国内外に大きな衝撃を与えた日産自動車前会長、カルロス・ゴーン容疑者(64)らの逮捕から、26日で1週間。この間、日産の業績を回復させた「カリスマ経営者」を巡る疑惑は、逮捕容疑となった約50億円の役員報酬の過少記載のほか、会社資金の不正流用などにも広がっている。日産側は、前会長が会社を「私物化」していたとして法的措置も検討する方針だ。
ゴーン前会長が日産の最高執行責任者(COO)に就任したのは1999年6月。以後、社内の大規模リストラに乗り出すなど「コストカッター」として経費を切り詰めていった。しかし、その裏で巨額の会社資金を私的に流用するなどしていた疑いが指摘されている。
これまでにゴーン前会長は、日産側に世界6カ国(ブラジル・リオデジャネイロ▽レバノン・ベイルート▽フランス・パリ▽オランダ・アムステルダム▽アメリカ・ニューヨーク▽東京)で高級住宅を無償提供させていた疑いが浮かんでいる。
関係者によると、このうちリオとベイルートの住宅の購入には、日産がオランダに出資して設立した子会社「ジーア」から、租税回避地(タックスヘイブン)に設けた孫会社など複数の会社を経由させた資金が充てられた疑いがあるという。住宅購入などに使われた費用は数十億円に上るとみられる。
ある日産関係者は「オランダの会社は、いろいろなベンチャービジネスを買収するために設立された。しかし、そうした投資は一切行われていなかった」と指摘する。
また、前会長の姉に業務実態のない契約料▽娘の通う大学への寄付金▽家族旅行の費用などに会社資金が充てられた疑いも浮上している。送金に関わっていたとされる社員らは東京地検特捜部に任意で事情聴取されており、送金の詳細を説明している模様だ。
日産関係者は「前会長は、自身ではビタ一文出していなかった。外出してのどが渇いて部下に水を買わせる時も会社持ち。何から何まで会社のお金を使っていた」と強調する。
ゴーン前会長の私的流用も、共に逮捕された前代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)が、外国人執行役員らに具体的に指示していたとみられる。特捜部は資金の流れを示す送金記録を入手し、裏付け捜査を進めているものとみられる。
一方、前会長の役員報酬の過少記載について、特捜部は逮捕容疑となった2010~14年度の5年分に加え、15~17年度の3年分についても立件を検討している。計8年分の不記載分計約80億円について、ゴーン前会長は退任後に受け取る仕組みを考案し、日産と契約を結んでいたという。
有価証券報告書に記載すべき役員報酬について、検察幹部は「将来受け取る報酬であっても、受取額が確定していれば確定した時の報告書に記載しなければならない」との見方を示している。
日産は特捜部の捜査を見守りながらゴーン前会長に民事訴訟で損害賠償を請求することや、刑事告訴も検討している。毎日新聞より
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2018年11月26日月曜日
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