北朝鮮に関する研究会に複数顔を出しているが、「北朝鮮崩壊後の後継政権」が頻繁にテーマにのぼる。幾つかのシナリオがあるが、今次小欄は世界屈指の埋蔵力を誇る北の《地下資源》を舞台回しにした「後継政権」を考察してみる。もっとも、このシナリオだと「後継政権」は事実上樹立されず、北朝鮮は中国に併呑され、代わって誕生するのが仮称ながらこちら。
《中華人民共和国・高句麗省》
満州国だった中国東北地方に所在する吉林省/黒竜江省/遼寧省の現《東北三省》が「東北四省」になる想定だ。2000年前の朝鮮半島北部は漢王朝の支配下であったが、漢王朝崩壊で、朝鮮半島北部~中国東北地方にかけ高句麗王朝が興った。中国は、高句麗が中華民族が建てており中華圏だと主張する。史実かどうか、判断を下す学識を持たないが、ケタはずれの地下資源が眠る北朝鮮を、中国は「高句麗省」と決め付け、スキあらばソックリ頂戴したい野心を隠していることは間違いあるまい。
国家の存亡を単一の原因に特定する手法は禁じ手ではあるが、北朝鮮領内の地下資源が支える「自前の核・ミサイル開発」を認識し、「国連安保理事会の制裁決議を受けてなお、なぜ北朝鮮が核・ミサイル開発を、むしろ加速させられるのか?」を分析する上では有効な手段であろう。さらに「中国による北・地下資源の乱獲」+「北朝鮮側の警戒と最側近粛清」など、中朝国境のキナ臭い情勢が一定程度あぶり出せる。一見逆説的ではあるが、中国側の「国連決議に従い、懸命に北朝鮮に制裁を科している」という抜群の「演技力」にも、中国が描く「東アジア秩序の中華化」戦略が透ける。
地下資源は核・ミサイル&通常兵器の「素」
まず、レアアース(希土類)を含む北朝鮮内の地下資源埋蔵量から入る。が、閉ざされた国家のこと、確定的な数字に乏しく諸説が入り乱れる。ただ、世界屈指という見方では完全に一致する。日韓併合(1910~45年)以来「鉱物の標本室」と異名をとり、開発が進められてきた北朝鮮の地下資源の種類は、併合時代の朝鮮総督府や米国・地質資源調査局、大韓鉱業振興公社などの調べを総合すると、開発競争力を有する地下資源が最低でも20種で、うち8種が世界ランク10位以内に入る。
例えば、マグネサイト2位(3位説アリ)▽黒鉛3位(4位説アリ)▽亜鉛5位▽タングステンとレアアース6位▽金と鉛7位▽鉄鉱石10位…。核兵器製造の中核的要素を占めるウランの採掘可能な推定埋蔵量は、確認埋蔵量が明らかな国々を破り、世界一との見方も日韓両国の公的機関の間で有力となっている。
韓国国会の調査機関・立法調査所の調べでは、北朝鮮地下資源の潜在的価値は640兆円(異説アリ)にのぼり、韓国の23倍近くに達する。
中には高熱への耐性を備えロケット・エンジンに、耐蝕性に優れ原子炉の素材に、おのおの適した種類も多い。核・ミサイル開発に貢献する物質を、日時・量に左右されず国内で採掘できる北朝鮮の地下資源環境は、日米韓にとり脅威だ。
ところが、一部の地下資源は掘削条件に課題がある。質的にも、兵器や民生品に取り入れるにあたっては高い技術力が必要になる種類も散見される。莫大な資金が必要だということ。そうしたハードルを「支援」し、かなりな数の鉱山を「共同開発」してきたのが中国である。
かくして、地下資源は採掘→技術加工され、核・ミサイルのハード&ソフト・ウエアへと化けていく。かつて、ソ連→ロシアや中国の核・ミサイル開発技術支援を受けてきた北朝鮮だが、最近では独自技術の投入が目立ち、工程・目標通りの自力開発を歩む。後押ししているのは、自国産の原材料を自由・大量に投資できる資源基盤だ。
一方、経済的に困窮し、核・ミサイル開発費や石油を確保したい北朝鮮は、地下資源を中国に「たたき売り」した。中国語で「支援」「共同開発」とは「併呑」を意味する、らしい。胡錦濤国家主席が2005年に訪朝し、鉱山開発と製鉄工業近代化など、総額2000億円の支出を約して以降、中国の「支援」「共同開発」は怒涛の勢いとなった。韓国紙・中央日報は2011年、《中国が北朝鮮の豊富な鉱物資源を掘り尽くす》と伝えた。
けれども、2013年に入って潮目が変わる。小欄を書くにあたり、数百発の機関銃弾でハチの巣にされた揚げ句、火炎放射器で焼かれた北朝鮮の実質ナンバー2・張成沢氏(1946~2013年)の「罪状」を読み直し、途中の一文に目がクギ付けになった。
《国家財政管理体系を混乱させ、国家の貴重な資源を安価で売り渡す売国行為》
北朝鮮の豊富な地下資源への開発・投資に積極的だった中国との間を仲介したキーマンこそ、朝鮮労働党の金正恩委員長の叔父・張成沢氏だった。
さすがに北朝鮮も、中国の「資源侵略」に危機感を覚えたようだ。しかし、張氏粛清で北・地下資源の対中輸出が止まったと考えるのは早計に過ぎる。
何しろ、ロケット・エンジンや原子炉に必要な地下資源は前述したが、戦闘機のエンジン&戦車の装甲や携帯電話&ノートパソコンの製造、兵器&自動車の軽量化対策に資する地下資源がズラリとそろっている。中国が、開発支援+技術支援+資金援助と、それらに伴う独占的資源輸入の権利を手放すはずがない。裏で中国は、ちゃーんとアメをぶら下げていた。
国連安保理の対北制裁決議で、石炭に規制をかぶせても、輸出元の北朝鮮が被るダメージが局限される仕組みが、その一つ。現時点では、中国の「配慮」によって、鉄鉱石の対中輸出は増え、石炭の規制分を埋め合わせている。
他方、北朝鮮は核・ミサイル開発に必須の石油・鉄鋼製品を中国に頼る。国連制裁決議を受けても、中国による1~4月期の対北輸出は前年同期比で増大(中国税関総署公表)した。中国は北からの石炭輸入を規制して、国連や米トランプ政権に“協力的姿勢”を演じながら、北朝鮮に石油・鉄鋼製品を従来にも増して輸出しているのだ。
米国は「危険な北」を地下資源という熨斗を付けて中国に売り渡す?
互いの利益が完全に一致しているのかといえば、そうでもない。
中国にしてみれば、開発支援+技術支援+資金援助するよりも、北朝鮮ごと手に入れる方が手っ取り早い。そこで、先述した群を抜く「演技力」が必要となる。
冒頭とは別の研究会でひとしきり話題になったのが、中国のテレビ局が5月に行った平壌発のリポート。ロープで閉鎖されたガソリン・スタンドの映像を使い「ガソリン不足」を報じた“大スクープ”であった。報道管制の敷かれる北朝鮮内で、朝鮮労働党=政府の失政を証明する「ガソリン不足」を報じるとは異例どころか、決死の行為だ。研究会では、「民間分のガソリンを取り上げ、石油備蓄3カ月の朝鮮人民軍へ優先供給した結果」といった意見も出たが、小生も含め多くの出席者の関心は「自作自演ではないか?」が大半を占めた。つまり、「国連や米トランプ政権の意向をくみ、北朝鮮への輸出を控えている中国」を、国際社会に向け演出したかったとの疑惑だ。
一部に触れた中国→北朝鮮の石油は現在、パイプ・ラインによる輸出に偏重し、パイプ・ラインの「100%利用説」も出ている。今後も石油の流れは闇の中、否、「パイプの中」ということになる。
また、北朝鮮は核・ミサイルに必要なハード&ソフト・ウエアを、中国企業や中国国内に展開するダミー会社や地方政府の闇ルートはじめさまざまな抜け道を使って入手する。実際、2016年2月に発射されたロケットの破片を回収したところ、中国企業が欧州より入手、北朝鮮に売った圧力伝送器などが含まれていた。アフリカや東南アジア向け兵器の輸出も、同種のルートで実行し、核・ミサイルの開発費に充てている。
そうした中、5月末に来日した中国外交担当トップの楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に)国務委員は安倍晋三首相を表敬した。だが、対北「対話路線重視」の表看板を降ろさず、北朝鮮説得に関する「ヤル気のなさ」の継続にはヤル気十分とお見受けする。
にもかかわらず、米国や日本は「中国を通して北朝鮮の核・ミサイル開発をやめさせよう」と、中国に過剰な期待を抱く。言い換えれば「期待されている間」、中国は北朝鮮に何でもし放題ということになる。ならば「期待されている間」、中国は東アジアで何をしようとしているのか。
その答えが、今次小欄の結論となる。
中国がどの程度「期待されている間」の引き延ばしに成功するかにも関わるが、米中が手を握れば《中華人民共和国・高句麗省》は現実味を帯びる。例えば
(1)金正恩政権の暴走が止まらず、米国本土まで届く核弾頭を搭載したICBM(長距離弾道ミサイル)がほぼ完成する。
(2)米軍は(韓国の頭ごなしに?)対北攻撃の最終的準備を整える。
(3)中国人民解放軍は北朝鮮に奇襲的になだれ込み、かねてより共謀していた朝鮮人民軍内の反金正恩派部隊と呼応して、政権を打倒し、傀儡の臨時政権を樹立する。兵力は特定できず、大規模な特殊作戦部隊のみの想定も浮上した。
(4)中国人民解放軍主力は越境するが、ソウルの手前で陣地を構築し、持久戦の構えを見せる。
(5)米中首脳会談が開かれ、《南北互いの不可侵》+《北・傀儡政権承認》+《両国の非核化&ICBMの不保持》が条約化に至る。
南北統一ではなく分離状態を装っているが、中国の影響力が中国建国(1949年)後最大化される、事実上の《中華人民共和国・高句麗省》の誕生である。
以上は、「危険な北朝鮮」を、米国にとり「安全な北朝鮮」に転換すべく、米国が地下資源という熨斗を付けて北を中国に売り渡す構図だ。当然、この構図は、超弩級の危機となってわが国に襲いかかってくる。
中国は、北朝鮮国内の非核&ICBMの不保持の「監視」を名目に人民解放軍を常駐させ→《中華人民共和国・高句麗省》の地下資源開発を独占し→誰はばかることなく、核・通常兵器に役立つ大量・良質の地下資源を採り尽くす→北朝鮮の地下資源を素に中国は核・通常兵器を大増強する。
膨張の極に達した兵器を背景に、中国は日本や台湾に狙いを定め軍事・経済上の威圧をエスカレートさせ、離島などを占領していく。対中貿易が極に達した米国の視野から、次第に日本や台湾が消え始め。 産経ニュースより
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2017年6月5日月曜日
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