マスコミの全体的な質は、国民の全体的な質と同値だと思う。そうした視点からすると、韓国のマスコミも国民も、ここ十余年の間に、かなり劣化した。長めの引用で恐縮だが、以下を読んでいただきたい。
《1965年に締結された韓日基本条約で、両国は植民地支配による被害補償を「請求権」の概念で締めくくることに合意した。協定文は「…協定の成立時に存在する両国および両国民の財産と両国及び両国民間の請求権に関する問題は…完全にそして最終的に解決されたものとする」と書かれている》
《すでに両国が国家的に決着をつけた問題をまた提起できるのか》《当時の協定が、われわれの意思とは関係なく強制的な不平等条約だったのならともかく、そうでない場合は国家間で結ばれた協定や条約は守られなければならない》
これは2005年3月1日、時の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が唐突に対日賠償請求を提起したことに対する、韓国紙・中央日報の社説だ。見出しは「日本にまた賠償を要求するのか」で、“盧武鉉にはあきれたぜ”といったニュアンスを漂わせている。
この社説はこうも書いている。
《政府が代わったからといって「違う声」を出せば、相手国はもちろん、国際社会はわれわれをどのように見るだろうか》
《大統領は「過去の問題を外交的争点にはしない」と言っており、紛らわしい。賠償問題を提起する発言をしながら、過去の歴史を外交争点にしないと言うのは、一体どうすることなのか》
それから13年余。韓国最高裁が、いわゆる徴用工問題で、原告勝訴の判決を出した。
中央日報の社説(18年10月31日)を読もう。
《(最高裁の判断では)協定を締結する時、強制動員被害者に対する賠償問題は含まれなかった》《最高裁判事全員が参加した韓国裁判所の決定は権威と重さを持っている》
《日本政府は強制動員が不法植民支配から始まったものであり、かつて真の謝罪の姿勢を取らず、この問題を悪化させたという点を再確認しなければならない》
《両国政府は冷徹な現実認識を基に強制動員被害者に対する賠償問題の実質的解決方法を探るべきだ。外交的破局の道に入ることはあってはならない》
両者を比較すれば、「最終決着を確認している問題を蒸し返して、また金を要求するとは国際常識に反するぞ」から、「わが最高裁の判決に従え。事態悪化の責任は日本にある」と劇的に変わった。
賠償を提起しながら「外交的争点にはしない」とした盧氏の発言を批判したのも忘れ、今や盧発言に軌を合わせた。
日和見マスコミは健忘症を患っていると嘲笑すべきか。
いや、嘲笑できない。日本にも「一死報国」「聖戦貫徹」を主張した過去を忘れ“反戦・平和の念仏”を唱えている大新聞があるのだから。
そうした新聞社はいま、利にだけ敏(さと)い経済人と組んで、「日韓の外交空白を解消すべきだ」との声を上げ、日本政府に譲歩を迫るチャンスをうかがっている。それが分かっているから、韓国の政権は対応策の決定を急がない。
日本政府は、中央日報がまた変わるのを待つぐらいの気構えが必要だ。
■室谷克実(むろたに・かつみ) 1949年、東京都生まれ。慶応大学法学部卒。時事通信入社、政治部記者、ソウル特派員、「時事解説」編集長、外交知識普及会常務理事などを経て、評論活動に。著書・共著に『悪韓論』(新潮新書)、『崩韓論』(飛鳥新社)、『韓国リスク』(産経新聞出版)など多数。夕刊フジより
ぼちぼちと生きているので、焦らず、急がず、迷わず、自分の時計で生きていく、「ぼちぼち、やろか」というタイトルにしました。 記載事項は、個人の出来事や経験、本の感想、個人的に感じたことなど、また、インターネットや新聞等で気になるニュースなどからも引用させていただいています。判断は自己責任でお願いします。
2018年11月22日木曜日
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