分裂する中国国内
金正男氏殺害事件を説明するにあたって欠かすことができないのが、中国の存在です。中国は共産党による一党独裁体制を維持しているように見えますが、彼らも一枚岩、というわけではないのです。2つの派閥による権力争いをしており、その一派が金正男氏を守り続けていました。まずは2つの派閥についてお話しましょう。
中国共産党には政治局常務委員会という最高意思決定機関があります。この委員会は7人で構成されており、トップを務めるのがご存知の習近平です。7人中4人が習近平派と呼ばれる人々です。そして残りの3人が江沢民派と呼ばれる人々で、この二派で血みどろの権力争いをしているのです。
彼らはまた、北朝鮮問題でも対立しており、金正恩を支持しているのが、江沢民派です。一方の習近平派は、これまで過去数回にわたって企てられた暗殺計画から、金正男を守り続けてきました。金正男氏は、北朝鮮の現体制が崩壊したときの後釜としての中国のカードだったのです。
しかしついに2月15日、金正男は暗殺されてしまいました。習近平派は激怒しており、反対側の江沢民派は「ざまあみろ」と意気揚々としています。このような政治闘争が中国国内で起こっているのです。
北朝鮮が狙う大国とは?
北朝鮮側に話を戻しましょう。
そう、アメリカです。もし北朝鮮が世界の覇権国であるアメリカと国交を正常化できれば、中国にやすやすと侵略されることもありませんし、世界的にも国家として認められたことになります。
ですが、北朝鮮はミサイル実験や核実験を繰り返しています。そんな国とアメリカが国交を正常化するはずがないのですが。
まさにそこがポイントなのです。
北朝鮮はICBM(大陸間弾道ミサイル)の開発を着々と進めています。ICBMの開発が完了すると、アメリカ本土が標的になります。そうなれば、アメリカは間違いなく先制攻撃に出るでしょう。
あるいは、あまり知られていませんが、北朝鮮のミサイルは、実はサウジアラビアやイランといった中東への輸出品なのです。その上、核まで売るということになれば、中東に問題を抱えるアメリカは黙っていません。やはり、先制攻撃となります。
今、北朝鮮はこれらの武器を”交渉材料”として、すなわち、「ICBMの開発や核の小型化、輸出をやめてほしかったら、国交を正常化しよう」と、アメリカに話し合いを持ちかけようとしているのです。
北朝鮮はアメリカの弱みを握っている?
ここで1つ疑問が湧いてきます。それは「ICBM開発や核の小型化が完了していない今、アメリカが先制攻撃すれば、北朝鮮は太刀打ち出来ないのではないか」ということです。
ところが、北朝鮮はアメリカが先制攻撃できないことを知っているんです。北朝鮮との戦争になれば朝鮮半島で死者がたくさん出る、ということもアメリカの懸念の一つではあります。しかし何より北朝鮮への攻撃は、2000年以降に起きたある出来事をきっかけに、アメリカのタブーとなっているのです。そのタブーとは。
続きは「朝鮮半島、非常事態!〜日本の安全保障はどうなる?」のTRACK5で解説しています。 三橋貴明より
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