タイ人も怪談話が好きな民族のようで、テレビや雑誌などでもよく怪談特集が組まれている。同じアジアだからか、日本の怪談と似たものも多い。それは昔からある古典的な怪談話だけでなく、近年になってよく語られる新しい怖い話でも似たものが少なくない。
その中でよくあるのがタクシー運転手の怪談話だ。女性客を乗せ、目的地に着いたらいなかった、というのは定番中の定番だろう。その怪談もバンコクにはあり、つい先日、目撃談が再浮上し、小さな話題になった。
■目撃談があとを絶たない、喪服姿の姉妹の霊
今年7月17日のことだ。タイ北部出身の男性が一時帰郷し、17日の朝方4時ごろにバンコクに戻ってきた。かつての国際空港だったドンムアン空港のそばで、サミエンナリー寺の向かい側にあるバス会社の駐車場にバスは到着。その時間はタクシーがなく、その寺の前の方がタイ国鉄の線路もあり、タクシーが捕まえやすい。彼は大道路を渡り、タクシーを待った。
喪服姉妹が常に目指しているサミエンナリー寺の入り口。
ふと気がつくと、黒い服を着た女性が彼の10メートルほど前に立っていた。きっとタクシーを待っているのだろう。カバンもなにも持たず、こんな夜中にひとりで若い女性がいることに違和感は多少あった。そうしているうちにタクシーのヘッドライトが見えてくる。しかし、彼女は手を上げるでもなく、ただぼんやりと突っ立っているだけだった。
慌てて彼は手を上げるとタクシーは自分の前に停まった。タクシーを乗る際にちらりと振り返ったが、黒い服の女性はまだそこにただ立っているだけだった。
翌日、バンコクの仕事場でその話をして彼は青ざめた。実はサミエンナリー寺の黒い服の女性は有名な怪談スポットにもなっているのだ。その話を知り、彼は自分のフェイスブックに話を載せたところ、話題となったのだった。
■事故で死亡した姉妹か?
サミエンナリー寺の黒服女性は実は姉妹のふたりセットで登場することが多い。というのは、数十年前(別の説では2000年前後のごく最近)、この寺の前にある線路をバイクのふたり乗りで横断しようとして、姉妹もろとも轢かれて死亡した事件が実際にあったのだ。
深夜のサミエンナリー寺の前の線路。この近辺で姉妹は死亡した。
この姉妹はティッパスックシー家のチュリーとスリー姉妹で、この日親戚の葬儀に出席するために黒服でバイクに乗り、会場までの道を急いでいた。タイの鉄道線路は自由に入ることができ、急いでいたふたりは電車の接近に気づかずに線路に進入してしまったのだろう。そして電車と衝突し、ふたりはそれぞれ上半身と下半身がすっぱりと切断され、即死した。
当時のタイは写真などの扱い方のモラルが低かったので、新聞にも遺体そのものや救急隊がバラバラになった身体を回収するシーンが写し出され、有名な事故になったようだ。近年はタイもだいぶ考え方が変わってきていることもあり、数年前までネット上においても姉妹の死亡時の写真が確かに見られたが、今はなくなってしまっている。
この姉妹の目撃談は多くあり、ほとんどがバンコク都内のラチャダーピセーク通りという大通りで深夜2時~4時の間にふたりを拾っている。サミエンナリー寺に行くように言われるが、現地に着いて振り返ると誰もおらず、場合によっては線路の辺りから下半身が切断された姉妹がものすごい形相で這ってくるという。
最近、北部出身男性に目撃されたのはこの交差点近辺。
7月の目撃談でこのサミエンナリー寺の喪服姉妹が再び話題になり、あちこちでそれらしき姿を見たとの目撃情報も改めて出てきている。その中のひとつではRCAという、東京で言えば渋谷とか六本木といったバーやクラブが密集する繁華街で黒服の姉妹がタクシーに乗るところを見たというものまであった。人を驚かす前に1杯引っかけたとでもいうのだろうか。 トカナより
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