産業技術総合研究所(産総研)と先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT)は11月26日、プラスチック(ポリマー)の発泡を微細かつ均質にする手法を開発したことを明らかにした。
同成果は、産総研 機能材料コンピュテーショナルデザイン研究センター 多階層ソフトマテリアル解析手法開発チームの森田裕史 研究チーム長、同 化学プロセス研究部門 階層的構造材料プロセスグループの依田智 研究グループ長、同 機能化学研究部門の新納弘之 首席研究員、同 ナノ材料研究部門 電子顕微鏡グループの堀内伸 上級主任研究員らによるもの。詳細は11月26日~27日にかけて浜松市にて開催される「成形加工シンポジア'18」にて発表される。
断熱材や緩衝材、防音材、軽量構造材などの用途で広く用いられているポリマーの発泡体(発泡ポリマー)は、通常、気泡の径は数10~数100μmほどであるが、近年、高い空隙率と均一な気泡径を特徴とする1μm以下の気泡の発泡ポリマー(ナノセルラー)が、高い断熱性のほか、理論的に光透過性を持つことが予測されていることなどから、窓用断熱材として世界中で開発が進められている。しかし、高い空隙率と微細で均一な気泡径の両立は困難で、実用的な材料は得られていなかった。
今回、研究グループは、高い空隙率と均質な発泡構造を持つナノセルラーの実現には、核剤を気泡のサイズより小さいナノ粒子とし、さらに効果的な核剤の設計が必要と考え、ポリマーと核剤との化学的な相互作用に着目。ナノ粒子を分散させたポリマーのモデルを構築し、発泡プロセスをシミュレーション。その結果、ポリマーと核剤の親和性が高く、ポリマーの発泡速度が大きい場合、添加したナノ粒子の表面ではなく、ポリマー内部から発泡が発生し、均質で微細な発泡構造が形成されることが示されたという。
実際に発泡ポリマー系で確認を行なったところ、Pdナノ粒子を含むPMMA発泡体において、シミュレーション結果と定性的に一致していることが示されたとする。
さらに調査したところ、Pdナノ粒子のようなポリマーと親和性の高いナノ粒子は、従来の核剤のように発泡の起点としては機能せず、逆にポリマーから発生した気泡の成長と合一を効果的に抑制する「アンチ核剤」として作用していると推定されたとのことで、このアンチ核剤は、気泡径分布や分散性の制御に有効であり、100nm以下の微細な気泡を均一に分散させる必要がある光透過性の高性能断熱材の実現に向けた手法として期待されると研究グループでは説明している。
なお、今後研究グループは、さらなるシミュレーションの実施と、その実際の検証を進めていくことで、アンチ核剤や核剤の設計指針の確立を目指すほか、より低コストで微細かつ均質な発泡体を作製できる技術の開発も行なっていくとしている。
マイナビニュースより
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2018年11月27日火曜日
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