2017年6月7日水曜日

天皇の生前退位時にのしかかる重い「相続税」の懸案

5月19日、政府は天皇の生前退位を一代限りで認める特例法案を閣議決定。さらに30日には女性宮家創設に関しても、「検討」を明記した付帯決議案を自民・民進両党で合意した。

女性宮家創設の議論が大きな進展を見せたことで、今後は2018年末に実現が検討されている生前退位に向けてスムーズに事が運ぶように思われたが、ここにきて別の課題が浮上している。

「1947年の皇室典範制定以来、生前退位が行なわれるのは初めてなので、今上天皇から皇太子への“財産の継承”をどうするべきかについても議論する必要が出てきた。というのも、天皇ならではの財産をめぐる税制上の問題が発生するからです」(皇室担当記者)

どういうことか。あまり知られていないが、天皇家は私有財産を継承し続け、その都度、多額の税金を納めてきた歴史がある。この生前退位が、さらなる税の懸案となる可能性があるというのだ。

歴代天皇が継承してきた「三種の神器(鏡・剣・勾玉)」や歴代天皇の肖像画など、〈皇位とともに伝わるべき由緒ある物〉を「由緒物」といい、これらにかかる相続税は相続税法の規定により非課税となっていた。


今回は生前の継承となることから「贈与税」の扱いになるが、政府の有識者会議は、相続税と同様の対応が妥当と判断。4月21日の最終報告で、三種の神器などの贈与税を非課税とすべきとした。しかし、由緒物以外の財産はこれに当てはまらない。

「金融資産、外国から贈られた美術品などの私有財産は課税対象となる可能性があり、相続税より控除額が少なく割高な贈与税が発生することが予想されます」(同前)

◆皇太子が払う贈与税は3億円?

天皇家には私的費用に使用される「内廷費」が毎年支給される。1996年以降は3億2400万円で固定されている。そこから「内廷職員」と呼ばれる私的雇用人の給与や食費、被服費、研究経費、私的な交際費、神事に関する経費などが支出され、残りを貯蓄することも可能。だからといって潤沢な貯蓄ができるわけではなさそうだ。皇室事情に詳しいライターの金原好紀氏が言う。

「様々な費用を差し引くと、天皇家5人が自由に使えるお金は全体の11%ほどで、3000万円程度と言われています。ここから一部を貯蓄に回すこともあるでしょうが、様々な出費も考えられるので、多額の貯金ができるとは考えづらい。なにより毎年、年度始めに宮内庁の『内廷会計審議会』で予算が決められるため、使い切りが“建前”となっています」


終戦時に37億円以上あった天皇家の財産は、GHQによる処理指令もあり、昭和天皇・香淳皇后の崩御後に6億円以下、およそ6分の1まで減ったとみられている。内廷費の余剰分は考慮せず、「6億円」の贈与税を税理士法人トゥモローズの税理士・大塚英司氏に試算してもらった。

「生前退位時に皇太子お一人が6億円を継承した場合は、約3億2000万円の贈与税がかかる計算になります」

つまり、財産は約2億8000万円まで減少することになる。さらに今後、秋篠宮、悠仁親王へと継承していく中で、財産は減り、重い相続税だけがのしかかるという事態が続くことが予想される。

「2004年末に亡くなられた高松宮妃喜久子さま(大正天皇の第三皇男子である高松宮宣仁親王妃)の遺産は約18億6000万円で、4人の親族が合計約7億9000万円の相続税を払った。喜久子さまは、相続された遺産とは別に身の回りの家具や美術工芸品など約600点を宮内庁に寄贈しており、相続税はいくらか圧縮されたはず。天皇家も私有財産については同様の“”節税”は可能だ」(宮内庁OB)

相続税を払うのに苦慮する天皇家の姿など国民は望んでいないはずだ。皇室経済に詳しい成城大学文芸学部マスコミュニケーション学科教授の森暢平氏が言う。

「皇族の方々は臣籍降下しない限り、衣食住は一生保障されていますし、老後に備えて貯蓄をする必要もない。相続税にお悩みになるくらいならいっそ財産をなくしたほうがいいのではないか。いずれにせよ、財産と税の問題はもっと議論されるべきだと思います」

生前退位同様、戦後70年間見直されなかった皇室典範の影響がこんなところにも出ていた。

NEWSポストセブンより

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