2017年10月22日日曜日

北朝鮮核開発が火を付けた、日本「核武装」論の現実味

北朝鮮の核ミサイル開発が、「日本核武装」論に火を付けた。

日本はいつかアメリカに見捨てられ、慌てて核武装する。キッシンジャー元米国務長官などがこう予言していたが、日本でも9月6日に石破茂元防衛相が「アメリカの核の傘をもっと有効にするには非核三原則の一部見直しが必要」と述べた。アメリカが日本を捨てるとは思わないが、本音ベースの核論議が必要になってきたようだ。

朝鮮半島の情勢は、話し合い解決の方向に流れている。米韓合同軍事演習はひとまず終わったし、アメリカは北朝鮮への武力行使を韓国に止められている。国連安保理の新しい制裁決議でカードを一応そろえたこともあり、中ロ両国を引き込んで話し合いでの解決を模索するだろう。朝鮮戦争の正式な終結、つまり北朝鮮の国家承認と外交関係の樹立、南北国境の画定などを定める平和条約の締結、そして北朝鮮の核の扱いが焦点となる。

それだけなら日本は安泰だ。たとえ北朝鮮に核が残っても、「日本を核攻撃すればアメリカが大量報復する」という脅しで抑止できる。しかし平和条約が結ばれ、韓国世論が米軍撤退を求め、さらに南北統一が起きると、ロシア以上のGDPと核兵器を持つ反日大国が日本のすぐ隣に出現することになる。

先制攻撃を招くドイツ式

その中で、内向きになったアメリカは中国にアジアを委ね、日本から手を引いてしまうだろうか。日本は裸一貫で中国、統一朝鮮、ロシア、アメリカとも渡り合うことになるのだろうか。

そうはなるまい。アメリカにとってアジアは、EUと並ぶ貿易相手だ。日本という足掛かりを失えば、中国とは手を結ぶどころか言いなりにさせられて、アジアで稼ぎにくくなる。だから日米同盟はアメリカにとっても必要で、日本の上には核の傘が差し掛けられ続けるだろう。

ただその核の傘も、近年では少し薄く透けてきている。オバマ前米政権時代、海軍は太平洋に展開するトマホーク巡航ミサイル搭載用の核弾頭を廃棄。アメリカが今アジアで保有する核抑止力は海軍が大型原子力潜水艦搭載の長距離核ミサイル、空軍が米本土配備のICBM(大陸間弾道ミサイル)、そしてグアム島配備の爆撃機に搭載した核爆弾や核弾頭付き空中発射型巡航ミサイルと、機敏に使いにくいものばかりになっているからだ。

では補強策は何か。石破が言うように非核三原則を緩和したとしても、核搭載の米艦艇は大型原潜だけになっている。これは隠密行動を常とするので、わざわざ日本に寄港したりしない。

一方、戦後に日本と同じような立場となったドイツは被爆国でないために、核への反発は日本ほどではない。西ドイツの時代から自国領土に何発も持ち込ませた米軍の小型核爆弾(戦術核)が今でも数十発配備されている。昔のソ連軍のような大軍が一気に攻め込んでくれば、その鼻先でこの核爆弾を用いて敵の進軍を止める建前だ。

そして使用する際は米独両国の同意が必要であることからデュアルキー(二重管理)方式と呼ばれる。アメリカの小型核はベルギー、オランダ、イタリアにもある。しかし核兵器を自国領土に置けば、敵による先制攻撃の標的になりやすい。

むしろ日本にとって参考になるのは、イギリスとフランスの核ミサイル搭載原潜だ。双方とも数は少ないが、核抑止力としては十分だ。世界や日本の世論が日本の核武装を許すような状況になれば、アメリカや英仏から原潜を核ミサイル付きで購入するのが手っ取り早い。

経済取引で国境の意味がどんどんなくなる今の時代、核抑止など時代遅れだという人は多い。先進国間ではそのとおり。しかし日本の周辺諸国家は、国家を前面に立てて日本と張り合うナショナリズムに燃えている。その中で、日本は自分の名誉と利益を守る方途を冷静に考える。

それは軍事大国化を全く意味していない。少子高齢化が進む今、国防費をむやみに増やすわけにはいかないのである。   ニューズウィークより

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