2016年5月20日金曜日

総債務はGDPの300%、国際機関も中国の信用急拡大を警戒

国内商業銀行の不良債権が急増


中国銀行監督管理委員会は、今年3月末における国内商業銀行の不良債権が1兆4000億元と、11年ぶりの高水準になったと発表しました。貸出残高全体に占める不良債権比率は1.75%になり、昨年末の1.67%からさらに上昇しました。

さらに、これとは別に不良債権になるリスクのある融資が3兆2000億元と、融資全体の4%を超え、すでに不良債権とされる1兆4000億元と合わせると「問題債権」は4兆6000億元に上ります。これは昨年末と比べて4280億元の増加となります。
 
しかも、多くのアナリストは、現実の不良債権は、公表データよりもはるかに大きいと言います。一部の銀行ではそもそも不良債権の状況を全く掌握していないと言い、また多くの銀行で、不良債権を隠すために簿外融資を行っている、と言います。

一方で新規融資は急減

もう一つの数字は、4月になって新規の人民元建て融資が5556億元と、前月の1兆3700億元から急減したことです。市場は9000億元を予想していたので、これも大きく下回りました。3月は景気対策の一環で地方政府の資金調達による投資が増えたのですが、これが一巡して反落した形になっています。

この結果、貸出残高の伸びも14.4%増と、市場が予想した14.8%増を下回りました。そしてマネーサプライM2の伸びも、市場の予想13.5%増を下回る12.8%増となりました。

中国では財政政策と金融政策の区別がありません。景気対策など経済対策で資金が必要な時には、通常国有銀行からの借り入れで賄われます。地方政府には従来地方債の発行が認められなかったため、融資平台などからの「裏借入」が増え、問題になったためこれを規制し、地方債発行での肩代わりを認めましたが、最近はまた融資平台からの調達が増えています。

官民合わせた総債務が、米国機関の試算ではGDPの300%にも及ぶとされ、国際機関も中国の信用の急拡大に警告を発しています。

「ゾンビ企業」淘汰で起こる大量失業

そして中国は今回、構造改革の一環として、存続の見込みがない「ゾンビ企業」の整理淘汰を進める方針を打ち出しました。その過程で、石炭、鉄鋼でのゾンビ企業整理だけで180万人もの失業者が出ると言われます。

このゾンビ企業の整理淘汰によって、そこに貸し付けていた資金の回収ができなくなるうえに、大量の失業者対策に資金が必要になり、これがまた生産性の低い融資に頼らざるを得なくなります。
このため、構造改革がなかなか進まず何年もかかる間に中国経済の非効率化、弱体化が進むリスクがあり、それがまた不良債権を高める悪循環となります。

銀行融資に頼る中国の経済対策ではどうしても銀行への負担が大きくなります。市場原理が働かず、政府の裁量で融資が拡大してきただけに、これが行き詰まっても「膿」が出ないまま、矛盾を抱え込む形になっています。

そこへ政府が人民元の国際化を急いだために、IMFから規制緩和、西側の規制、ルール適用を求められるようになりました。

この秋が危ない中国経済

今年の10月以降、人民元がSDR(IMFの通貨引き出し権)の構成通貨に組み入れられますが、これに伴って中国は資本や為替の自由化を進めることになります。これは中国の金融制度に対しても、西側のルール、規制が適用される方向となります。

つまり、不良債権の定義から、銀行の自己資本規制に至るまで、BIS(国際決済銀行)の規制に縛られるようになります。

このルールをいきなり適用すれば、中国の銀行は資本不足で行き詰まるところが多いはずで、その前に融資の抑制、不良債権処理を進めるにしても銀行への負担が大きくなります。

この秋に向けて、中国が西側ルールに適用しようとすれば、それが結果的に銀行の不安定化、信用不安につながるリスクがあります。

中進国の段階ですでに過大な債務問題を抱え込み、経済が行き詰まる時期に、中国は人民元の国際化を急いでしまい、背伸びしたツケが銀行圧迫という形で現れることになります。

この秋には、これが信用不安を引き起こして中国経済を危機に陥れるリスクが高まる可能性があります。IMF、米国が目をつぶってルール適用の先送りを認めてくれるかどうか。
 MONEY VOICEより

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