2017年6月18日日曜日

傷の修復と発がんは紙一重? 胃がんの発生メカニズムに迫る

がん進展制御研究所上皮幹細胞研究分野(ニコラス・バーカー リサーチプロフェッサー(招へい型) (※1),村上和弘 助教)の研究グループは,シンガポールA-STAR研究所との国際共同研究により,傷ついた胃の修復と再生に必要な組織幹細胞を世界で初めて発見しました。さらに,これらの幹細胞でがん遺伝子が働く結果,胃がんが発生することを突き止めました。

今回の研究により,胃体部の組織幹細胞のみならず,胃がんの発生機序の一端が明らかとなりました。将来的に,これらの研究を発展させることで,胃がんの根本的な治療法および効果的な抗がん剤の開発が期待されます。

この成果は,平成29年6月5日(米国東部時間),Nature Cell Biology誌オンライン速報版にて公開されました。
 
図 胃組織幹細胞における遺伝子異常による胃がんモデル

胃組織幹細胞(Lgr5陽性細胞)にがん遺伝子(KRasG12D)を発現させた結果,胃がんの発生母地となる腸上皮化生が生じる。 

緑 : MUC5AC(※2)陽性の分化細胞

赤 : TFF2(※3)陽性の腸上皮化生細胞
 
【用語解説】

※1 リサーチプロフェッサー

優れた研究力を有する教員を確保するとともに研究に専念する環境を整備し,本学全体の研究力強化を図るためのリサーチプロフェッサー制度に基づき,任命されるもの。招へい型,登用型,若手型の3つがあり,招へい型は,極めて顕著な業績を有する国内外の研究者を招へいする際に適用されます。

※2 MUC5AC

胃表層の分化した粘液細胞で発現する遺伝子。細胞の保護,異物の侵入を防ぐ免疫機能および細胞間相互作用を担う粘液物質をコードしている。

※3 TFF2

腺頚部粘液細胞で発現する遺伝子。前がん病変である腸上皮化生細胞で発現が上昇する。
金沢大学より

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