が非常に良からぬ男女関係で、大韓民国がその程度の水準の国だ、そのようなニュアンスの記事だと判断し、韓国国民の一人として、不快な心情を隠せなかった」(朴氏の発言)
要するに、日本が嫌いで、気分が悪かったから訴えた、ということにしか過ぎない。法とは懸け離れた個人的な反日感情で告訴が可能であるというのは、おかしな話だ。
この人物の主張を嗤わざるをえないのは、大統領の男女関係で「大韓民国がその程度の水準の国だ」と思われるのを深く憂慮しながら、全く法に基づかない反日感情によって、日本人を訴えることこそが「その程度の水準の国だ」と思われてしまうということに全く気づいていないからだ。正当な言論活動の範疇にある加藤氏の「言論の自由」を、無理矢理司直の手によって封じてしまおうとする点こそ、韓国が「その程度の水準の国」と思われる原因に他ならない。
なお、こうした裁判を応援する団体の中には、産経新聞ソウル支部に糞尿を投げつける団体もあったという。そして、驚くべきことに、この裁判で韓国の名誉を守ろうという人々の中には、セウォル号の遺族が「ハンスト」を行っている最中に、「爆食闘争」を展開した人々もいるという。「爆食闘争」とは、「ハンスト」をしている人たちの前で、ピザやチキンを大いに食べ、ビールを飲む「闘争」とのことだが、この品の無さには呆れかえる。
なお、こうした裁判を応援する団体の中には、産経新聞ソウル支部に糞尿を投げつける団体もあったという。そして、驚くべきことに、この裁判で韓国の名誉を守ろうという人々の中には、セウォル号の遺族が「ハンスト」を行っている最中に、「爆食闘争」を展開した人々もいるという。「爆食闘争」とは、「ハンスト」をしている人たちの前で、ピザやチキンを大いに食べ、ビールを飲む「闘争」とのことだが、この品の無さには呆れかえる。
救いとなるのは、韓国の中にも良心のある人々が存在したことだろう。まずは加藤氏の弁護を引受けた弁護士だ。政府を敵にまわす可能性を否定できない裁判で弁護を引受けた彼は次のように語っている。
「この裁判で弁護の依頼を断り続けるようなことがあったら、韓国や韓国民が笑いものなっていた」
また、加藤氏を見て、加藤氏本人だと気付いたクリーニング店の店長は語ったという。
「外国に来てこんなにひどい目にあって大変でしょう。私は応援していますから」
店長は加藤氏に果物をくれたという。
我々が韓国という国家全体、韓国国民全体を反日一色で野蛮な人々だと断ずるのは、間違いだ。だが、法を越えてでも反日感情を優先させるべきだと思い、考え、行動する人々が一定多数存在する国家であることを忘れるも間違いだ。我々はあくまで冷静にあるべきだろう。そして、異常な主張と闘い続けた加藤氏の著作こそ、韓国とは何かを考える際の必読のテキストといってよいだろう。 iRONNAより
また、加藤氏を見て、加藤氏本人だと気付いたクリーニング店の店長は語ったという。
「外国に来てこんなにひどい目にあって大変でしょう。私は応援していますから」
店長は加藤氏に果物をくれたという。
我々が韓国という国家全体、韓国国民全体を反日一色で野蛮な人々だと断ずるのは、間違いだ。だが、法を越えてでも反日感情を優先させるべきだと思い、考え、行動する人々が一定多数存在する国家であることを忘れるも間違いだ。我々はあくまで冷静にあるべきだろう。そして、異常な主張と闘い続けた加藤氏の著作こそ、韓国とは何かを考える際の必読のテキストといってよいだろう。 iRONNAより
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